マンガ好き声優・斉藤朱夏さんのマンガ選びは「タイトルと表紙で即決!」 どんなジャンルも楽しむ、その熱いマンガ愛について聞いた!

マンガ

公開日:2021/6/18

■最近ハマっているマンガの共通点

――最近はどんな作品にハマっているんですか?

斉藤:まずは『ご成長ありがとうございます~三本家ダイアリー~』。これは三本家のお母さんの目線で家族を面白おかしく描いている作品です。特に3人のお子さんの破壊力がすごい! 「なんでそんなに面白いことをしでかすの!?」って思いながら読んでいます。よそのお家の日常ってなかなか見られないからこそ、それをオープンにしてくれるところが好きなんですよ。すごく疲れた日に読むと、癒されます。クスッと笑えて、気づくと癒されている。そんな作品ですね。

『水は海に向かって流れる』はタイトルに惹かれて読み始めました。ラフなタッチの絵柄で、最初は「ほんわか日常系かな?」と思ったんですけど、読んでみたら意外な展開にびっくり! 主人公の男の子が居候した先で、父親のダブル不倫相手の子どもと出会うっていう、かなりヘビーな設定で。でも、3巻で完結しているので、必要以上に重くもならず、スッキリ終わっているんです。それでもまぁ、ラストは衝撃的だったんですけどね(笑)。作中に出てくる一つひとつのセリフがやけにリアルだったのも印象に残っています。わたしが主人公の立場だったら、こんな風に振る舞えるだろうか……。そう考えながらじっくり読みました。

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――斉藤さんが挙げている作品は、「家族」や「名前のつけられない関係」をテーマにしたものが多いように感じますね。

斉藤:自分ではまったく意識していないんですけど、言われてみたらそうかもしれません。それで言うと『リビングの松永さん』もシェアハウスを舞台にしているので、複雑な関係が描かれているかも。

 でも、この作品は重たいテーマを扱っているわけではなく、ただただ「サイコーーー!」と叫びたくなるような感じ(笑)。久しぶりにキュンキュンした少女マンガです。推しメンは、やっぱり松永さん! 主人公のミーコとは10歳離れているんですけど、絶妙な年齢差ですよね。ちょうど相手に夢を見られる年の差だと思います。

 物語が進んでいくとミーコと松永さんの恋も盛り上がっていって、「もう早く付き合っちゃえよ!」って言いながら読んでるんです。とにかくときめいちゃって、「わたしもシェアハウスに住んでみたい!」と思わされました。

――読むだけでハッピーになれちゃうような作品ですよね。

斉藤:そうなんですよ! ってこの流れをぶった斬るような作品を紹介してもいいですか? 『なれの果ての僕ら』っていう、とにかく地獄みたいな作品があって、それも夢中で追いかけてるんです。

 大好きなサスペンス『骨が腐るまで』と同じマンガ家さんが描いている最新作なんですけど、新刊が出るたびに買っていて、「早く続きが読みたい!」と悶絶しています。同窓会で集まった少年少女が次々に殺されていって、展開が予想もできない。生き残った子たちがこの事件について証言する現代パートと、事件の真っ最中である過去パートが交互に描かれていって、謎を少しずつ明らかにしていく手法がすごい。過去の何気ない一言が恨みを買うきっかけになり、人間って本当に怖いんだな……と思いながら、真相が完全に明らかになるのを楽しみにしているんです。

――ラブコメからサスペンスまで、斉藤さんのマンガの守備範囲は本当に広いですね!

斉藤:結構なんでも読むんです。あと、もう1作いいですか? これだけは絶対に紹介したくて。『ブルーピリオド』っていう美大を舞台にした作品があるんですけど、テレビアニメ化も決まっていて、いま一番楽しみにしているんです!

 前から評判は耳にしていて、一気読みしました。面白かったですし、ちょっとゾッとしましたね。

――どんなところにゾッとしたのですか?

斉藤:芸術の世界って正解がないからこそ、主人公の八虎みたいに苦労して失敗して、それでも、もがいている人たちが大勢いる。しかも、それは現実世界にも大勢いるわけですよ。そう考えると、すごく怖い世界だなって。

 同時に、自分自身を見つめ直さないといけないとも思いました。必死な八虎の姿を見て、「わたしは必死にやれているだろうか?」と。実際、わたしも夢に向かってがむしゃらに走ってきたタイプなので、八虎の気持ちが痛いほどわかります。でも、もっと頑張らないといけない。八虎だけじゃなくて登場人物はみんな一生懸命だし、明日死んでしまうんじゃないかってレベルで常に全力投球している。その姿に刺激をもらいました。

■「次にくるマンガ大賞」は、「好き」を共有する場所

――斉藤さんはジャンルにこだわらず面白いマンガをたくさん発掘されていますが、選ぶ基準はあるのですか?

斉藤:タイトルと表紙です! あらすじも読まずに、「これ、面白そうだな」と思ったら即決しています。マンガって、毎月大量に新刊が出るじゃないですか。そのなかから面白い作品を見つけられると最高にうれしいですね。もちろん、タイトルと表紙からある程度は想像します。でも、それが裏切られるのも楽しみで。

――いい意味で予想を裏切られる、ということですね。

斉藤:そう! だからこそ、マンガ家さんたちを尊敬しています。絵も描ける上に、予想もつかないストーリーを生み出してくれる。どれだけの体力と時間を注ぎ込んでいるのか、作品を読めばわかりますよね。それは愛だと思います。もうマンガ家さんたちには頭が上がらないです。

 それを思うと、「次にくるマンガ大賞」って、マンガ家さんからすればヒヤヒヤするイベントだと思います。でも、作品を評価するというよりも、ただマンガ好きが集まって「このマンガ面白いから、読んでみてよ!」とお喋りしているようなイベントだと思うんです。それぞれが「自分の好き」を提示しているだけ、というか。

――ノミネートされなかった作品が「面白くない作品」ということではないですもんね。

斉藤:ただただ、みんなが「自分の好き」を一生懸命伝えているだけなんですよ。しかも、マンガ好きなわたしでも知らない作品がノミネートされていたりする。「こんな作品があるんだ!」って、いつも驚かされます。あらためて、マンガってこんなにあるんだなって感動するんですよ。だから、普段あまりマンガを読まない人なら、なおさらびっくりするんじゃないかな。わたし以上にマンガを愛する人たちが、推しの作品についてひたすら伝えているような場所ですし。いろんな人の「好き」に触れて、お気に入りの一作を見つけてもらいたいです。

 同時に、受賞した作品だけが素晴らしいわけではなく、魅力的な作品はたくさんあるし、そもそもマンガ自体が素晴らしいものだと思っています。そういう作品を生み出し続けているマンガ家さんたちに敬意を持って、今年も「次にくるマンガ大賞」を楽しみたいです。もしよかったら、みんなにもチェックしてもらいたい。マンガ好きの「好き」に触れれば、きっとマンガ沼にハマっちゃうはずですから。

取材・文=五十嵐 大


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