『ドロヘドロ』の林田球が放つSFダークファンタジー開幕! 設定の深さとダークな世界観に浸る

マンガ

更新日:2019/12/5

『大ダーク(1)』(林田球/小学館)

 2020年にテレビアニメ放送が決定した人気漫画『ドロヘドロ』。作者の林田球氏は独特の世界観で多くの読者を虜にしたが、漫画は2018年9月に連載が終了し、ファンを大いに悲しませた。しかし林田氏はそんなファンの想いに応えるかのごとく、すぐさま新たな連載を始めることに。その作品こそが『大ダーク(1)』(林田球/小学館)である。

 物語は瀕死の宇宙漂流者がマフィアの船に拾われるところから始まる。漂流者が背負っていたリュックのような「ニーモツ」は闇の力を秘めた特別なニーモツ「アバキアン」であり、その事実から船のお頭は漂流者が「ザハ=サンコ」という人物であると気づく。実は「ザハ=サンコの骨を手に入れれば、どんな願いも叶う」という伝説が広く知られていたのだ。お頭はサンコを殺して宇宙の支配者になろうと企むが、自らの意思を持ち自由に動けるアバキアンに救出されたサンコによる逆襲を受け、マフィアは全滅。サンコはマフィアの骨を抱えて、悠々と帰途に就くのであった──。

 前作『ドロヘドロ』で好評だった少々グロテスクな描写やダークな世界観は今回も健在で、今作もかなり普通に人が死んでいく。サンコが使う武器はアバキアンの骨から生み出された「オノ」であり、それが刺さると人は皮や内臓が剥がれ落ちて骨だけになってしまうのだ。サンコたちは骨を回収し、それを売って必要な物を揃えているのである。

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 ちなみにサンコとアバキアンには拠点のような場所がある。それはブラックホールの中に存在する闇の世界「クライ」だ。クライにも多くの住人がいるが、当然サンコの骨を狙う者もいる。そういう輩を返り討ちにしながら、武器商人の店で装備を購入したりしているのだ。

 しかしなぜサンコの骨は「手に入れれば願いが叶う」とされているのか。少なくとも彼が8歳の頃にはすでにそういった状況になっており、子供時代のサンコは正体がバレないように身分を偽って小学校船「タイボクガン」に潜伏していた。しかしひとたび正体が知れると、子供であっても容赦なく命が狙われる過酷な生活を送っていたのである。サンコとアバキアンは、サンコをこのような運命にした存在を突き止め、その存在を殺して自由になることを目指しているのだ。

 そして林田作品といえば、個性的な登場人物たちも魅力。サンコやアバキアンはもちろんのこと、サンコの骨に興味がなく、サンコ唯一の友人ポジションである「死ま田=デス」や、クライでさまざまな物を取り扱っている武器商人の「店谷=ボックス」など、ひと癖もふた癖もありそうな連中ばかりである。そしてサンコたちを「害悪」として抹殺しようとする「光力塊」という組織も存在し、物語にさらなる混沌を与えてくれそうだ。

 他にもサンコとアバキアンがどのようにして出会ったかなど、まだ明かされていない部分が多い本作。それだけに今後の展開が楽しみでしょうがないというファンも多いはず。アニメ版『ドロヘドロ』の放送も含めて、林田ワールドから目の離せない日々が続きそうである。

文=木谷誠