『クマとたぬき』作者最新作! 天涯孤独なクマと、はみ出し者のカラスの切ない友情物語

マンガ

公開日:2020/9/30

クマとカラス
『クマとカラス』(帆/文藝春秋)

 あの子と一緒ならば、どんなことにだって挑戦できそうな気がする。そう思える相手に出会えたとしたら、それだけでどれほど幸せなことか。『クマとカラス』(文藝春秋)は、天涯孤独のクマと、はみ出し者のカラスの友情と冒険の物語。

 作者の帆さんといえば、著者累計20万部突破、『クマとたぬき』などの動物マンガで知られる大人気マンガ家だ。今作も動物たちのコミカルで生き生きとした仕草が繊細なタッチで描かれ、読む者の心を確かに癒してくれる。

 主人公は、日本のどこかの森で暮らす、若いツキノワグマ。子どものころに家族と別れてから他のクマに会ったことがなく、天涯孤独だった彼は、ある時、都会育ちのカラスと出会う。

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 カラスはどういうわけか気づいた時には、クマのお腹の上にいたのだ。何かと物知りなカラスと話すうちに、クマは、カラスとともに、まだ見たことのないクマの仲間を探す旅に出ることを決意する。

 ふたりは、いくつもの山や森、草原、火山や湖を通り過ぎ、さまざまな美しい景色を一緒に越えていく。シカやフクロウ、サギ、イノシシなど、さまざまな動物たちと出会うふたり。彼らは「かけがえのない仲間」に出会うことができるのだろうか。

クマとカラス

クマとカラス

クマとカラス

クマとカラス

クマとカラス

クマとカラス

 この物語を読んでいると、本当にふたりと冒険しているような気持ちになる。それは、動物たちの姿や所作、森などの木々の描写があまりにリアリティに溢れているからかもしれない。

 そして、クマとカラスの穏やかなやりとりに温かい気持ちになる。彼らは間違いなく、出会うべくして出会ったふたりだ。クマはずっとひとりぼっちで暮らしてきたし、カラスだって、街でひとり気楽な暮らしをしていた。ふたりになれば、今まで見えなかった世界が見えるようになる。ひとりでいる時よりも、強くなれた自分に気づく。彼らは、少しずつ、でも確かに友情を育んでいくのだ。

希望がある方へ行くときに勇気が湧くんだなって
君が教えてくれたんだよ
ずっとひとりだったらこんなこと
出来るようになるとも思えなかった
僕は僕の行きたい場所を決められるんだ

 物語に登場する台詞は、胸を打つものばかり。ふたりの姿があまりにも可愛らしく油断をしていると、ラストにかけた展開に泣かされる。互いが互いを大切に思い合う姿に、自然と目頭が熱くなってしまう。

 本書には書店特典もある。アニメイトでの購入でオリジナルポストカード、ヴィレッジヴァンガード、とらのあな、紀伊國屋書店、くまざわ書店、TSUTAYA、BOOK COMPASS、BOOK EXPRESS、ブックファースト、文教堂、丸善ジュンク堂書店、未来屋書店でイラストペーパーがもらえるから是非ともGETしておきたい。

クマとカラス

 クマとカラスの織りなすこの物語は、なんて優しくなんて切ないのだろう。互いに思い合うふたりの姿に、癒されること間違いなし。それに、この本は、私たちが忘れていた大切なことを思い出させてくれる。優しい気持ちで心を満たしてくれる一冊。

文=アサトーミナミ