化け物になった町人に私しか気づかない!? 逃げ場のない田舎町で少女が怪異と対峙するホラーサスペンスコミック『トナリノジイサン2』

マンガ

PR 公開日:2025/6/20

トナリノジイサン
トナリノジイサン小池ノクト/少年画報社

 この世でいちばん恐ろしいものは得体の知れないものだ。バケモノのように膨れた頭部になった身近な人たちと、それをグシャグシャと喰らう怪物……。この小さな町で何が起きているのか。ゾクゾクと鳥肌が立ってなかなかおさまらない。

 そんなとびきりの恐怖を与えてくれるのが、『トナリノジイサン』(小池ノクト/少年画報社)。最新第2巻が発売されたばかりのこのコミックはあまりにも不気味。謎が謎を呼ぶ展開から目が離せないと、今大きな注目を集めている戦慄ホラーだ。

 舞台は、どこにでもあるような田舎町・蘭内町。都会で画家になることを夢見ている女子高生・結希がこの物語の主人公だ。ある日、姉が留学で町を出ていくことになり、結希は見送りのために姉とともに電車に乗り込む。だが、町を抜けるトンネルを境に日常の光景は一変する。突如、乗っていた電車は消え失せ、姉の頭が突然球状に膨れ、結希は唖然としてしまう。

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 さらには、何が起きているのかと混乱しているうちに、姉は巨大な怪物に食われてしまった。命からがら逃げ出した彼女はさっきまで居た駅が破壊されていることに気づくが、町の人は誰もそれに気づいている様子がない。姉のことを訴える声も無視され、さらには、町中に球体頭になった人々がポツポツと現れ始めているというのに、そのことにも気づいていない。そんな中、結希は同じ現象を目撃しているある人物に遭遇する。そして、この「怪異」と対峙していくことになるのだ。

 最初に感じたのは寒気。とにかく作画がリアルで美しく、だからこそ、気味が悪い。最新第2巻では、この現象のカギを握っているに違いない研究者や観光客が出現する。結希は、この町に何が起こっているのか、みんなはどうしてしまったのか、その人物たちから探ろうと考える。だが、探ってもヒントが暗示的で、結希の疑問は増えるばかり。たびたび登場する、この町の神社で行われる神楽のモチーフである「こぶとり爺さん」。しかし、その舞手がかぶるお面には瘤が一つのこぶとり爺さんではなく、鬼に瘤を取られたこぶとり爺さんを羨んで自分も瘤を取ってもらおうと山に行った結果、瘤が増えてしまった「となりの爺さん」のように、瘤が二つある。そして研究者が追っている「寄生虫」。町の異変には、民俗学的な事柄が関わっているのかもしれないし、何か生物的な異変が関わっているのかもしれない。得体が知れないものと向き合わなければならないというのはなんて恐ろしいことなのだろう。心臓がバクバク鳴るのを感じながら、慌てるようにページをめくり続けた。

 このコミックを読むと、自分がこの女子高生の立場だったら一体どうすればいいのだろうかと想像せざるを得ない。まだ自分の世界はこの町だけで、経済力もなく、どこに逃げ出すこともできなくて八方塞がり。そして少し謎に近づけたかと思えば、さらなる悲劇が彼女に襲いかかる。この気味が悪くて不可解な出来事はどうして起きているのか。早く真相を知りたい。この先、彼女の身に何が起こるのか。どうにか彼女には無事であってほしい。

 何が起こっているのか、先の展開が読めない。だからこのコミックは至高。ホラーであると同時にサスペンス要素、ミステリー要素もあり、ページをめくるたびに、心臓がバクバクと高鳴る。ああ、続きが気になって気になってたまらない。2巻が刊行された今、この読み応えがあるホラーコミックを、このドキドキを、是非とも味わってほしい。

文=アサトーミナミ

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