悪女と噂され、妹と婚約者に全てを奪われた侯爵令嬢の華麗なる復讐劇。話題の不穏系ざまぁファンタジー!【書評】
PR 更新日:2026/3/11

正義に勝ってほしいと思う反面、復讐に生きるのはよくないこととされがちで、悪事を働いた人間がそのまま勝者となってしまうこともままある。でも本音を言えば、心のどこかで「すべて暴かれて転落すればいいのに」と思うのも普通のことだろう。だが結局のところ、現実ではそううまくいかない。だからこそ、物語の中でくらいはスカッとできる強い正義を見せてほしい――。
『ならば、悪女になりましょう ~亡き者にした令嬢からやり返される気分はいかがですか?~』(一二野蚕糸:漫画、雨宮れん:原作/スターツ出版)は、そんなモヤモヤを感じている人におすすめしたい、不穏系ざまあファンタジー。コミックシーモアでの先行配信で大ヒットしている、いま注目の作品だ。
本作品は、侯爵令嬢で第二王子フィリオスの婚約者である主人公、アウレリアが行方不明になったとされる痛ましい事件の4カ月後から始まり、過去に遡る形で復讐の全貌が解き明かされていく。盗賊に襲われ崖下へ転落し、亡骸も見つからないまま葬儀が行なわれたアウレリア。いったい、何が起こったのか――。


異母妹に多くを奪われても、前を向いて生きてきたアウレリア
女王陛下に見初められ、王命でフィリオス殿下の婚約者となったデュモン侯爵令嬢。彼女は異母妹リリアンや家族から多くを奪われ虐げられても、リリアンにご執心のフィリオス殿下に冷たくあしらわれても、日々を誠実に生きていた。なのにリリアンが流す偽りの情報によってどんどん立場が悪くなり、社交界でも「悪女」だと噂されるようになってしまう。

しかしアウレリアは、ただリリアンたちに虐げられていたわけではない。彼女は家を追い出されるかもしれない未来に備え、平民として生きていけるよう着々と準備を進めていた。

信頼できる使用人ノクスに声をかけ、ふたりで「ノクス商会」を立ち上げた。裕福な平民向けの店を展開し、名前を「ミア」と偽って店の従業員になりすまして陰から経営を牽引していたのだ。結果、「ノクス商会が経営する店には一見の価値がある」と話題になり店は大繁盛。アウレリアは隙を見ては屋敷を抜け出し、そこでミアとして将来のことを考えながらひとときの幸せを噛みしめていた。

積もり積もった怒りと悲しみが、ついにアウレリアを復讐へと向かわせる――!
しかし、婚約者であるアウレリアの存在を邪魔だと感じていたフィリオス殿下、そしてリリアンに嵌められ、あるとき遠方にある別荘での謹慎を命じられてしまう。そして移動中、野盗に襲われて崖下へ馬車が転落してしまう。

そこで兼ねてから交流のあった隣国ベリアンド王国の王太子エルドリックに助けられ、怒りに震えた彼女は彼と結託し、ついにフィリオス殿下とリリアンへの復讐を胸に誓ったのだった。

大事なものを奪われ続ける環境にいながら、自分に残されたものでどうにか前を向いて生きようとひたむきに戦ってきたアウレリア。なのに唯一信頼していた女王陛下のとある言葉に失望し、リリアンたちに命まで狙われて、どれほどの思いだっただろう。もし自分だったらと考えると、筆者だって平常心なんて到底保てない。アウレリアが復讐に至った道の一部始終は本編で見届けてほしいと思うが、この選択肢を生み出したのは、間違いなく彼女を虐げてきた者たちの悪意だ。
そして、未だいまいち本心の見えないエルドリックが今後どう動くのかも、とても気になる。アウレリアを助け、自分の婚約者となることを条件に力を貸すと言って彼女を復讐へと導いた彼は、いったい何を考えているのだろうか。第1話の冒頭で描かれた4カ月後の復讐の幕開けがどこに繋がっているのか、何が起こるのか、その先の物語にも期待したい。この復讐劇は、まだ始まったばかりだ。
文=月乃雫
