「秘密の社内恋愛」は甘いか辛いか!? 同じ会社に勤める恋人たちのドタバタコメディ

マンガ

公開日:2019/9/29

『この会社に好きな人がいます(1)』(榎本あかまる/講談社)

「ひと目会ったその日から、恋の花咲くこともある」なんてフレーズがかつて流行ったが、まあ男女が同じ空間に存在すれば、恋が芽生える可能性はあるだろう。無論それは、時や場所を選ばないことも多く、例えば同じ会社の同僚というケースだって大いに考えられる。『この会社に好きな人がいます(1)』(榎本あかまる/講談社)は、同じ会社の同僚を好きになった男女が周囲に秘密で交際を始めるラブコメ漫画である。

 とある会社の経理部に所属する立石真直は、同じ会社に同期入社した企画部の三ツ谷結衣と交際している。「犬猿の仲」で通っていたふたりだったが、実はお互いに意識しており、6年の歳月を経て晴れて恋人同士となったのだ。そして結衣の希望が、「交際していることは周囲には秘密」であった。「仕事がやりにくくなる」とか「人事異動に影響が出る」といった理由もあるようだが、やはり一番大きいのは結衣いわく「恥ずかしいじゃん…っ」ということだろう。多少はイチャつきたい気持ちがある真直ではあったが、照れる結衣に萌えを感じつつふたりの隠れた交際は始まるのだった。

 基本的に「犬猿の仲」で通っているふたりなので、会社での真直に対する結衣の態度はまさに「塩対応」。しかし結衣にいわせれば「かなりマイナスに振っとかないと、想いが溢れて態度に出ちゃう」のだという。とはいえ、会社から離れれば互いの家に出入りするわけであり、休日ともなれば「お泊まり」にもなる。休日明けは一緒に出勤するわけにもいかないのでタイミングをずらそうとするのだが、離れがたくてついつい駅まで一緒に。危うく会社の同僚に見つかりそうになりながらも、それなりに充実した交際を楽しむふたりなのであった。

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 しかしこういう関係は、慣れてきた頃が一番危ないのである。付き合い始めて1カ月が経過したふたりは、外で映画を観ることに。本来、休日は家デートが基本で外ではマスク着用がルールだったが、今回は会社から離れた場所ということでそのままデートへ。そしてその油断がピンチを招く。なんと映画館で、同じ会社の上司と鉢合わせしてしまったのである! ただその上司は現在、県外の支社に勤務しており、普段は直接顔を合わせることはないのだが、結衣は必死に隠そうとする。上司は物分りがよく、ふたりの事情を察してくれたようではあるが、やはり交際を隠し続けるならば、危機管理は重要なのである。

 そういえば私がかつて会社に勤めていた頃、公然と交際をしていた同僚がいた。別に禁止されていたわけではないので問題はないのだが、うまくいっているうちはよいが、もしもダメになった場合、どうなっていただろうか。同じ会社で毎日顔を合わせるわけだから、メチャメチャ気まずいはずだ。確かに本書のふたりのように、社内恋愛はそれなりに楽しいのかもしれない。しかしそういう意味でのリスク管理を考えるなら、やはり個人的には社内恋愛は控えたほうがよい気がする。…重ねていうが、社内恋愛は控えたほうがよい気がする。

文=木谷誠