建物に入る熱を“減らす”のは「断熱」「遮熱」どっち? 猛暑でも快適な生活を手に入れる「遮熱」超入門本【書評】
PR 公開日:2026/7/31

2025年6月、職場での熱中症対策が義務付けられた。記録的な猛暑が続くなか、暑さから人の命や健康をどう守るかは、社会全体の課題となっている。
その解決策の一つとして「遮熱」の可能性を追究してきたのが、『地球を守る! 快適な生活が手に入る!「遮熱」超入門』(講談社)の著者である、日本遮熱株式会社 代表取締役社長の野口修平さんだ。
何かが「おかしい」「もっとよくなるはずだ」の直感を信じて
30年にわたり「遮熱一筋」で研究を続けてきた野口さんは、1998年、米国で遮熱施工された工場を訪れ、猛暑にもかかわらずエアコンなしで快適な室内環境が保たれていることに衝撃を受けた。以来、幾度とない実験と検証を重ね、遮熱材や施工法の研究・開発を続けてきた。
しかし、その道のりは平坦ではなく、ときには「薄いアルミで何か変わるのか」「常識的にあり得ない」と周囲から冷ややかな発言を浴びながらも、著者は研究へ熱心に取り組んできた。もし、教科書通りの考え方に縛られていたならば、現在の技術も会社の発展もなかったという。
著者の歩みを通じて本書で学べるのは、遮熱の知識だけではない。何かが「おかしい」「もっとよくなるはずだ」という直感を大切にし、常識を疑う姿勢でもある。
熱を入れにくくする「遮熱」と熱の移動を抑える「断熱」
そもそも、遮熱とは何か。本書では、熱が「伝導」「対流」「輻射」という3つの方法で移動すると解説する。
なかでも、太陽から地球へ届く熱は輻射によって伝わり、屋根や外壁に吸収されることで建物自体が熱を持つ。その熱が室内へ伝わり、暑さの原因となる。遮熱とは、こうした熱を反射し、建物に入る熱そのものを減らす考え方だ。
ここで重要になるのが「断熱」との違いである。断熱材には熱の移動を遅らせる働きがあるものの、熱そのものを消すわけではない。屋根や外壁が受けた熱はいずれ室内へ伝わり、いったん建物に入った熱は外へ逃げにくくなる場合もある。
本書は断熱を否定するのではなく、熱を入れにくくする「遮熱」と、熱の移動を抑える「断熱」の役割を理解し、効果的に組み合わせる重要性を伝えている。
都市の気温が上昇「ヒートアイランド対策」での可能性も
実は、私たちが感じる暑さは気温だけでは決まらない。例えば、同じ30℃であっても、周囲の壁や床の温度、風、湿度などによって体感での温度は変わる。
また、人体は周囲の環境と常に熱をやり取りしているため、体に入る熱と外部から受ける熱を処理できず、体の調節機構に無理がたたると「熱ストレス」が生じる。暑さ対策には、エアコンでただ空気を冷やすだけでなく、生活する上での熱環境そのものを見る必要があるのだ。
遮熱と断熱を適切に組み合わせれば、建物に入る熱を抑えながら室内の快適な温度を保ちやすくなり、エネルギー消費の削減にもつながる。
さらに本書は、一棟の建物から都市全体へと視野を広げている。太陽の熱を大量に受ける屋根のあり方を変え、建物が蓄える熱を減らしていけば、社会課題となっている「ヒートアイランド現象」による都市の温度上昇すらも、抑えられる可能性があるという。
専門的になりがちな熱の仕組みを図解や身近な例でひもときながら、適切な暑さ対策に役立つ知識を伝える本書。30年にわたり常識を疑い続けた技術者・野口さんの歩みは、遮熱の可能性とともに、非常識と思われる発想の中にこそ未来を変える種があることを教えてくれる。
文=カネコシュウヘイ
