歌っている間は常に飴を舐めている! デーモン閣下インタビュー【前編】

音楽

2016/12/25

 魔暦17(2015)年に地球デビュー30周年を迎え、魔暦18(’16)年2月まで期間限定で再集結して「大黒ミサツアー」を行ったロックバンド(に身をやつした悪魔の集団)「聖飢魔II」。その歌唱・説法方であるデーモン閣下が、自身の半生と歌について大いに語る『デーモン閣下 悪魔的歌唱論』が発売された。その出版の経緯や内容について、閣下に謁見し、お話を伺った。

【プロフィール】
でーもんかっか 悪魔。「表現者」「音楽・娯楽の創作と演出」等アーティスト活動のみならず遍く媒体で「ご意見番」として蔓延る。魔暦前17(1982)年、ロックバンドの姿を借りた悪魔集団「聖飢魔Ⅱ」の歌唱・説法方として現世に侵寇。魔暦前10(’89)年、大教典「WORST」はオリコンALチャート第1位を記録、「NHK紅白歌合戦」に出場(共にHM/HRでは史上初)。魔暦前5(’94)年、CNNラリーキングLive(全世界・英語生放送)に日本で活動する音楽家では初の出演。富士写真フイルム「写ルンです」CMでは大賞等を受賞。魔暦9(’07)年、女性Vo.のカヴァー「GIRLS’ ROCK」がi-tunesロック部門年間ALチャート第1位。和の伝統芸能との共作活動は約30年間展開中。純邦楽器と朗読劇の新機軸追求シリーズ「邦楽維新Collaboration」は17年間で公演数71回、上海万博では「文化交流大使」も執務。広島県がん検診啓発特使、早大相撲部特別参与(共に5期目)。公式サイト

時間がかかった労力であることは、表紙の写真が物語る?

「昨年、聖飢魔IIが地球デビュー30周年で再集結した際に、全構成員がムック本を出すという企画があってな、それでギター(『Guitar Magazine Special Edition 聖飢魔II 30th Anniversary ルーク篁参謀/ジェイル大橋代官』)と、ベースとドラム(『Bass Magazine/Rhythm & Drums Magazine Special Edition 聖飢魔II 30th Anniversary ゼノン石川和尚/ライデン湯澤殿下』)でムック本を出したのだ。もちろん吾輩もヴォーカリストとして出す予定だったんだが、再集結の期間はやることが多くてな、当初は2月に出そうということだったんだが、時間もなかなか取れず延び延びになってしまった。それで、じゃあ慌ててもしょうがないからじっくり作ろうや、みたいな感じになったのだ。もともとはムック本だったはずなんだが……いつの間にか単行本になっていたな(笑)」

『デーモン閣下 悪魔的歌唱論』(デーモン閣下:監修/リットーミュージック)

 本書の帯には「デーモン閣下の証言とヴォイス・トレーナーによる分析によって悪魔的な歌唱力の秘密が明らかになる!」とあるが、実は冒頭から46ページまでは閣下の「発生」から音楽活動を始めるまでが語られており、閣下自ら本書に「ああ、やっと今、本題に入る感じなのだね、読者諸君としては。ハハハハ、そうだな。だって今までの部分は、全部編集者が質問するから答えていたわけで、長い序章は吾輩のせいではないぞ~!」と盛大にネタばらしをしているのだ。

「この本は取材形式でやったんだが、いつまでたっても歌の話にならなくてな! これってヴォーカル本の話だよね、と思ったんだがな、聞かれるんだからしょうがない!(笑) しかも最初の取材では歌の話をひとつもしないで終わったね」

 しかしそこからが大変だった、と閣下は言う。まとめられた原稿をもとに、閣下自ら隅々まで徹底的にチェックをして、大々的に朱入れを行ったという。

「インタヴューされたものが活字になってみると印象が違うし、読んでいると『だったらこういうエピソードも追加できるな』と思い出した話を書き足したり、訂正したりしてな。例えば喉のケアではどんなことに気を使っていますかみたいな話があって、インタヴュー中にもいろいろ話していたんだが、この本にある『歌っている間、ずっと口の中に飴を入れている』というエピソードは朱入れをしている最中に思い出したのだ! それで当初は原稿に一文字もなかったのを、全部吾輩が書き足した(笑)。まあそんなこんなで相当時間かかった。例えば今日のこのインタヴューの原稿チェックなら、言っちゃなんだが空き時間で“ついで”でできるんだが(実は“ついで”ではできず、取材日からチェック終了まで結局2か月半を要しました)、当該書籍に関してはついでだとまったく進まなかったので、チェックのためだけの日を丸何日か作ってもらったのだ。ちなみにチェックには全部で10日以上費やしていて、ものすごい労力がかかっているんだが、たぶんギャラは安い。ハハハハ!」

