誉田哲也氏最新作は、「ジウ」×「姫川玲子」の衝撃のコラボ作品!動機も真実も闇に堕ちる戦慄のノワールサイドとは

文芸・カルチャー

2016/6/6

誰だって、闇の世界に溺れたくなる時がある。それは、理不尽な事態に直面した時。全うな道を進んで何も解決しないとわかったならば、日の当たらない道を通りたくもなる。犯罪や殺人がなくならないのは、理不尽な事態への解決方法が見つからなかった結果だろう。不条理な世の中とはいえ、現実世界では、違法な手段に手を染めることなど許されることではないが、小説の世界くらいは、闇の世界に心躍らせてはいけないだろうか。

硝子の太陽N ノワール』は、誉田哲也氏の2大ヒットシリーズの衝撃的なコラボ作品。竹内結子主演「ストロベリーナイト」としてドラマ化された「姫川玲子」シリーズと、黒木メイサと多部未華子のダブル主演でドラマ化された「ジウ」シリーズのコラボと聞けば、小説ファンのみならず、映像ファンも胸が高鳴ることだろう。おまけにこの本は、姉妹本『硝子の太陽R ルージュ』との同時刊行作品。2作は同時期に起きた2つの殺人事件を、同時並行的に描いているが、『ルージュ』が「姫川玲子」の世界を中心として描くのに対し、『ノワール』では、「ジウ」を中心に描く。特に、『硝子の太陽N ノワール』は、フランス語で「暗黒」の意味を持つ『ノワール』をタイトルとしている通り、読み進めれば読み進めるほど、読者たちは圧倒的なリアリティのなかで繰り広げられるダークな世界に次第に飲み込まれていく。

主人公は、新宿署の東弘樹警部補。沖縄での活動家死亡事故を機に「反米軍基地」デモが全国で激化するなか、彼は警備課が勇み足で逮捕してしまった「左翼の親玉」矢吹近江の取調べを担当することになる。その頃、代々木では異様な覆面集団による滅多刺し事件が発生。防犯カメラ等の証拠から、沖縄の米軍基地撤廃運動の中心的人物が重要人物として浮かびあがり、矢吹がこの黒幕ではないかと目され始める。この事件の背景には何があるのか。代々木の事件の被害者と面識があった東は事件を追ううちに、殺人のプロ集団「歌舞伎町セブン」の一人・バー経営者の陣内陽一に近づいていく。社会に蔓延る悪意の連鎖を断ち切るべく、東と「歌舞伎町セブン」の共闘が、いま始まる。

歌舞伎町のバランスを保つため、警察や法律では解決できない問題を根本的に処理してしまう殺人チーム「歌舞伎町セブン」。「ジウ・サーガ」シリーズに触れたことがあるものならば、「歌舞伎町セブン」のメンバーはお馴染みだろうが、本作品の代々木の事件では、セブンにとってかけがえのない男が犠牲となる。私利私欲では決して動かない彼らもこの事態には困惑。被害者が殺されたのは、「歌舞伎町セブン」絡みなのか。陣内を始めとする面々も独自にこの調査に乗り出す。

沖縄の米軍基地移設問題や米兵による犯罪、日米安保や地位協定など、タイムリーなテーマを扱いながら、着実に物語は進んでいく。そんな背景のなかで、この物語の登場人物たちはそれぞれの正義を追い求める。何が正しいのか、何が間違っているのか。この国に仕掛けられた黒い罠とは。衝撃の展開から一瞬たりとも目が離せない。動機も真実も闇に堕ちるノワールサイドに溺れていくこの快感をぜひとも味わってほしい。

文=アサトーミナミ

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