ビジネスで役立つ思考技術は数学で高める? 仕事の本質をとらえ、進化させることができる「数学脳」とは【書評】

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公開日:2025/5/22

AIと共存する時代の 数学脳 10歳から身につけるビジネススキル
AIと共存する時代の 数学脳 10歳から身につけるビジネススキル福山誠一郎/KADOKAWA

 数学と聞くと、「苦手意識で問題を見るのも嫌だった」「現実世界にどう役に立つのかわからない」という人は多いのではないでしょうか。

 でも、もし「数学がビジネスで役に立つ」と聞いたらちょっとビックリしませんか? 例えば、「具体と抽象を行き来する思考」「全体を俯瞰する力」「本質を見抜く力」など、ビジネスで必要な思考力を身につけておきたい。そう感じている人も多いかと思います。それらはまさに、「数学脳」でシンプルに思考できるのです。

 本書『AIと共存する時代の 数学脳 10歳から身につけるビジネススキル』(福山誠一郎/KADOKAWA)は、学校で習ったあの数学と、いま求められるビジネス思考をつなげてくれます。

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「でも、なぜ数学なの?」と思った方は、次の問いを考えてみてください。

「あなたの仕事の本質は何ですか?」

 突然そう聞かれても、答えるのが難しいかもしれません。しかし、「数学脳」なら、「仕事の意味を理解し、本質をとらえ、進化させることができる」と著者の福山誠一郎氏は言います。

 例えば、上司から「もっと、コミュニケーションをとりなさい」と、抽象的なアドバイスにどう対応すべきか、困ったことはありませんか? そこで必要となるのが「数学脳」の「正確にとらえる力」です。

「正確にとらえる力」とは、次の2つの要素で構成されています。

・言葉の意味を確認する「確認力」
・意味をはっきりさせる「はっきり力」

 これを身につけることで、「相手は上司なのか?」「伝達手段は何が適切か?」など、具体的に考えるべきことが明らかになります。

 本書では、この力をなんと「長方形の面積」で解説。「いったいどうして算数で説明がつくのか?」と驚く人もいるでしょう。

 ここで質問です。「面積」とは何でしょうか? ぼんやりと「広さ」だと思う方が多いと思います。

 では、「確認力」を使って、「面積」の意味を調べてみましょう。算数の教科書には「広さのことを、面積といいます」とあります。やはり、面積の意味は「広さ」でしたね。でも今度は、「『広さ』って何?」って思いませんか? なんだか漠然としてしっくりきません。そこで「はっきり力」を使って自分が納得いくまで調べてみます。「面積」について、同じく教科書には「面積は、1辺が1cmの正方形が何個分あるかで表すことができる」とあります。これで「広さ」という抽象的な言葉が、「正方形の個数」という具体的にはっきりしたものになりました。

 本書では、ビジネスにおいても抽象的な言葉に出合ったら「正確にとらえる力」を駆使して具体的に考えることの重要性を説いています。

さらに「数学脳」を構成する6つの力を紹介しています。

①正確にとらえる力
②思考の軸を作る力
③視覚化する力
④全体を俯瞰する力
⑤本質を見抜く力
⑥統合する力

 これらを身につける詳細は、本書を手にとっていただきたいところ。

 ただし、数学の事例を読み、「ビジネスとどう結びつけて考えるのが難しい」と感じる人がいるかもしれません。私が読んで感じたことは、数学脳を身につけるには実践が必要だということ。まずは、本書を読んで数学脳を理解し、「どう行動につなげるか」「プランを組み立てられるか」が本書を活かすカギになるでしょう。

「数学はそこそこ得意だったけど、ビジネスで使う思考ができてない」「数学は忘れてしまったけど改めて考える力を身につけていきたい」「数学はそんなに得意ではない」という人におすすめしたい一冊です。

文=ぶっくま

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