「聖女って超超超超ブラックじゃん!」10歳から無休で尽くしてきた王子に追放された最強聖女の、ブラック労働脱却ファンタジー『追放聖女の勝ち上がりライフ』【書評】

マンガ

PR 公開日:2026/4/13

追放聖女の勝ち上がりライフ
追放聖女の勝ち上がりライフ(まゆらん:原作、とぐろなす:キャラクター原案、イヌ乃さゑ汰:作画/少年画報社)

 一生懸命尽くしていても、その先で報われるとは限らない。むしろそういうことをさせる相手ほど、誠実に尽くす人間を軽視し、利用して使い捨てる場合だって多い。現実でも、被害の自他問わずそうした場面に遭遇した経験のある人は多いのではないだろうか。でもそこで目が覚めて自分の状況に気づいたなら、新たな一歩を踏み出すチャンスになるはず。

追放聖女の勝ち上がりライフ』(まゆらん:原作、とぐろなす:キャラクター原案、イヌ乃さゑ汰:作画/少年画報社)は、聖女として国に尽くしてきたにもかかわらず理不尽に追放され、しかし前世の記憶を取り戻してそこから逆転と成長を繰り広げていく主人公の生きざまを描いた爽快感溢れるファンタジー作品。原作は小説で、コミックスは現在3巻まで刊行されている。

■断罪のショックで前世の記憶が戻り、「聖女って超超超超ブラックじゃん!」

 本作品の主人公は、両親を亡くし、10歳から国のために尽くしていた聖女シーナ。平民ながらも規格外の魔力量を持つシーナは、聖女として見つかったその当時は労働が可能な年齢に達していなかったにも関わらず、“王族の婚約者になったから”という特例をたてに魔物討伐の最前線に送られていた。しかも聖女には代えがいないという理由で5年間一度も休みを与えられず、本当に最低限の衣食住のみの提供だが生活の保証を理由にタダ働きで…。そして15歳のある日、新たにやってきた聖女の侯爵令嬢シンディア殺害未遂に問われ、婚約者だったダイド王国の王子レクター・ダイドから婚約破棄され国外追放の刑に処されてしまう。

 10歳から聖女として休みなく働かされてきて、15歳にして外の世界を知らない状態での国外追放。普通なら途方に暮れてしまいそうな状態だ。しかしシーナは、このショックによって前世の――25歳の青木椎奈としての記憶を取り戻す。

 そして自分が国からひたすら搾取されていたことに気づき、「聖女って超超超超ブラックじゃん!」「婚約なんてこっちから願い下げだわ!」と自分を慕ってくれている女傭兵のキリを連れて、そこから新たな生活へ向けての一歩を踏み出したのだった。

■最強の聖女だけど――目指すは「ブラック労働脱却!」「フツーの生活!」!?

 記憶が戻った際、大人だった前世の知識のおかげか不思議と聖魔法以外の属性魔法も使えるようになり、鑑定魔法や収納魔法など一つでも王家お抱えレベルの魔法をいくつも習得。魔獣との戦闘も難なくこなせるようになっていた。

 その力を使い、キリと力を合わせて難なく森を抜けたシーナは、隣国のマリタ王国へたどり着く。そして馬車の護衛をしていた冒険者ジン、バリーと出会い、街までともに行動することになった。道中は料理や自作した魔除けのお香を提供し、その結果、護衛していた王国一大きな商会の元会長であるザインとの繋がりも得て、ブラック労働からの脱却とフツーの生活を手に入れるための足掛かりを手にする。

 シーナは転生前の25年、転生後の15年を生きており、足すと40歳になる。そのため自立した大人としての考え方もしっかりと持っており、周囲にただ助けられるだけではなく、お香の作り方を売るなど対等に関係を構築していく姿に好感が持てる。しかしその一方で「15歳のシーナ」としての感情が消えたわけではなく、強い不安や恐怖心を感じると子供っぽい一面が露呈することも。その感覚にシーナ自身も戸惑いながら、しかし受け入れながら少しずつ前へ進んでいく。

 侍女キリとの絆を大事にしつつ、自分の足で立って歩こうと奮闘する彼女の姿は、応援せずにはいられない……!

 また1巻後半では、普通の冒険者だと思っていたジンとバリーの意外すぎる素性も明らかになり、シーナの世界はますます広がりを見せていく。しかし、彼女が求めているのはあくまで普通の生活。「15歳のシーナ」の気持ちも尊重しつつ、無理なく自由に生きられる道を模索しながらキリとともに歩んでいく。また、キリとは女同士ということで、2人で服やアクセサリー、買い物などを楽しむ姿も微笑ましい。

 ダイド王国に散々搾取され、最後には婚約者に現聖女の殺害未遂という冤罪を着せられた最悪の裏切りに遭い捨てられたシーナ。これまで報われない人生だった分、彼女にはぜひとも幸せになってほしい。その思いはジンやバリー、ザインも同じようだ。シーナとキリがこれからどんな人生を歩んでいくのか、素性が明らかとなったジンやバリーとはどのように関わっていくのか、また、シーナを捨てたダイド王国は今後どうなっていくのか――。まだまだ気になることが盛りだくさん! 最強の聖女シーナの活躍を、今後も引き続き見守りたい。

文=月乃雫

あわせて読みたい

追放聖女の勝ち上がりライフ(1) (ヤングキングコミックス)