いよいよTVアニメ2期がスタート! 原作・押切蓮介&プロデューサーが語る、「『ハイスコアガール』に託したもの」(後編)

アニメ

公開日:2019/10/25

TVアニメ『ハイスコアガールⅡ』10月25日(金)25:05より毎週金曜、TOKYO MXほかにてROUND16~放送

 90年代のゲーマー少年と少女の出会いと恋を描いた『ハイスコアガール』。その待望のTVアニメ第2期がいよいよオンエアされる。そこで原作者の押切蓮介と、アニメを手掛けるワーナー・ブラザースジャパンの鶴岡信哉プロデューサーに、第1期から第2期へかける想いを語っていただいた。後編では、無事に完結した原作の連載についてや、アニメの3DCGのこだわり、実際にゲームセンターでボーイ・ミーツ・ガールが成立するのかといった、ちょっと生々しいお話を伺った。ぜひ、TVアニメ第2期の予習として楽しんでいただきたい。

時代性も含めて、いろいろなアプローチをしている作品(鶴岡)

――『ハイスコアガール』第1期のアニメ放送(ROUND12)は2018年9月に終わりました。そのとき、押切先生としてはどんな印象をお持ちになりましたか

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押切:どうだったかな。たしか原作の最終回(LAST-credit)をちょうど描いている頃に、アニメが後半の放送に入っていたんですよ。

鶴岡:そうですね。ちょうどアニメのROUND12放送のタイミングで、原作が完結したんです。

押切:だから、僕は原作の執筆に集中していましたね。ここ4~5年は終わらせることだけに集中して連載してきたので。

鶴岡:最終回を脱稿したときの脱力感がすごかったですよね?

押切:やっぱねえ……。いろいろありすぎたからこその脱力感だったのかな、と言い訳したいところなんですけど。

鶴岡:2018年の9月頃は荒れてましたよね(笑)。

押切:次は何を描くかなんて考えたくもないって感じでした(笑)。

鶴岡:そんな中でアニメがあって。押切先生にも楽しんで観ていただけたのなら、それは良かったのかなと。

押切:いや、本当に。こんなに繰り返し観ているアニメは他にないですよ! 僕はアニメはあまり観ないんですが、『ハイスコアガール』は面白いなって。自分が作ったとか、そういう気持ちはまったくなく。単純に「良いじゃん、これ!」って思えたんです。

――アニメの放送と原作の最終回を揃えるのは、狙っていたんですか?

鶴岡:全然狙っていませんでした。

押切:完全に、たまたま、でした。大変でしたけど、終わったときはホッとしました。アニメが終わってしまったことは、ちょっと寂しかったですけど。

――先ほど「ここ4~5年は終わらせることだけに集中してきた」とおっしゃっていましたが、原作の最終回の構想はその頃から決まっていたんですか?

押切:そうですね。最終回の展開は単行本4巻~5巻のころから考えていました。

鶴岡:ああ、そうだったんですね。

押切:良い作品として終わらせることができれば、世間が納得してくれるだろうと。僕にできることは、人の心を動かすことだけなんで。『ハイスコアガール』を感動的に終わらせたいな、と思っていました。

――アニメ『ハイスコアガール』は第12話までがテレビでオンエアされたあとも、EXTRA STAGEとして第13話~15話がNetflixで配信され、同時にBlu-rayでも販売されました。このあたりの構成はどのように決まったんですか?

鶴岡:そもそもアニメ化の企画をスタートしたときは原作が第6巻までしか出ていなくて、JCスタッフさんも1クールしかラインが空いてなかったですし、基本的には1クールでというのは決まっていました。ただ、アニメ化するにあたって、1クールでやるには内容的に切りどころが難しかったし、小春というキャラの立ち位置を考えると、どうしても第5巻や第6巻のエピソードはアニメでやりたかった。でもそうすると絶対に1クール12話では入らないんですね。ですので、あくまで放送の形態である1クール(全12話)という固定観念にしばられずにストーリー的に良いシリーズを作ることを優先して構成を進めましたして。、結果6巻までで全15話になりましたが、第13話から第15話は配信なり劇場なりで先行しつつ、年末スペシャル特番なり然るべき時期に、どこかで放送できれば良いな、と考えていたんです。

――今回、第2期の放送に先駆けて、第13~15話が放送されることになりましたね。

鶴岡:結果的には今回、第2期のアニメが実現したことで、13~15話を放送してから、16話以降をそのまま続けて新たに放送するスキームが組めたのは良い流れになったかと思います。2期が全9話なのも、原作の7巻~10巻を見たうえでストーリー的にベストな話数が8~9話くらいだったんです。もし7~10巻の内容を12話でやったら間延びして、ハイスコアらしいテンポ感が損なわれるんですよ。1期で割愛した5巻の内容やコミックスのスペシャルエピソードも2期では入れて、ちょうど全9話がベストになったと思っています。もちろん原作準拠であまりオリジナル展開を入れないというハイスコアの基本方針ありきの話ですが。

