なぜ幕末と戦国は人気がある? 黒船の大きさはどれくらい? スタディサプリ・伊藤賀一先生×芸人・房野史典が幕末を語り倒す!

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公開日:2018/9/23

「スタディサプリ」の人気講師であり、『学習版 日本の歴史人物かるた』の著者・伊藤賀一先生と、『笑えて、泣けて、するする頭に入る 超現代語訳 幕末物語』を8月に発売したばかりのお笑いコンビ「ブロードキャスト!!」の房野史典さんが、幕末を中心に日本の歴史を語るトークイベント「伊藤賀一さんと房野史典さんが教える 笑って、泣ける日本の歴史~幕末編~」を開催しました。

■『超現代語訳 幕末物語』は「現代の何か」に例えているところがスゴい!

 下は10歳の小学4年生から上は60代という幅広い世代、約90名が参加したことを知った房野さんは「うれしい!」と満面の笑み。ちなみにこの日はライブ感を出すため、事前の細かい打合せは一切なし。お互い知り合いという伊藤先生と房野さんは、ぶっつけでトークを開始!

 幕末に活躍した新選組の誕生地である京都の壬生出身という伊藤先生に「出た! ズルい!」とツッコむ岡山県井原市出身の房野さん。しかし伊藤先生によると「実は京都の聖地はかなり雑に扱われている」とのこと。池田屋の跡は居酒屋でその前はパチンコ屋だったことや、そして坂本龍馬が暗殺された場所は回転寿司屋(その前はコンビニ)だったというビックリ情報が! 「日本は欧州に比べて歴史に対してのリスペクトが足りないかなと思う点があるものの、由緒の有る場所が今はこんなふうになっている、ということを追いかけるのも面白い」という、歴史を楽しむ視点を教えてくれました。

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 そして房野さんの『超現代語訳 幕末物語』を読んだという伊藤先生。すごいなと思ったのは「現代に例えたら何か」が書いてあることだと指摘。とにかく幕末の歴史は入り組んでいて難しいもの。その理由は、幕府の政策と各藩の殿様の政策が一貫していないこと。たとえば藩としては領民を守るために幕府方、公武合体派についておかなければならないけれど、政治家としての野心からは尊王攘夷運動側にも肩入れしないといけないという「やじろべえ」のような状態になっていると、その場その場の状況に応じてユラユラ揺れるので、「この藩って、どっち派なの?」とゴチャゴチャしているからなのだそうだ。それが『超現代語訳 幕末物語』では、現代とうまくつなぎ合わされて「今の何か」に例えて提示されていて、最後まで飽きさせずに読ませるという点でも素晴らしいと絶賛! その証拠に、10歳の子が読み通していると伊藤先生がダメ押しすると、房野さんは「ムチャクチャ嬉しい」と喜び全開!

「本は全世代に向けて書いている」と言う房野さんは、歴史が苦手という人が多いので、この本を通して「とりあえず1回、ちょっと歴史の入り口、のぞいてみて!」という気持ちを大事にしているそう。
そして「ノンフィクションはいろいろあるけど、これだけ面白い話って、他にないでしょ!」と歴史の楽しさを力説。まずは『超現代語訳 幕末物語』で歴史の流れを知っていただき、興味を持った人は伊藤先生の本など、より詳しい本を読んでみるといいんじゃないかな、とオススメしていました。

■ペリーの黒船はいったいどのくらいの大きさだった?

 ……とここで脱線しまくった話から「先生、そろそろ幕末の話ですけど(笑)」と房野さんが軌道修正。なぜ幕末と戦国は人気があるのか、と伊藤先生に質問すると「戦国も幕末もガラガラポン、下剋上だということが大きい。チャンスが広がっているんです」と明快な答えが返ってきて、房野さん「あ~、なるほど!」と超納得。実は一般に、鎌倉時代から幕末までは「封建社会」が続いていて、親の職業を受け継ぐのが当たり前の、生まれた瞬間に人生が決まっているのが普通だった世の中でした。その中で一発逆転を狙えたのが「戦国時代」と「幕末」で、それが現代人にもストライクする理由なのだそう。

 それを受けて、房野さんは幕末を「歴史上で一番度肝を抜かれた時代。想像だにしなかったもんが入ってきた時代」と説明します。伊藤先生はその「外からの衝撃」を「壁外から巨人が攻めてきた」と形容します(もちろん『進撃の巨人』のことです!)。その黒船襲来のインパクトがどのくらいだったのか、伊藤先生がわかりやすく教えてくれました!

