「今月のプラチナ本」は、紺野アキラ『クジマ歌えば家ほろろ』

今月のプラチナ本

公開日:2022/6/6

今月のプラチナ本

あまたある新刊の中から、ダ・ヴィンチ編集部が厳選に厳選を重ねた一冊をご紹介!
誰が読んでも心にひびくであろう、高クオリティ作を見つけていくこのコーナー。
さあ、ONLY ONEの“輝き”を放つ、今月のプラチナ本は?

『クジマ歌えば家ほろろ』(1巻)

●あらすじ●

中学1年生の鴻田新は、兄が浪人して以来ピリついた雰囲気の鴻田家で寂しい思いをして過ごしていた。新はある日、鳥のような見た目で人の言葉を喋る謎の生き物「クジマ」と出会い、お腹が空いているというので家に連れ帰ることに。春が来るまで共に生活することとなったクジマは、いつしか家族の空気も変えていき──一風変わったホームコメディー。

こんの・あきら●福岡県生まれ。2017年『知らない海の底』で第80回小学館新人コミック大賞少年部門に入選、同作で『ゲッサン少年サンデー』本誌デビュー。『クジマ歌えば家ほろろ』は連載デビュー作品となる。その他の作品に「陰陽師」「モノツキ」「疑心暗鬼を生ず」などがある。

『クジマ歌えば家ほろろ』(1巻)

紺野アキラ
小学館ゲッサン少年サンデーCスペシャル 715円(税込)
写真=首藤幹夫
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編集部寸評

 

腹ペコから始まる期限付きの共同生活

クジマがとにかく長いのが良い。しかし気は短い。人間の場合、長身は鷹揚であるとされ、それがミステリアスさにつながったりもするが、クジマは真逆。中身はダダ漏れているのに、生物としては規格外だ。だからこそ、雪深い祖国への思いや、新の家族に切り込んでいく真っ直ぐさにあてられたとき、弾けるような感動を覚えるのである。クジマがいかにして日本の市民社会に馴染むのか。兄の受験の行方は。クジマなんてやつ、いたなぁ。そう思いながら日々を共に過ごしたいコミックである。

川戸崇央 本誌編集長。5月某日、ホワイトボード刑事(デカ)を名乗る人物よりタレコミならぬ売り込みがあり、現場に急行。その模様は本誌174Pにて!

 

異形の何かが道端で腹を空かしていたとして

得体の知れない何かがやって来て、共同体に変化をもたらす。折口信夫ふうにいえば、「まれびと」来たれりの話だろうか。まれびとは神とされるが、クジマは何なのか。友好的だが、ややキレやすく、ときおり法律を破ったりする、鳥っぽい何か。そんな「変なモノ」を自宅に招き入れて食事をふるまい、居候を受け入れたことから、鴻田家は徐々に変わりはじめる。すてきである。しかし異形と道端で出会ったとき、客人としてもてなせるだろうか……鴻田少年の度量のでかさを見習いたい。

西條弓子 ご当地おやつ特集を担当。人生を救われたおやつは近所にあったロイホのパンケーキ。センター試験前日で心が瀕死の時も食べた。BIG LOVE。

 

最近マンガから離れてた方にも薦めたい

生活スタイルの変化のためか、年々マンガを手にすることが少なくなってきていた。歳を重ねていく度に、しっくりくる作品が少なくなっていっていく。そしてそんな自分大丈夫だろうか? 寂しいな、と思っていた。ですが、今作。すっごく面白かった。いや、楽しかった。そして何度でも読めてしまう。ふいに目についたとき、お気軽に……。口の悪い謎の生物クジマと、その生物を前にどっしりしている家族たちの姿に、癒される。最近マンガから離れていたな、という方にも推薦したいです。

村井有紀子 久々に京都の「鈴虫寺」へ。ユニークな説法を聴講したのち、ひとつだけ叶えてくれるというお願いごとをしてまいりました。絶対叶いますように!

