クールで美しい妹と天然な姉…好対照な新米姉妹の尊いごはんタイム

マンガ

公開日:2020/3/15

『新米姉妹のふたりごはん』(柊ゆたか/KADOKAWA)

 数あるグルメコミックの中で、飯テロに加えて“尊さ”も楽しめる作品。それが『新米姉妹のふたりごはん』(柊ゆたか/KADOKAWA)だ。

 明るく人懐っこく食いしん坊のサチと、クールビューティーで料理好きなあやり、このふたりが突然義理の姉妹になるストーリーである。

 ふたりは両親の都合により、いきなり彼女たちだけで一緒に暮らし始めることに。この圧倒的な緊張感をほぐすのが食事、つまりごはんを作って食べること、なのだ。

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 昨年放送されたドラマ版も好評で、深夜の飯テロドラマとしてTwitterなどで大いに盛り上がった。こちらも秀作なので、配信などでぜひご覧になってみてほしい。(山田杏奈と大友花恋という配役が個人的に素晴らしかった!)

新米姉妹になっていくサチとあやり

 主人公・サチの父親が再婚した。その新しい母親には連れ子のあやりがいた。美人だが目つきが鋭く、口数が少ない彼女に対し、サチは物怖じしていた。さらに両親は海外出張へと旅立ち、いきなりサチとあやりはふたりきりの生活を余儀なくされる。

 同年代とはいえ、いきなり妹になったあやりとの同居生活に、大きな不安を感じていたサチ。そんな時、海外出張中の父親から大きな荷物が届く。

 それは世界三大生ハムのひとつ、ハモン・セラーノ(の原木)であった。するとあやりの様子が一変する。生ハムの詳細な解説と味の感想を饒舌にしゃべり続け、てきぱきと専用台を組み立て、見たこともない恐ろしく長い包丁で生ハムを切り落とす。

 そう、あやりは超のつく料理好き、かつ極度の人見知りだったのだ。サチは、あやりの作ってくれる料理の数々を食べ、時には一緒に料理を作るうちに打ち解けていく。ふたりはごはんを楽しむことで、他人から新米姉妹になっていくのだ。

ハレのごはんがふたりの心を近づける

 本作品はグルメコミックで、ほぼ毎回料理が描かれる。1巻で登場したメニューは生ハムサンド。エッグカッターを使った半熟卵。手作りソーセージ(ネギの皮で)。ラクレットチーズを使ったパーティメニュー。などなど、かなりスペシャル感のあるラインナップだ。

 気軽に食べられそうもない…と思うかもしれないが、本作はあえてハレの日的な料理を選んでいる気がしてならない。

 なぜなら特別な料理こそ、ひとりよりふたりのほうがおいしく感じ、楽しめるからだ。もともと食いしん坊のサチは、あやりに食べたことがなかったご馳走ごはんを作ってもらい、胃袋をがっつりとつかまれる。

 ここで本稿のライターが「イイ!」と身悶えた、あやりのセリフを引用する。

私昔から料理が好きなんです

でもひとりのことが多かったので
いつも作ったものは自分で食べてました

姉さんと生ハムサンドを作った時
食べてもらえるのがとってもうれしくて
すごく幸せに感じたんです

 ご馳走を食べて感動するサチと、食べてもらって大満足のあやりは、こうして心の距離を近づけていく。

 なお最新刊の7巻ともなると、サチとあやりはもうすっかり仲良しだ。一緒にいろいろな所へ出かけていき、ごはんを楽しむ。潮干狩りへ行ってアサリ料理やハマグリのお吸い物を作ったり、釣った魚をその場で料理したりする。

妹が大好きな姉。姉が大好きな妹。重なり合う想い

 完全な妹キャラなのに、お姉さんになりたい! と奮闘するサチ。基本的に食べる専門だが、作ってもらう料理はもちろん、あやりのことが大好きである。

 クールで人見知りのあやりは、かわいいものが大好き。そして料理となると人が変わる。彼女もまたお姉さんのことがかわいくて大好き。もっとサチと仲良くなりたいと思っているようだ。

 ドラマは終了したが、彼女たちの尊い時間はマンガでまだまだ楽しめる。新米姉妹が仲良くしている日常は、読んでいるだけでおなか一杯になるのである。

文=古林恭