泣きそうになったら唱えるジェーン・スーの魔法の言葉とは!? 「相談は踊る」珠玉の33本を収録!

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/11

ジェーン・スー 相談は踊る(ポプラ文庫)』(TBSラジオ「相談は踊る」編/ポプラ社)

 「他人の不幸は蜜の味」というけれど、実はぜんぜんそんなことないのかもしれない。以前TBSラジオで放送されていた同名の人気番組を書籍化した『ジェーン・スー 相談は踊る(ポプラ文庫)』(TBSラジオ「相談は踊る」編/ポプラ社)を読みながらそんなことを感じた。

 同番組は、リスナーからの相談にジェーン・スーさんと週替わりの代行MCが答えていく「相談エンタテインメント」。寄せられる相談は「アイスクリームの木の棒の味が嫌いです」という他愛のないものから「不倫をしています。どうしようもないくらい彼のことで頭がいっぱいです」というドロっとしたものまで大小さまざま。

 そして番組に寄せられた多くの相談のなかから厳選された珠玉の33本がおさめられているのが、この書籍版『ジェーン・スー 相談は踊る』なのだ。

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 同書を読むと、この番組が単なる相談番組ではなく、なぜ「エンタテインメント」として成立していたかがよくわかる。それはひとえに、ジェーン・スーさんがどんな相談にも真摯に向き合い、キレイごとではない、キレッキレの回答を繰り出しているからだろう。

 たとえば、前出の「アイスクリームの木の棒の味が嫌いです」という相談に対して。普通なら「なんだその悩みは」と笑ってしまうか「無理せずカップアイスを食べましょう」という無難な答えしか出てこなそうだが、ジェーン・スーさんの場合はこうだ。

「木の棒が見えてきたら、全体を口に含みます。そして、口をすぼめて棒だけすばやく引っ張ってください。これで木の棒を舌に触れることなく抜くことができます」

 なんて論理的で的確な答えだろう! そして、狙ったわけではないにせよ、この相談に真正面から向き合う姿勢が、回答になんとも言えないユーモアを与えている。

 はたまた、不倫に悩む20代女子に向けては「男の都合で、若い20代の女の子の大事な時間を奪っていく」「あと2、3年これをやって、いい時代をムダなものに使っちゃったなということを笑いながら言えるならいい」「純粋に好きって気持ちは法律の前では無力」「ただ、今好きならしょうがないよ」と、無責任に甘い言葉をかけることも、頭ごなしに否定することもなく、真に寄り添った言葉を投げかけている。

 まさに笑いあり、涙あり。思わずクスリとしてしまうユーモラスな面と、心の奥底にじんとくる人情味あふれる面と。エンタテインメントの枠を越え、ひとつの人間ドラマを見ているかのようだ。

 そしてここで、冒頭の話に戻ろう。同書を読みながらこの「相談エンタテインメント」の世界に触れていると、いろいろな人々のさまざまな相談のなかに、自分と同じ「悩みのエッセンス」のようなものを感じてくる。すると、すべての相談がまるで他人事とは思えなくなるのだ。

「他人の不幸は蜜の味」。それは、自分が相手とまったく違う立場にいると思えるときだけ。どんな相談にも真摯に向き合うジェーン・スーさんを通して見る他人の人生は、まるで自分のことのように心に迫ってくるのだ。

 ちなみに、筆者が個人的に好きなのは「涙腺が弱く、涙をおさえなければならない場面で我慢することができません」という質問に対する「おちんぽまんじゅうととなえてください」という答え。これ以上ない素晴らしい解決策ではないだろうか。

文=近藤世菜