絶賛中二病少年とカースト最上位美少女の格差ラブコメがとにかく“きてる”

マンガ・アニメ

2019/10/5

『僕の心のヤバイやつ』(桜井のりお/秋田書店)

 絶賛中二病の少年と学園カースト最上位の美少女との格差ラブコメが『僕の心のヤバイやつ』(桜井のりお/秋田書店)だ。

 2巻が2019年9月に発売され、累計では15万部を突破(電子書籍込み)。「次にくるマンガ大賞2019」のWebマンガ部門5位の話題作。

 SNSでも1万を超えるいいねやリツイートで、既に“きている”本作品をレビューしていく。

■中二病ボーイ・ミーツ・ド天然ガール in図書館

 親しい友達もおらず、勉強と週1の部活と図書室に通うだけ。そんな灰色の学園生活を送っていた市川京太郎が主人公だ。京太郎は陰キャな自分とは違う、陽キャのクラスメイト達の殺害を妄想するなど、中二病の真っ最中。中でも雑誌モデルの仕事をする美少女、山田杏奈への憎しみを勝手に募らせていた。

 あるときから市川のテリトリーである図書室に山田が来るようになる。彼女はいつもマイペース、一心不乱にお菓子をほおばり、不思議な言動で京太郎に絡んでくる(もちろんドキドキなラッキースケベ的なお約束も発生する)。実は山田はド天然で、ツッコミどころ満載、ほっておくと危なっかしい女子であり、言ってしまうと「ほんのりとバカ」(京太郎)だった。憎みきれないろくでなし…ではなく憎めないおもしろガールなのだ。京太郎は、そんなとぼけた山田に心の中でツッコミつつ、なぜかフォローし、助けていくはめに…。

『僕ヤバ』は京太郎とともに「山田―!」とツッコミながら楽しむのがまずは正解である。

■ふたりの気づきと気持ちの変化、近づく距離が丁寧に描かれる

 京太郎は山田のことを、チャラチャラして、毎日幸せそうで、陰キャを見下している、勝手にそう思っていた。だが彼女の意外な一面に触れていくうちに心ひかれていく。青春に格差があるふたり。まさに王道のラブコメフォーマットだ。

 さらっと読んで山田のかわいさや京太郎に笑わされるだけでもじゅうぶん楽しめる。ただ本作は、単なる1話完結のほのぼのしたストーリーではない。ふたりの関係が色々と積み上がって、徐々に気持ちが変化していく様が丁寧に描かれており、読んでいるこちらの感情も盛り上がっていく。その読後感が素晴らしいのだ。

 1巻は京太郎から一方的にみた山田が描かれている(ように読める)。最初の頃のエピソードでは山田の心理はほとんどわからない。彼女は特に意識せずに京太郎をドキドキさせていく。

 山田は京太郎を見下していたわけではないが、最初は図書館にいる男子としか認識していないようだった。しかし京太郎が自分をフォローし、助けてくれていることに気づき、彼を「知らない人じゃない」と認識するようになる。ゴミしか渡さなかったお菓子の残りを渡し、シェアもしてくれるようになる(山田の親愛の情を示す行動のようだ)。

 一方で京太郎は、中二病で憎んでいた山田への恋心に気づく。山田がケガをしたとき、それは確信に変わる。そして行動に出た。ちょっとしたことだが、それが山田の感情を動かすのだ。

 1巻の15話、ラストのコマからは、ふたりの距離と気持ちの変化がはっきりと感じられる。そして読者は「京太郎、それ違うわ!」とツッコミをしてしまうこと間違いなしである。読んだ皆さんはきっと納得してくれるはずだ。

■ふたりの気持ちが動き出し、ラブコメは加速していく。

 最新の2巻では、山田が何だかんだと積極的にコミュニケーションをとろうとするようになる。京太郎を知ろうといじらしく話しかける。

「完全に両想いフラグじゃん!」「はい、終わり終わり! ハッピーエンドね!」そんな風に思うかもしれないが。だがここからだ。

 京太郎という男は、山田は自分なんかに興味があるとは思わない。中二病で心の中は偉そうにしていたが現実では自己肯定感が低いのである。自分は好きだと認めつつ、たとえドキドキさせられても、発想は同情か友情か…ひょっとして? いやいやそんなわけない。

 はい、ここからです。ラブコメが加速していき、「格差ラブコメ」が、やっと王道の「激甘ラブコメ」になるのです。

 作品とヒロインの山田にぐいぐいと引っ張られていく心地よい読後感。ニヤニヤしながらぜひ味わってみて欲しい。

文=古林恭