不良っぽい女子が、なぜか男子生徒の家に入り浸る! コミュ障男子×ヤンキー女子のラブコメ『帰ってください! 阿久津さん』

マンガ

更新日:2021/7/3

帰ってください! 阿久津さん
帰ってください! 阿久津さん』(長岡太一/KADOKAWA)

 女の子慣れしていない男子生徒が、クラスメイトの女子からいじられてしまう。ここ最近、そんな構図のマンガが人気を集めている。あたふたする男子の様子を眺めるのも面白いし、思惑を隠している女子もなんだか可愛らしい。それは懐かしさを覚える青春時代か、あるいは経験したかった日々か。いずれにしても、そういった作品を支持する声が多いのは納得だ。

帰ってください! 阿久津さん』(長岡太一/KADOKAWA)もまさにそんな作品である。本作に登場する主役の男子生徒は、地味でコミュ力も低めの大山。それにやたらと絡んでくるのは、ちょっと不良っぽい阿久津リコだ。

 この阿久津さんが具体的にどんな人なのか、大山は以下のように言う。

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いつも遅刻してきて
授業はあんまり
出席してなくて
いると思ったら寝てる

友達も悪そうで
まぁ一生関わる事のない
人種だと思っていたが

 散々な言われようだ。しかし、「一生関わる事のない人種だと思っていたが」という通り、この後、大山は阿久津さんとがっつり交流していくことになる。それはどういうカタチなのか。阿久津さんが大山の自宅に入り浸るようになってしまうのだ。

 大山は高校生ながら、事情がありひとり暮らしをしている。家の前で偶然出会った阿久津さんは、それ以降、大山の自宅にほぼ毎日遊びに来るようになるのである。本作ではそんな大山の自宅を舞台に、不良っぽい阿久津さんとの濃い絡みを描いていく。

 阿久津さんは、ちょっと怖い。言葉遣いも乱暴だし、態度も横柄だ。現に大山自身も、「一刻も早く追い出さないと……」と思っている。

 けれど、阿久津さんには可愛らしいところも多々ある。おおらかでスキンシップが多く、大山を弄ぶようなことを言っては、時折照れたりもする。スタートこそ「怖い人」という印象だったため、阿久津さんの意外な一面を知るたびにその印象が良い方向へと上書きされていく。それは大山のみならず、ぼくら読者も同様だ。

 とはいえ、あくまでも阿久津さんは「大山の家をたまり場にしている」だけで、それはつまり大山を利用しているということなのではないか。そんな疑念を払拭するようなセリフが、単行本第1巻のラストで登場する。

この部屋にいるのが好きで
気に入ってんだよ
他のトコとか
考えられねーよ

 これはもはや、阿久津さんからの告白ではないか……! そう思った矢先、阿久津さんはツンデレを発動。いつも通り、大山にきつく当たる。けれど、その本心は?

 本作は現在、第3巻まで刊行されている。第1巻では大山の舎弟っぷりが面白おかしく描かれているが、阿久津さんとの間に芽生える愛情のようなものもチラ見えする。そして第2巻以降、ふたりの関係は“ラブコメ”として大きく展開していく。

 読み進めていくと、「もう付き合えばいいのに!」とツッコミたくなる瞬間も多々あるものの、付かず離れずなのが大山さんと阿久津さんのいいところ。読み手を悶えさせながらも、ふたりの変な関係は続いていくのだ。

文=五十嵐 大