東大生クイズ王 伊沢拓司インタビュー。彼はなぜ時代の寵児となり得たのか?

エンタメ

2018/9/14

 東大生クイズ王として、クイズを発信する知的メディアQuizKnock編集長として一躍、時の人となった伊沢拓司。彼はなぜ時代の寵児となり得たのか。その素顔に迫る。

あらゆる人と会い、あらゆることを経験をする。
ときにはギャンブルでさえも。
すべてはクイズのために

――伊沢さんはクイズプレイヤーとしてだけでなく、QuizKnockではクイズ製作者としても活動されていますよね。クイズを解くことと作ることにはどんな違いがあるのでしょうか。

伊沢拓司氏(以下、伊沢)「これは全く違うものだと捉えていますね。野球で例えてみますと、解くことはすなわち選手の立場です。地道にバットを振り、練習を重ね、技術の向上を目指し、試合にのぞみます。そして結果を残すことを考えますし、瞬発力も経験も必要です。対してクイズを作ることは、コーチや監督の立場に近いといえますね。まずはクイズというものを理解し、文法を覚え、また戦略を冷静に立てて作っていきます」

――クイズはどのように作るのですか?

伊沢「家に閉じこもって本を読みながら作るということは実はほとんどありません。もちろんそれも必要なことですが、万能にならなければならないんです。だから僕はとにかく外に出ます。電車の中吊り広告やコンビニで商品を選んでいるときなど、生活の中で急に思いつくことが多いですね。あらゆるシチュエーションの中から発想していきます。それによって特定のジャンルに偏らず、多くの人に楽しんでもらえるクイズが作れるようになるのかなと感じます」

――幅広い知識を得るためにやっていることはありますか?

伊沢「制限を設けずにあらゆることに手を出すようにしています。クイズのためにとギャンブルもやったことがあります。あらゆる年代の人と会話したり、いろんな人やものと目線を合わせるようにしていますね。年上の方だけでなく、若い子も僕にたくさんのことを教えてくれるんですよ」

影響を受けた本はサブカル界の神様・大槻ケンヂのエッセイ

――伊沢さんは青春時代、どのような本に影響を受けてきたんでしょう?

伊沢「大槻ケンヂさん(※80年代ロックバンド「筋肉少女帯」のボーカル。エッセイスト、作家としても活躍)のエッセイが好きでしたね。中1の時にフットサル部で挫折してそこから文化部であるクイズ研究会に入るんですが、運動部へのコンプレックスというものが根深くあったんです。そんな気持ちに寄り添ってくれたのが大槻ケンヂさんのエッセイの数々でした。彼のエッセイはコンプレックスや挫折と向き合うものが多かったですが、格闘技や映画、SFなどのマニアとしても知られていた彼のエッセイには膨大な知識が詰め込まれていて、それがクイズにも役立っていたと思いますね。それを狙いとして読んだわけではありませんが」

――大槻ケンヂさんと一見すると王道を歩んできた東大出身の伊沢さんの接点はとても意外です。

伊沢「僕はいわゆる王道タイプではないと思いますね。根底には『人が持っていないものを持ちたい』という欲が強かったんだと思います。漫画にしても小学生の頃からシリアスな『シャーマンキング』、中学時代は福本伸行先生の『天』という麻雀漫画、高校時代は山本直樹先生の『レッド』という浅間山荘事件をモデルにした漫画に夢中になりましたし」

クイズは人生を広げる一歩目の存在。
自分の人生では出会わないことに気づかせてくれる

――伊沢さんの人生にとって、クイズはどのような存在ですか?

伊沢「『一歩目を与えてくれる存在』です。クイズを通じ、興味がなかったこともまずは存在を知ることができます。そして人生の中で二度目にその物事に触れた時、『そういえばあの時の』と意識するきっかけになり、素通りしなくなるんですよ。クイズをきっかけに世界が広がることは今までもたくさんありました。自分の半径だけでなく、大きな網をあらゆるところに仕掛けることのできるクイズは、人生の広がりをもたらしてくれるんです。クイズがみなさんの人生の『一歩目』になることをいつも願っていますね」

発売中の最新著作『無敵の東大脳クイズ』について

――最新作『無敵の東大脳クイズ』についてです。伊沢さんはたくさんのクイズ本を出版されていますが、今回の本と今までの本との違いはどんな点でしょう?

伊沢「今まではどちらかというと、ビジュアルにこだわったり見やすさだったり、とっつきやすさだったり、クイズの楽しさを前面に出したものが多かったんです。でも僕がクイズを取り組んでいて思うのは、楽しさをキープしつつ、クイズ技術を向上させる1冊が作れないものか、ということ。クイズ技術を上げるためにもっとも重要なことは、やはり数をこなすことなんですね。この本では問題数をできる限り増やし、330問収録しました。これによってクイズ技術を上げることを強く意識しています」

――読者の中にはクイズ技術の向上という目的なしに、気楽にクイズを楽しみたい、と思う人も多くいるかと思いますが、その点はどう思われますか?

伊沢「もちろん理解しています。ただクイズを楽しむこととクイズ技術を向上させることって、実は同じことなんです。結局は同じゴールともいえますね。この本ではあえてジャンルをバラして収録していますが、それはクイズ技術の向上はもちろん、楽しみを追求するためでもあるんですよ」

――それはどういう意味でしょう?

伊沢「もちろん得意ジャンルを伸ばすことも楽しいのですが、先ほども言ったようにクイズを通じて初めて知る世界があります。僕自身、クイズをきっかけに興味を持ったものがたくさんあり、これこそクイズの素晴らしいところだと思うんです」

――なるほど。そういった意味でもこの本には、世界が広がるきっかけが詰まっているはずだと。

伊沢「はい、そういう本になっているはずです! 密度の高い1冊になっているので、全て解き終った頃には気持ちの良い達成感をまずは味わえるはず。そして技術的な成長ももちろん期待できます。さらには今まで知らなかった世界が広がればいいな、と。そこまで読者のみなさんにアプローチできればうれしいですね」

写真=伊藤彰浩(COiL management)
取材・文=吉田奈美