オタクであることを隠していた女子高生の青春物語in1995!『古オタクの恋わずらい』/マンガPOP横丁(97)

マンガ

公開日:2022/2/11

古オタクの恋わずらい
『古オタクの恋わずらい』(ニコ・ニコルソン/講談社)

 今やJ系アイドルや大物政治家が大々的に公言してその愛を語るなど、すっかり一般的な存在となった、特定ジャンルの愛好者“オタク”。でも一昔前までは閉鎖的で暗いというイメージがあった。今回はその時代にマンガやアニメに青春を注いだ女子高生の恋を描くラブコメディ『古オタクの恋わずらい』(ニコ・ニコルソン/講談社)をご紹介。1990年代に青春時代を送った方は特に必見です!


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かつてオタクだった女性のあの頃の思い出

 ファストファッションブランドと人気アニメ作品のコラボ商品、2.5次元グループが武道館コンサート開催、渋谷のファッションビルにアニメやゲームのフロアが誕生……現在42歳の佐東恵は、市民権を得た最近のオタク文化の盛り上がりに衝撃を受け、さらにアニメキャラの入った服で平然と外出する高校生の愛娘の姿を見て驚愕していた。なぜなら、自身が高校生の頃ではありえない光景だからだ。恵はふとあの頃の事を思い出す――。

 時は1995年。まだインターネットもケータイも普及しておらず、オタクは今ほど市民権を得られていない時代。高校生の恵は仙台から関東の高校に転校する。当時アニメとマンガを愛するオタ活をしていた恵は周囲からの孤立を避けるべく、オタクに見えない“今風にあわせた制服の着こなし”で登校初日に挑む。しかし最初の自己紹介で大スベり! 恵は絶望し、前の学校同様にひとりで生きる決心をしようとしたその時、どう見てもヤンキーのコワモテ男子に声を掛けられる! しかしその正体は面倒見のいい学級委員の梶正宗だった。そして恵は後で目撃する、彼女にとって二次元ではない正宗による“現&実”のカッコイイ姿の数々! 心がときめいた恵は思わず、正宗に「オタク系の人ってどう思う?」と聞いてみると正宗からこの一言。

「死ぬほど嫌い」

 世間の逆風の中を突き進む少女の、熱く楽しいオタ青春in1995の幕が開ける……!

当時のアニメやブームも随所に登場!

 オタク少女の恵に突然始まるオタクであることを隠しながらの恋の物語、非常にかわいらしくて尊い! 「バレたら終了」という思い込みで進む彼女の恋を応援したくなることは確実だ。ちなみに、なぜ正宗が「死ぬほど嫌い」なのか、1巻のラストでその理由となるような場面が描かれるのだが、もうそれを知ったとたんに続きが気になってしょうがなかった! これはかなり衝撃です。

 さて、物語の舞台となる1995年は、はりまもまさにド真ん中の世代。当時は社会現象になったテレビアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』をリアルタイムで観ていたが、本書でもその影響が描かれている。その他にも話題になったマンガやアニメやブームになったものが続々登場。この時代を知りたい、もしくは実際に青春してきて懐かしみたい方は必見だ!

マンガPOP横丁

文・手書きPOP=はりまりょう

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