押切:EXTRA STAGEの評判も良かったと聞いていますよ。それを聞いて、妙に嬉しかったんです。

鶴岡:13~15話も、おかげさまで評判は良かったですね。Netfiixでの配信開始と同時にビデオが出るというのも特殊だったかもしれません。ただビジネス的な観点からしても、現在のTVアニメシリーズは過渡期を迎えていると思いますし、お客様のアニメの見方やお金の使い方も当然変わってきています。シリーズコンテンツとして放送と配信やパッケージをどう展開するか、需要が高くなった海外配信をどう捉えるか、いろいろと考えなくちゃいけない。でも変わらず重要なのは面白いものを作ることで、原作モノだといかに原作の良さを活かしてどこまでアニメ化するか、なんですよね。そういう時代性も含めて、いろいろなアプローチをしている作品になっています。

ボーイ・ミーツ・ガールがあったか? ない! ないですよ、そりゃ(笑)(押切)

――時代性と言えば、アニメの『ハイスコアガール』はフル3DCGの作品です。押切先生の絵を見事に再現している印象があったのですが、押切先生はどのようにご覧になりましたか?

押切:最初にCGでアニメ化すると聞いたときは、全然想像がつかなかったんです。CGで作られたアニメもいくつか見たことがあるんですけど、『ハイスコアガール』はどうなるんだろう? 成立するのかな?という不安感があって。でも、今回のスタッフのみなさんのCGの技術力がすごくて。まるで手描きのような映像になっていて、動きも違和感がない。職人さんは本当にすごいなと思いましたね。CGスタッフにこそ、インタビューしていただいたほうが良いと思います。

鶴岡:CGに関しては、完全にJCスタッフさんとSMDE(小学館ミュージック&デジタル エンタテイメント/本編を制作)さんのお力ですよね。松倉プロデューサーが言っているように、ゲームの筐体があって、その中にゲームの画面が流れて。その前に座るふたりのプレイヤーを描くのは、手描きアニメで作るのは至難の業なんですよね。そういった面からも今回、フル3DCGに舵を切りました。押切先生の絵のタッチを具現化することや、90年代の時代感を描くということなど、CGでは難しそうなところも見事に表現してくださって、本当に素晴らしいなと思いました。あと、JCスタッフさんはもともと撮影に定評があるのですが、ゲームの処理も含め、撮影で叙情感がグンと増していましたし、おかげで恋愛感情の動きが細やかに感じられました。

――小春のまつげとか、細かいディティールも3DCGで見事に再現されていましたね。

鶴岡:先生の描く小春はたしかにまつげがモサモサしてますよね(笑)。そういう漫画らしいところもいい具合に再現されていたと思います。押切先生の絵は独特のタッチがありますが、あの感じを線を減らしつつセルルックで表現していることできやキャラの質感も滑らかになっていて。胸も柔らかそうに見えますし。

押切:見えますねえ! 動くものに関しては、いつも僕はうらやましいなと思っているんです。僕はもともと映像を作りたいなと思っていて。でも、映像を撮るためには、たくさんの人に動いてもらわないといけないから、それは僕には無理だなと挫折してきたんです。じゃあ、ひとりでやれるものとして、漫画を描いてきたんですよね。そういう思いがあるから、僕は映像に対してリスペクトの感覚が強いんです。そうしたら、まさか自分の作品を他人の力によって映像化していただけるなんて。本当にありがたいなと思っています。

――『ハイスコアガール』では原作漫画とアニメ、それぞれの良さが出ているような感じがあります。

押切:僕は正直、漫画よりも映像のほうがメディアとして優れているんじゃないかという気持ちがあったんですよね。でも、今回のアニメ化を進めているときに、アニメのスタッフさんから「漫画の見開きの力は絶大なんだ」と言われたんです。というのも、『ハイスコアガール』では第3巻でハルオと大野さんがケンカをした後、ハルオが大野さんのネックレスにした指輪を見るシーンで、初めて見開きページを使ったんですよ。「あのページの破壊力を映像で表現するのは難しい」という話を聞いた時に、自分でも、「ああ、漫画ってすごいんだな」と。漫画って良いな、と20年以上漫画を描いてきて、初めて思いました。漫画も悪くないなと。お互いがそれぞれのメディアにリスペクトを払いながら、ひとつの作品を作っていくのは美しいなと感じました。

