特別な運命を背負う少女×最強の軍人が織りなす偽りの関係の行方は…!? 契約から始まる和風ラブロマンス【書評】

マンガ

PR 公開日:2026/5/15

鬼の軍人と稀血の花嫁
鬼の軍人と稀血の花嫁(五十里美春:作画、夏みのる:原作/スターツ出版)

 ありのままを受け入れてもらえる喜びが、自分のことのように胸に迫る。不遇な日々の果て、誰かにこんな風に大切にしてもらえたら、どれほど幸せなことか。契約から始まる和風ラブロマンスについ胸が高鳴り、続きが気になってたまらなくなった。

鬼の軍人と稀血の花嫁』(五十里美春:作画、夏みのる:原作/スターツ出版)は、人気小説のコミカライズ版。和風でレトロな雰囲気にすぐに引きつけられるとともに、迫り来る危険に手に汗を握り、少しずつ芽吹く想いの行方に心を奪われる。胸キュンもハラハラもたっぷり味わえる、没入感の高い和風シンデレラストーリーだ。

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過酷な運命に翻弄される少女・深月。彼女には特別な血が流れていて……

 舞台は、天下の大帝都。赤子の時に父母に捨てられた深月は、女中として懸命に働くも、出自を理由に周囲から虐げられる日々を送っていた。ある時、深月は奉公先の令嬢の身代わりとして、意に沿わない縁談を受けることに。だが、祝言の夜、その相手はあやかしに取り憑かれ、深月に刃物で襲いかかってきた。そんな彼女を救ったのは、鬼を宿した妖刀を使う青年、帝国軍特命部隊隊長・朱凰暁。

 暁によれば、深月は“稀血”という特別な血を持つ存在で、その血はあやかしの狂暴性を誘発させるのだという。

「君は俺のそばにいるべきだ 花嫁としてここに」

 深月の身を守るため、そして民の安寧のため、暁は深月に偽りの花嫁として自分のそばにいることを提案する。こうして深月は、そのまま暁の屋敷へと連れ帰られることになるのだが……。

美青年と愛くるしい少女……原作の華やかな世界が目の前に広がる

 胡桃色の髪から覗く満月のような瞳の美青年と、彼に守られる愛くるしい少女。やっぱりコミカライズ版の魅力は、原作で描かれた世界が鮮やかに眼前に現れることだ。レトロで華やかな世界で紡がれるふたりの物語はどこまでも美しい。暁のふとした表情や言葉に思わず胸が高鳴り、深月の可愛らしさに頬が緩む。

偽りから始まる関係に芽生える、温かな感情

 深月は「花嫁」として暁の隣にいるが、それはあくまで偽り。暁には“稀血”が必要な理由があり深月をそばに置いているだけで、「花嫁」というのは周囲を納得させるための嘘だ。そのはずなのに、ふたりの間には、本人たちも気付かぬままに、温かい感情が芽生えていく。

 奉公先では顔を見せるだけで不愉快だと言われ、感情さえ押し殺して生きてきた深月。だが、そんな深月に暁はどこまでも優しい。

「顔を上げて笑っていいし もっと会話を楽しめばいい 何かに怯える必要などない!」
「君を守ると誓った俺の言葉を信じてくれ」

 そのまっすぐな言葉に背中を押され、深月は次第に前を向けるようになっていくのだ。

 そして、暁もまた、そんな深月を見ていると、妙に心をくすぐられるような感覚を覚えている。だが、うぶなふたりは、なかなかそれを恋心だと自覚しない。そんなふたりのやりとりが、とにかくムズキュン。見ているこちらはドキドキが止まらないのに、本人たちはまるで気付いていないのがたまらなくじれったい。

深月が招く脅威――迫り来るあやかしとの戦い

 そんなふたりの姿に胸をキュンキュンさせられながらも、彼らを取り巻く事態は深刻だ。深月が持つ”稀血”の香りをあやかしが嗅げば、血を求めて襲いかかってくるのだという。最強の軍人と呼ばれる暁は、どうやって、深月を守るというのか。

「ずっと待っていた。君と出会う日を――」

 冷たく閉ざされていた深月の世界が、暁の言葉ひとつ、ぬくもりひとつでやわらかく色づいていく。その尊さに胸がいっぱいになりながらも、深月の“稀血”が招く危機は、ふたりに静かに影を落としていく。ようやく芽吹きはじめた想いは、どこへ向かおうというのか。胸キュンと緊張感のはざまで、どうしようもなく続きを読みたくなってしまう。

文=アサトーミナミ

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