 

異様な存在感、だけど微笑ましい

主人公・新と謎の生き物・クジマが出会う1コマ目から強烈だ。自販機の下の方から、大きな鳥が出てくるところから笑える。謎の生き物と一家の同居は、ほほえましいし、クジマもだんだん家族の一員に見えてくるから不思議だ。クジマを違和感なく受け入れている、家族の雰囲気も優しくてすてき。クジマがいきなりロシア語でまくしたてるシーン、異様な存在感が際立って笑ってしまう。ずいぶん前に話題になったバウリンガルで飼い犬と会話を試みようとしていた友人を思い出しました。

久保田朝子 最近アクリルスタンドを初めて購入しました。シュールだけどかわいいクジマも、アクスタにピッタリのサイズ感。もしあったら買いたいです!

 

閉塞した日常に現れた、ゆるめの怪異

両親・兄と共に暮らす新の前に、ある日“クジマ”と名乗る謎の生物が現れる。鳥のような見た目だが、身長180センチくらい。更にロシア語と日本語で喋る。宇宙人のような見た目のクジマに「未知との遭遇」的な物語が展開されるのかと思ったが、鴻田家は予想外のスピード感でクジマを受け入れる。時に兄と口論し、時に手料理を振る舞うクジマは、閉塞感が漂っていた一家のかすがいのような存在になっていく。謎の存在のまま一家と共に生きるクジマの日々を、もっと隣で見てみたい。

細田真里衣 最近手持ちのスカートがどんどん短く……いや服が縮んでいるような気がします。もしかして、この歳で身長が伸びてる? 期待してもいいですか?

 

クジマがもたらす心地よい笑い

思わず「ふふふ」と微笑んでしまうマンガに久しぶりに出会いました。ロシアから来たという渡り鳥みたいな習性をした謎の生き物・クジマと、浪人生の兄を抱え、ちょっとピりついた空気の流れる鴻田家。両者が絶妙なバランスで交じり合い、生み出される笑いが本当に面白い。しかも、クジマの存在がピりついた鴻田家の空気を変えていく。ストーリーを読み進めながら、ナチュラルな笑いに導かれるのだ。すごい! 押しつけのない、心地よい笑いの数々にきっと癒やされるはず。

前田 萌 クジマのキャラクター造形も魅力的。鳥?のような見た目に、頭身が高く、ロシア語も喋る。カバーを外した表紙に描かれている初期デザインも必見です。

 

図らずも救われることって多分ある

私の好きな「笑い」だった。クジマと名乗る鳥のような見た目をした生物、人間と普通に会話し、たまにキレるとロシア語で捲し立てる。そんなへんてこな存在が、鴻田家で当たり前のように受け入れられ、寝食を共にする姿はまさに「シュール」で思わず笑ってしまう。しかし一方で、それまでギスギスしていた家庭に戻ってくる気の抜けた、風通しの良さ。「意味がわからない」を受け入れるというのは、心の余裕を取り戻すことでもあると思う。読めば読むほどクジマの虜になる一作。

笹渕りり子 「もう無理!」となったときのために見るマンガや映画をストックしている。頭を空っぽにしてニヤリと笑えるような作品に頼りまくりです。

 

「クジマはクジマってことで。」

「わからないもの」は怖い。だから、「知っているもの」にカテゴライズしたくなるところだが、登場人物たちは得体のしれない生き物であるクジマをそういうものだとして受け入れている。普通に描かれているが、すごいことだ。クジマについてもペンギンだのアザラシだの憶測が飛び交ってはいたが、クジマに限らず、物事を無意識にパターン化するのはやめようと自戒。……真面目に書いているが、深く考えずに読んでいて笑顔になれる作品。個人的にはクジマと兄のやりとりがツボです。

三条 凪 ご当地おやつ特集を担当……していたこともあって(?)太りました。痩せようとボクササイズを始めたら全身ひどい筋肉痛。歩くのもやっとです。

 

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