“手塚作品”を引き継ぐ覚悟『アトム ザ・ビギニング』【カサハラテツロー氏インタビュー】

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2016/6/6

アトム ザ・ビギニングビジュアル

ロボットが“こころ”を持ったら?『鉄腕アトム』永遠のテーマが今甦る

 ロボットヒーローの元祖といえば、1952年に連載が始まった手塚治虫の『鉄腕アトム』である。1963年放映の日本初のテレビアニメでもあり、もし『鉄腕アトム』がなければ、日本が誇るアニメ文化も今とは違っていただろうし、現在、ロボット研究者として活躍する人の多くが『鉄腕アトム』の影響を語るなど、後世に多大な影響を与えた記念碑的な作品だ。

『鉄腕アトム』がなぜこれだけ多くの人に影響を与えたのか。それは、ロボットでありながら“こころ”を持ち、強さの中に弱さとやさしさが描かれたからだろう。

 もともとアトムは事故死した天馬博士の息子に似せて造られた。しかし、天馬博士は人間のように成長しないアトムに落胆し、サーカスに売り飛ばしてしまう。奴隷のように酷使されていたアトムを引き取り、人間と同じように育てようとするのがお茶の水博士だ。アトムにとっては生みの親と育ての親とでもいった関係である。

 この二人が学生時代からの親友だった!? この驚きの設定でアトム誕生前夜を描き話題となっているのが『アトム ザ・ビギニング』だ。原案ではアトムが誕生時から感情を持った完成形のロボットとして描かれたが、若き日の天馬とお茶の水が開発しているロボットは、そのずっと手前の段階。人からの命令なしに行動する人工知能を研究しているのだ。それは、現代の人工知能研究の最重要課題となる“自我”の解明とも重なってくる今日的テーマでもある。

 物語は謎の大災害の5年後から始まる。復興のためロボット技術が急激に進歩したが、いまだ真の自律型ロボットは登場していない。そこへブレイクスルーをもたらそうとするのが、天馬とお茶の水の自称「天才」コンビだ。『鉄腕アトム』の根源的テーマをさらに深掘りする意欲作として、今もっとも次の展開が気になる作品である。

 

●主要キャラクター一挙紹介

若き日の天馬とお茶の水は国立練馬大学ロボット工学科修士の研究生。ロボット開発に没頭するあまり恋愛には無頓着。また、多額の開発費が必要になるため、いつも貧乏。周囲から変人あつかいされる二人に対し、ライバルのロボット研究者はスーパーエリートばかりだ。

天馬午太郎
若き日の天馬はなかなかのイケメンだが、「天才」を自称する我の強さは原作どおりで、負けず嫌いの真っ直ぐな性格だ。人工知能研究用のA106に不必要な1千馬力を備えさせるなど常に究極を求めるタイプで、最終目標は人間を超越したロボットを創りだすこと。

お茶の水博志
意外にも青年時代のお茶の水はスラリとした好青年。ただしトレードマークのだんごっ鼻は原作どおり。非モテ男子であることを気にしているが、ロボット研究に打ち込む充実した日々を送っている。こころを持ったロボット開発の目的は「友達」を作ることだ。

 

●アトムのプロトタイプ!?「A106(エーテンシックス)」の7つの力

天馬とお茶の水の研究テーマは世界初の自律型ロボットを作ること。これまでにも試行錯誤を重ねてきたらしく、「A106」はA10シリーズの6号機にあたる。アトムの10万馬力をはじめとする「7つの力」にはおよばないものの、天馬の個人的な趣味で、1千馬力のパワーや驚異的ジャンプ力を備えたハイスペックな仕様になっている。

A106イラスト

能力1- ベヴストザイン
ベヴストザインとは「自我」という意味。人から命令されなくても自分で優先順位を判断して行動できる次世代の自律型人工知能だ。

能力2- 1千馬力
小さなボディーに大型トラック2台分に相当する1千馬力を備えている。そのパワーは鉄の扉を粉砕し、暴走する車を受け止めるほど。

能力3- 高速ビートパンチ&インパクト・アタック
アームに高圧ピストン機構が組み込まれ、マシンガンのようにパンチを繰り出し、さらには敵をはじき飛ばす強力な必殺技を放つ。

能力4- 視覚センサー
機械の内部や車の中といった見えない部分も正確に把握できる。いわば透視能力にも近いセンサーだ。

能力5- 聴覚センサー
人間の数万倍もの聴力を持ち、高性能の解析能力で大観衆の中でも人の声を聞き分けることができる。

能力6- ブーストジャンプ
脚のシリンダーの超高圧ガスにより爆発的な反発力を生み、数メートルの高さまで軽々とジャンプ!

能力7- 短距離無線通信
ロボット同士は信号を送受信することで意思疎通が可能。まるでテレパシーのようだが、受信する側にも高度なAIが求められる。

 

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