婚約破棄された悪役令嬢×嫌われ貴族が挑む、“幸せ”への道!

マンガ

公開日:2021/8/12

悪役令嬢は嫌われ貴族に恋をする
『悪役令嬢は嫌われ貴族に恋をする』(伊吹有:漫画、葉山湊月:原作/KADOKAWA)

「いくら努力をしてもなぜか裏目に出てしまう」「精一杯頑張ったのに報われない」。そんな悲しいこと、本当ならばあってほしくないが、しかし現実ではよくあることだ。世の中には見えない力が作用していて、どう頑張ってもたどり着けないルートがあるのでは、とさえ感じることもある。『悪役令嬢は嫌われ貴族に恋をする』(伊吹有:漫画、葉山湊月:原作/KADOKAWA)は、そんな「悪役令嬢」というルートに縛られてしまった、1人の女の子の物語。

 本作品の主人公は、徹夜でゲームをプレイするほどの乙女ゲームオタク・愛川絵里。絵里は徹夜したせいで遅刻ギリギリになり、急いで学校へと自転車を走らせていたのだが。その途中、トラックに跳ねられて命を落としてしまう。そして気がつくと、ブロンドの髪を持つ異世界の貴族、エリス・ウィッチエンドへ転生していたのだった。

悪役令嬢は嫌われ貴族に恋をする

悪役令嬢は嫌われ貴族に恋をする

 しかしこの貴族、どこかで見たことがあるような。絵理はそう考え、それが生前徹夜でプレイしていた乙女ゲームに登場する悪役令嬢であると気付く。ゲーム内でのエリスは、ことあるごとにヒロインに意地悪を仕掛けてくる“お邪魔キャラ”。そして最終的にはヒロインによって破滅させられる絵に描いたような悪役令嬢なのだ。つまりこのままでは、エリスに明るい未来はない。

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 そこでエリスは状況を打開すべく、ヒロインと積極的に仲良くした。意地悪もしないし、誰からも好かれるよう振る舞った。これで破滅エンドは回避できるはず――と思っていたのだが。

悪役令嬢は嫌われ貴族に恋をする

 結果、エリスは婚約者であった第一王子に婚約破棄を言い渡され、彼の雇ったゴロツキにひどい目に遭わされてしまう。結局はすんでのところである男に助けられ事なきを得たが、エリスはどんなに頑張っても自分の「役」は「悪役令嬢」なのだと悟る。悲しみに思わず涙を流すエリスに、彼女を助けた男、もとい第四王子のレン・リヒドシュタインは――。ここから、悪役令嬢エリスのルートは新たな道へと分岐していく。

 エリスを助けたレンは、王子でありながら“嫌われ貴族”と呼ばれ、汚れ仕事を請け負っている。多くの人に嫌われ、恨まれ、傷つきながら壁を作って生きる彼を見て、エリスは「これから何があっても私はレンさんの味方です」と宣言。

悪役令嬢は嫌われ貴族に恋をする

 エリスは、どんなに頑張っても報われなかった自分を見ているような気持ちになったのかもしれない。「役」というのは本当に残酷だ。それぞれに事情があり、感情があるにもかかわらず、そのレッテルの効果は絶大である。これは物語に限ったことではなく、現実でも往々にして起こることだ。

 それぞれに悲しみを抱えるエリスとレンは、これからどんな道を歩んでいくのだろう。1巻後半では、一見可愛らしい少年が何やら不穏な空気を漂わせている。そして2巻では新たな事件に巻き込まれて――。なかなか順風満帆とはいかない2人の人生だが、痛みを知っている2人だからこそ、今後もきっと強気に乗り越えてくれるはず。この『悪役令嬢は嫌われ貴族に恋をする』は、まだまだ始まったばかり。これからどういった展開を見せてくれるのか、乗り越えてくれるのか、楽しみだ。

文=月乃雫

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