 その時間のかかり方は、実は表紙に出ている。閣下は現在の普段の活動では目の上の色が赤だが、聖飢魔IIの活動の際は色が青くなるのだ。つまり目の上の色が青い閣下の写真が表紙であることが、本書を生み出すまでに長い時間がかかっていることを雄弁に物語っているのだ。

「聖飢魔IIの活動をしてる最中にやり始めた仕事で、でも出た時には終わってる、というね。だから青であるのには深い意味はなくて、時間がかかったという単純な理由なのだ。ただ世の中の人って意外と吾輩のここが赤なのか青なのか、まったく気付いてない人もたくさんいるようだがな(笑)」

 ちなみに「赤」で撮影した今回の写真は「若者よ、本を読むのだ!」がテーマだ。ということで若者はもちろん、聖飢魔IIの信者も閣下のファンも好角家もご贔屓筋もそうでない方も、心して読むべき労作なのである!

読者とは違う、閣下だけの『悪魔的歌唱論』の楽しみ方

 本書は閣下によって語られる「音楽への目覚め」「プロ・ヴォーカリストの仕事論」「悪魔のヴォーカル・テクニック」「世のヴォーカリストたちへ」という4章と、ヴォイス・トレーナー岩谷翔氏による、実際に閣下が歌う楽曲を取り上げて解説する「デーモン閣下のヴォーカル・スタイル分析」という構成となっている。閣下はこの「分析」を興味深く読んだそうだ。

「自分の分析をされてるわけだから、普通の読者とは全然違う読み方をしたね。しかも自分の歌で解説されているから、『この曲はどんな曲だ?』というのが一切ないからすごいわかりやすい!(笑) へー、なるほどね、吾輩の歌はそういうふうに聞こえてるんだ、と読んだな。」

 巻末には初期の名曲『FIRE AFTER FIRE』の歌詞が掲載され、歌唱法が具体的に解説されているのだが、ここにも閣下による細かな修正が入り、実際のスタイルに則した解説となった。

「(本の解説を見ながら、小さな声で『FIRE AFTER FIRE』を歌う閣下)……『少し力んだ感じの声で』というのがあって、『そんなに力んでるかな、“そ”に比べれば“れ”の方が力入ってるかな、だとしたら矢印の指してるところが違うぞ』とか、実際に歌いながら朱入れした。あとはベンドの説明なんかだと、『蠟人形の館』のオリジナル・ヴァージョンではこういう歌い方をしているけど、魔暦元(1999)年に録り直したヴァージョンではベンドの仕方が変わってる、というところなんかは『へー、そうなんだ!』と思ったりしたな。吾輩としては“変えた”という意識は特になくてな。ひょっとしたら部分的にはあるかもしれないが、ほとんどの部分は徐々に歌い込むうちに変わって、クセがついていくものであるからな」

 本書ではヴィブラートのかけ方や地声と裏声の間の「喚声点」をどう使うか、レコーディングの現場での歌唱で大事にしていること、さらには曲作りやバンド運営といったプロ向けの具体的なアドバイスから、「ウマぶって歌わないほうがいいぞ」とプロアマを問わない指摘まで様々な歌唱に関するテクニックを開陳、さらには閣下のエンターテインメント観までも書かれており、多くの人のためになる「生き方」についての考察もぎっちり詰まっている。

「タイトルがタイトルだから、歌のことばかり書いているのかなと思うと、意外とそうではないのだ。読んだ人からは『生き方本みたいですね』という感想をたくさんもらったぞ。だから、出版社はそういうところも宣伝に打ち出せばいいのにな!(笑)」

 では【後編】で、その部分についてじっくりと伺うことにいたします!

取材・構成・文=成田全(ナリタタモツ)