心霊スポットに突撃するネット民、ダムに安置された人形を撮影したカメラマン。とある地方の断片的な怪談がひとつの真相へとつながっていく恐怖…。コミック版『近畿地方のある場所について』【書評】

マンガ

公開日:2026/6/1

【怖い場面あり、苦手な人は閲覧注意!】

近畿地方のある場所について』(碓井ツカサ:漫画、背筋:原作/KADOKAWA)は、近畿地方の“ある場所”にまつわる断片的な怪談や証言、記事、ネット書き込みをつなぎ合わせながら、ひとつの恐るべき真相へと迫っていくモキュメンタリー・ホラーである。原作小説が大きな話題を呼び、2025年に実写映画化された作品だが、コミカライズ版は、緻密な描写によってその不気味さをさらに増幅させている。

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 物語は、失踪したオカルト雑誌編集者・小沢の行方を追うかたちで進んでいく。彼が調査していたのは、名前すら伏せられた近畿地方の特定地域にまつわる数々の怪異事件。一見すると無関係に思える出来事の断片が、読み進めるごとに不穏な共通点を帯びはじめ、読み手は「何かひとつの大きな存在」の輪郭を感じ取っていく。

 第3巻では、物語がいよいよ核心へと踏み込みはじめる。男の子の姿をした「何か」、ネット掲示板内の真偽不明の心霊スポット突撃スレ、ダムの内部に安置された古い人形、そして意味深な文字列――。新たな怪談が提示されるたびに、1、2巻で散らばっていた恐怖のピースが少しずつ結びついていくのだ。「ただの怪談集」という認識は、この巻で完全に覆されるだろう。

 本作の魅力は、恐怖の核心だけではなく「散らばった情報」そのものが十分に怖いということだ。しかも、雑誌記事、掲示板ログ、インタビュー記録、噂話と、現代人にとって慣れ親しんだ情報媒体が、そのまま怪異の器として機能している。ページをめくる行為そのものが調査であり、読み手も禁忌に近づいていく感覚を否が応でも味わわされるのだ。

 さらにコミカライズ版では、原作の想像の余白を損なうことなく、視線の置き方やコマ割り、静かな背景描写によって「見えてしまう恐怖」を巧みに演出している。じわじわと心を削られる恐怖と、点と点が少しずつつながる気持ちよさが味わえる傑作ホラーだ。

文=羅怪羅無

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