推しと身体が「入れ替わってる~!?」強火のヲタクには“気を失うレベル”! まさに夢のようなコメディ漫画

マンガ・アニメ

2019/9/28

『ヲタ ドル 推しが私で 私が推しで』(ぢゅん子/講談社)

 アイドルや2次元のキャラクターなどで、自分が最も気に入っている存在を「推し」と呼んだりする。推しに対するファンの夢はさまざまだ。ただ遠くで見守りたい人もいれば、相手と恋愛関係になりたい人もいるし、他のメンバーとの絡みを見ることこそ至高という人もいる。もし「私が推しになりたい」という願望をもっているファンがいたとしたら、卒倒してしまうほどに夢が詰まった作品がある。

 腐女子のラブコメを描きアニメ化もした『私がモテてどうすんだ』の著者、ぢゅん子先生の最新作『ヲタ ドル 推しが私で 私が推しで』(講談社)である。

 主人公は、容姿端麗、成績優秀、パーフェクトな美少女高校生の朝比奈あずさ。普段は美しく品行方正な姿で学校中の人気を集める彼女は、しかし真の姿は強火のドルヲタだった。

 彼女が推しているのは、アイドルグループ“P4U”の千田誓志。彼らのライブの日は物販に並ぶために朝4時には家を出発。3時間並んでグッズを購入、開場まで4時間あることだって気にならない。

「私は彼のために生きているッ! 世界は推しを中心に廻っているのよーー!!」

 そう目を輝かせる彼女の姿は、ヲタクの鑑だ。

 そんな彼女が楽しみにしていたアリーナライブの席は、まさかの最前列。あまりの近さに興奮するが、はじまってすぐに舞台セットが崩れ、ステージライトが落ちてくる。その瞬間を目にとめた彼女は、気がつけば千田を助けるためステージ上に走っていた。

 目を覚ました場所は、「天国」だった。隣には、千田誓志。天国にいることよりも、隣に千田がいることに発狂寸前のあずさ。神は、部下のミスによって死ぬ予定ではない2人が死んでしまったという。メンゴメンゴと謝られながら、無事現実世界に戻ってきた2人。しかし、互いの顔を見て青ざめる。目の前には自分の姿があるのだ−−。

 とにかく、トンデモ設定からのドタバタコメディ作品である。清々しいほどにぶっ飛んでいる。最もリアルなのは、自分で自分を抱きしめたり、トイレに行きたいが「チカくんのお●ん●ん触るなんて私にはできませーーん!!」と絶叫したり、部屋中が千田のポスターで埋め尽くされていたり、随所に挟み込まれるあずさの「強火のヲタク」っぷりだろう。

 本当だったら、雲の上のような存在であるアイドルに、文字通り雲の上(天国)で手が届いてしまった。

(お●ん●んに触ることなんてできないから)、あずさの姿をした誓志にトイレを手伝ってもらったり、お風呂で(目隠しをした状態で)身体を洗ってもらったり、足がもつれてキスをしてしまったり−−ヲタクであれば気を失うレベルの過激なイベントばかり起こるのだが、しかし作中で最もときめくシーンは、交換したアドレスを千田が消さないで残していることであったり、帰りに自分に向かって「ありがと」と手を振ってくれることであったり、そういう些細な場面だったりするのが、また良い。

 作中では、脈絡もなく入れ替わったり戻ったりする2人だが、神様の様子だとどうやら何か原因があるらしい。そんな謎の解明も含めて続きが楽しみな1冊である。

文=園田菜々