世界一のパスタを作る! 一流料理人の夢と恋を描く美味満載のグルメマンガ

マンガ

公開日:2021/10/15

パスタの流儀
『パスタの流儀』(才谷ウメタロウ:絵、花形怜:原作/芳文社)

「シンプルなものこそ洗練の極み」。これはレオナルド・ダ・ヴィンチの言葉だが、そのまま料理にも当てはまる。たとえば、パスタ料理。パスタを茹でてソースに絡める、ただそれだけの料理なのに、実はかなり奥が深い。パスタの茹でかたをほんの少し変えるだけで、具材の調理をほんの少し変えるだけで、味は劇的に変わる。そして、シンプルな食材で作られたものであればあるほど、料理人の腕の見せどころなのだ。

『パスタの流儀』(芳文社)は、そんなパスタ料理を極めようとする一流料理人の姿を描くグルメマンガ。才谷ウメタロウ・作画、花形怜・原作。『週刊漫画TIMES』(芳文社)で連載されていた『本日のバーガー』でタッグを組んでいた2人による最新作だ。

 主人公はパスタ専門店「まほろば」の跡取り息子・タイジ。将来は店を継ぎ、「世界一のパスタを作る」と父親と約束していたタイジだったが、父は他界、店は閉店してしまった。だが、彼は夢を諦めなかった。世界一のパスタを作る料理人になるため、現在はイタリア・ナポリの有名レストランで修業中。だが、そんなタイジに彼の師匠はある課題を与え……。

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パスタの流儀

 読んでいて強く感じたのは、このマンガは香り立つようだということ。ガーリックを炒めたオリーブオイルの香ばしさ、フレッシュなトマトの酸味、絶妙な茹で加減のパスタから漂う小麦の香り……。ページをめくればめくるほど、美味しそうなパスタ料理の数々におなかが空いてしまう。ああ、タイジの料理を食べてみたい。登場人物たちのようにタイジの料理に「Buono!」と感動してみたいと思わずにはいられない。

パスタの流儀

パスタの流儀

パスタの流儀

 さらに、この物語では、絶品のパスタ料理の付け合わせとして、とっておきの雑学が添えられるのだ。作られた料理の由来や歴史、加えてそこに込めたタイジの思いなどを知るにつけて、ますます食欲が刺激される。そして、料理欲もふつふつと湧き上がる。タイジの作る料理はどれもシンプルだが、深いこだわりがある。そうか、そういう工夫をすればいいのか……。そんな気づきの連続に、「自分も美味しいパスタ料理を作ってみたい!」と思わされてしまう。

 そして、タイジの作り出す数々の料理とともに注目なのは、彼の恋模様だ。タイジが今まで修業に全身全霊をつくせたのは、幼なじみの遥の存在があったから。現在は人気女優として活躍している彼女の活躍をずっと励みにしてきたタイジ。タイジの恋は成就するのか。その行方がこの物語のいいアクセントになっている。

パスタの流儀

 パスタ料理の美味しさを追求し続けるタイジの姿や、その一途な恋心を知るにつれて、彼のことを応援せずにはいられなくなってしまう。これからタイジをどんな運命が待ち受けているのだろうか。「世界一のパスタを作る」という大きな夢と、そこに絡み合う甘くほろ苦い恋模様が、とびきりのマリアージュを生み出していく。グルメ好き、料理好き、特にイタリアン好きなら、必読! あなたも、この美味しさ満点のグルメマンガをぜひとも堪能してほしい。

文=アサトーミナミ

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