伊藤 日本の船で一番大きかったのは菱垣廻船(ひがきかいせん)で、千石積でした。当時、幕府から大船(たいせん)建造の禁という法令が出ていて、基本は五百石積以上の船は作ってはいけないことになっていたのですが……ではペリーの蒸気船はどのくらいの大きさ、何石積だったと思います?

房野 うわ、石か……ナンボだろう?

伊藤 答えは……二万五千石!

房野 デカすぎだろ、二万て!(笑)

伊藤 例えばコイで考えてください。1メートルの鯉が泳いでたら、デカっと思うじゃないですか。

房野 メッチャ思いますね。

伊藤 それで行くと、25メートルの鯉が目の前に!

房野 うわっ! 気持ち悪っ!

 しかも蒸気で動く船を見たことがなかった日本人には「風もないのに自動で動く、超巨大な黒い何か」と、船にすら見えなかったかもしれないという可能性もあるんだそうです!

■「縦」と「横」で知識を「面」にしていくのが歴史を学ぶコツ

 その後も「高杉晋作は背が低く、イキリ体質で、ものすごい長い刀を差していたので引きずって歩いていた。なので座った写真しか撮らせなかった」「伊藤博文が内閣総理大臣になったのは44歳で、この歴代最年少記録は破られていない」「小学校などにある二宮金次郎像は、実は高2くらいの年齢の頃の姿を像にしている」など、歴史上の人物たちの様々な話が飛び出し、会場は爆笑に包まれていました。

 と、ここで房野さんから「僕、高校も大学も推薦で入ったので受験をやっていなくて、歴史を専門に勉強したこともない、何もやったことないんで……歴史って、どうやって勉強すればいいんですか?」という衝撃の質問があったのですが(房野さん、本はあくまで“趣味”で書いているそうです)、伊藤先生はこの質問にクリアに答えてくださいました!

「まず歴史っていうのは、これは世界史でも同じなんですけど、時系列であるということが一番のポイントになるんですね。なので『点の知識』があるわけですけど、これは鉄道の駅みたいに考えていただければいいんです。この「点」の知識を繋いで、「線」の知識にする。いつ何が起きたのか、ということを押さえないといけないんです。だから細かい年代をキチッと暗記する必要はなくても、前後関係、これよりもこっちの方が前である、または後に起こったということを覚えるんです」

 そして線になった「縦の知識」と、それと同じ時代に何があったのかという「横の知識」を両方押さえて、知識を「面」にしていくことが「理解をした」ことになるのだそうです!

■歴史上の武将の末裔が会場に!

「もし現代に甦ったら日本を率いそうな人物」「結婚したいくらいカッコイイ人物」などを大放談した後、参加者からの質問を受ける伊藤先生と房野さん。最初は最年少10歳の女の子からの「何歳で歴史を好きになったのですか? 一番最初に歴史を好きになったのは何時代ですか?」という質問。房野さんはゲーム「信長の野望」と自宅にあったおじいさんの蔵書から戦国時代にハマり、伊藤先生は京都生まれであること、そして源平合戦が好きになったきっかけだったそうです。

「徳川幕府で好きな将軍は?」という質問からは、十一代将軍家斉がなぜ子どもを55人も作ったのかという話に展開。また「信長が殺された真相」についての質問には、伊藤先生は「秀吉や千利休が黒幕なのではないか」という謀略説。房野さんは、上司である信長に裏切られた明智光秀の仕業という光秀、ちゃんとやった説。それぞれ唱えていました。

 また「戦国時代のマイナーな武将を教えてください」という戦国マニアの女性からの質問に、房野さんが徳川家康の家臣「榊原康政」と答えたところ、その次に質問した人がなんと「先祖が榊原康政」というミラクルが起こり、いっそう戦国武将の話題で盛り上がるという場面もありました。

 最後に伊藤先生が「興味は縦にも横にも斜めにも、どんどん繋がっていく。試験のために勉強するわけじゃないから、こうやって広げていけばいいと思います。今回のイベントや房野さんの本、僕のカルタが入り口になってくれればいいですね」と言うと、「そうですね。そしてさすがここに来ようと思っただけありますね。皆さん、素晴らしい!」と濃い質問を受けた房野さんが締めて、約2時間のトークショーは終了。サイン会も盛況となりました。

 そして房野さん、なんと9月21日から「幻冬舎大学 大人のためのカルチャー講座」で、日本史芸人・房野史典の、笑えて泣ける「戦国と幕末の話」という全5回のセミナーを開催予定なのだそうです。気になる方はぜひご参加を!

▼日本史芸人・房野史典の、笑えて泣ける「戦国と幕末の話」
http://www.gentosha.jp/articles/-/11066

取材・撮影・文=成田全(ナリタタモツ)