「第二の患者」という言葉を知ってますか? 入籍前日に判明した大腸がん。患者家族目線で綴られた、闘病エッセイ

暮らし

2017/6/22

『今日から第二の患者さん がん患者家族のお役立ちマニュアル』(青鹿ユウ/小学館)

 テレビのワイドショーは政治絡みのニュースが目立つが、他で意外に多いのが「芸能人の『がん』判明」である。考えてみれば日本人の死因第1位であり、今やふたりにひとりは罹るなどといわれるのだから当然なのかもしれない。そして芸能人の件に関していえば、患者の家族からの発信も話題になっているが、読者諸氏はご存じだろうか。がん患者を支える家族が「第二の患者」と呼ばれるということを──。

『今日から第二の患者さん がん患者家族のお役立ちマニュアル』(青鹿ユウ/小学館)は、大腸がんになった「オット君(仮)」を懸命に看護する作者・ユウの姿を描いたエッセイコミック。お互い漫画家として活動する「オット君(仮)」とユウは入籍を控えていたが、その前日に「オット君(仮)」の大腸がんが判明する。共に漫画家であるがゆえ、描きたいという「オット君(仮)」の気持ちが理解できるユウは、入院した彼の病室まで原稿を持っていく。しかし周囲からは「ちゃんと休ませてあげないと」という厳しい反応が返ってくることに。「自分が悪いのかも」と煩悶するユウは、ある日「第二の患者」という言葉に行き当たる。がん患者本人と同様の感情や苦しみを抱く家族はそう呼ばれるのだという。自分も「患者」であることを知ったユウは、悩んだり迷ったりしても許されると感じて、少しだけ気が楽になるのであった。

 この後は入院時の対応や保険の申請などでの奮闘が描かれるが、やることや考えることが多すぎて、日に日に疲弊していくユウ。ここから体調を崩す患者家族も多く、まさに「第二の患者」といわれるゆえんだが、実はこの件は私にとって他人事ではない。数年前に私の父親にがんが判明したのだが、遠隔地にいる私はほとんど何もできなかった。幸い地元には兄がいたので、任せっぱなしにしていたのだ。そしてある日、兄は車で事故を起こす。深夜、父の着替えを病院に運んだ帰り、疲労も溜まっていたであろう状況でのことだった。兄は大事に至らなかったが、それはあくまで「運がよかった」からに他ならない。危うく兄を、本当の「患者」にしてしまうところだったのだ。

 本書でユウはさまざまな困難にぶつかるのだが、その際に救いとなるのが彼女の家族や友人の存在。いきなり「看護生活」という非日常に生きることとなった彼女にとって、平穏な日常ともいえる家族や友人たちとのやりとりは、重くなりがちな心を軽くしてくれるものだったのである。このくだりを読んで私は、遠くにあっても看護中の兄に対してできることはあったのでは、と思った。兄はよく電話で愚痴をこぼすので「ウザい」と感じていたが、ただ話を聞くだけでも彼にとっては救いになっていたのかもしれない。

 結局のところ「第二の患者」にとって一番ツラいのは、周囲の「無理解」なのではないかと思う。看護することが「あたりまえ」とされ、その苦しさや悩みも受け止めることが「当然」であると思われることが、どれだけ彼らの心を苛むか。ただ話を聞くだけでもいいのだ。本書の「ありがとうエピソード」でも「思いやりや気遣いは、とても元気の出る『支援』でした」と結んでいる。もしも読者諸氏の中で、近くに闘病中の患者を抱えた「第二の患者」がいたならば、彼らの気持ちを理解してあげてほしい。そしてこれは、決して他人事ではないということも、覚えておくべきであろう。

文=木谷誠