前世が「世界一愛された猫」だった悪役令嬢は、予知夢で見た処刑ルートを回避できるのか? 天真爛漫さが人を動かす、元猫が主役の異世界ラブコメディ【書評】

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PR 公開日:2026/8/7

婚約者様には運命のヒロインが現れますが、暫定婚約ライフを満喫します! ~嫌われ悪女の猫転生譚~
婚約者様には運命のヒロインが現れますが、暫定婚約ライフを満喫します! ~嫌われ悪女の猫転生譚~(星見うさぎ:原作、Qi234:キャラクター原案、宮嶋リョク:作画/少年画報社)

 もし何らかの方法で自分の未来を見られたら、または見てしまったら、そしてその未来がよくないものだったら、あなたは絶望するだろうか? それとも、未来は変えられると信じて自分の道を進むだろうか? 筆者は変えられると信じて動きたいタイプだし、そう信じている人が好きだ。もちろんどうにもならないこともあるだろうが、未来は自分の選択によって無数に分岐していくのだから、動かないのはもったいない。

婚約者様には運命のヒロインが現れますが、暫定婚約ライフを満喫します! ~嫌われ悪女の猫転生譚~』(星見うさぎ:原作、Qi234:キャラクター原案、宮嶋リョク:作画/少年画報社)は、思わず改めてそんなことを考えてしまう、自分が処刑されるという予知夢を見た侯爵令嬢の物語だ。

 本作は、主人公である侯爵令嬢のルシル・グステラノラが身に覚えのない罪で王子に婚約破棄され、呪われた一族と言われている辺境伯フェリクス・レーウェンフックとの婚約を強制されるところからスタートする。

 ショックを受けたルシルは倒れ、その中で将来自分が大罪人として処刑される予知夢を見てしまった。

 しかし同時に、自分が前世で多くの飼い主たちに愛された猫リリーベルだったことを思い出す。

 ルシルは飼い主の一人から言われた「未来は変えることができるからね」という言葉を思い出し、最悪の結末を回避して気ままに暮らすことを目標に婚約者フェリクスのもとへ向かった。本来、彼女の心は気ままな猫なのだから。

 一方、ルシルを迎えたフェリクスは、会って早々「俺はおまえのような心の醜い愚かな女が大嫌いだ」と宣言し、メイドもつけず一人離れに放置するなど、悪評の多かった彼女を毛嫌いしていた。

 だが、優しく天真爛漫で文句一つ言わない彼女の本当の姿を知り、自身の対応を後悔する。そして人を頼るのではなく、自分の力で生きようと前を向いて自由に輝くルシルと過ごすうち、そんな彼女に惹かれていく――。

 ルシルは「世界一愛された猫」としての前世の記憶を取り戻したことで、自分に絶対的な自信を持っている。たとえ嫌われても、それは相手に自分の魅力が刺さらなかっただけ。自分に価値がないことにはならない、と自分を愛し、ただただ自分に正直に前を向く。

 だからこそ、他人より自分の今や未来に期待をするし、置かれた境遇を人と比較することもしない。ルシルの中にあるこの下地は、多くの人がうっかり忘れてしまいがちな、それでいてとても大事な考えなのではなかろうか。ルシルを見ていると、なぜ彼女が次々と飼い主に恵まれる「世界一愛された猫」だったのかが分かる気がする。

 そしてルシルのこの人柄は、フェリクスに思いを寄せるロハンス伯爵家の令嬢アリーチェまでも虜にしていく。見るからに気の強いライバル的悪役令嬢だったアリーチェが嬉々として話をし、最後には「…また来るわ」と陥落するシーンを見ていると、彼女の話に素直に耳を傾け興味を持つルシルの傾聴力を感じざるを得ない。これが愛される力か……!

 ルシルにとって、これらのことは人に好かれるための行動ではなく、自分を好きでいるための、自分を含めたみんなを幸せにするための行動なのだろう。だからこそまっすぐ人に刺さる。そんなルシルの生き方を追っていくことで、1巻を読み終える頃には、ファンタジーなラブコメディと自己啓発本を同時に読み終えたような満足感と気づきを得ることができた。あと、ルシルが持つ愛らしい猫っぽさにもぜひ注目してほしい。

 前世の記憶を取り戻し、持ち前の天真爛漫さで、予知夢で見た処刑を回避すべく自由に生きる道を選んだルシル。1巻の後半では、そんなルシル自身の秘密にもじわじわと迫っていく――。自分を信じて生きる彼女が処刑という未来を変えられるのか、誰にどんな変化をもたらすのか、ぜひとも最後まで注目したい。

文=月乃雫

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