鶴岡:メディアの違いですよね。お互いの長所を活かして作品作りをするという。

押切:担当編集者によく言われるんですよ。「押切さんは、ないものねだりがすごい」って(笑)。漫画は、ちっぽけなコマの中に一生懸命絵を描き込まなくちゃいけないので、そういう作業をずっとしていると、ほかのメディアに関わっている人がうらやましくなっちゃう。映像を作る人やミュージシャンに嫉妬しちゃうんですよね。でも、今回の『ハイスコアガール』で、やっとそういう気持ちから解き放たれたような気がします。

――レトロゲームという要素も、みんなを惹きつける要素になっていたのかもしれませんね。

押切:松倉さん(アニメーション制作統括/JCスタッフ)があんなゲーム好きだとは思わなかったです。アフレコのときにいつもゲームのTシャツを着ていて。

鶴岡:ほかのスタッフやキャストもゲーム好きは多いですね。

押切:いやあ、ありがたいですよね。好きなものを仕事にするのは楽しいんだなあ、と改めて思いました。

――『ハイスコアガール』は90年代のゲームを通じてボーイ・ミーツ・ガールが描かれるわけですが、おふたりはそんな甘酸っぱい経験はありますか。

鶴岡:ゲーセンでのボーイ・ミーツ・ガールはまったくなかったですね(笑)。僕は押切先生と同い年なので、『ハイスコアガール』の時代とも当然ドンピシャで、当時よく男同士でゲームセンターにも行ってました。でも、格ゲー(対戦格闘ゲーム)はあまり強くなくて、すぐにお金がなくなって、でも友達はまだゲームやってるし、よくデモ画面を眺めて時間をつぶしてましたね。ヴァンパイアハンターのオープニングデモとか、きれいでしたね、当時。あとは不良に絡まれないように逃げ回ったり(笑)。あと、コンシューマーゲーム機のほうもやりこんでいたのでファミコンや、PCエンジンのゲームネタ、プレイステーションやセガサターンが出てきたときのワクワク感とか、ものすごく共感しました。

――押切先生には、ボーイ・ミーツ・ガールがあったんですか?

押切:ない! ないですよ、そりゃ(笑)。別作品になりますが、『ピコピコ少年』で描いている内容がほぼ僕の実話なので、『ハイスコアガール』みたいなことは現実にはないです。あの頃は、女の子にそこまで興味がなかったと思うんですよ。ゲームにしか興味がなかった。女の子よりもゲームでした。

鶴岡:同世代の女の子に興味がなくても、でも、エロには興味があったでしょ?

押切:それは、そうですね(笑)。そういえば単行本7巻あたりから、ハルオが性に少しずつ興味を持ち始めるんですよ。

鶴岡: 2期でも、そういった恋愛感情の変化が見どころのひとつです。当時の僕らがみんな妄想していた「こんな出来事があったら良いな」ということを、見事に表現してくださっているところが『ハイスコアガール』の良いところなんですよ。

――大野と小春は、ゲーマーにとって理想のヒロインということですね。

押切:現実には絶対にいない女の子ですけどね。

鶴岡:当時のゲームやアニメはかなりマニアックなくくりに入っていたので、興味がある女の子もあまり大きな声では言えなかったかもしれない。今だったら違うかもしれないですよね。

押切:今の女の子には、オタク趣味への理解がある人も普通にいますからね。

鶴岡:ゲームをプレイしている女の子も多いですし……。

押切:『荒野行動』とか、ゲームが上手い人のほうがステイタスは高いらしいですからね。

――さて、お話は尽きませんが『ハイスコアガール』の第2期で見てほしいことがあれば最後にぜひお聞かせください。

押切:性を意識し始めた彼らのドラマを注目してください。その微妙な描写が、本当にすばらしくて。山川(吉樹)監督の力の入れ方がすごいんです。

鶴岡:山川監督はギャグ演出が好きなイメージがありますが、実は心情ドラマの描写も素晴らしいんですよね。

押切:僕って恋愛シーンのあとに、照れ隠しみたいなギャグを入れるじゃないですか。そういうところの感覚が、山川監督と似ているなと思うんです。

鶴岡:2期の見どころはもちろん最終回ですね。原作と同じく、よいクライマックスになっていると思います。音楽にも注目して見てほしいですね。あとキャラ的にはメイン3人以外だと姉ちゃん(大野真)とお母さん(矢口なみえ)がやりたい放題やっていて、中の人の演技含めてとにかく面白いので、ぜひ注目していただければ。

前編はこちら

取材・文=志田英邦

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