西加奈子『i(アイ)』に、南キャン山里の嫉妬が炸裂!? マッスル坂井、男色ディーノは何を語ったのか

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更新日:2017/10/5

『i(アイ)』(ポプラ社)

 8月13日、東京・赤坂RED/THEATERで、南海キャンディーズ山里亮太、DDTプロレスリング・男色ディーノ、マッスル坂井によるイベント「ボクたちの夏休み~読書感想文~」が開催された。同い年の3人が同じ本を読み、何を感じたかを話し合うこのイベント。お笑いファン、プロレスファンだけでなく、読書好きも数多く集まり、会場は独特の緊張感に包まれた。

 課題図書は、西加奈子著『i(アイ)』(ポプラ社)。シリアで生まれた少女・アイは、自らの恵まれた環境を受け入れることが出来ず、孤立感を深めていく。日本へ移住したアイは、高校の数学教師が言った「この世界にアイは存在しません。」という言葉に衝撃を受ける――。

この作品について、登壇者の3人は一体どんな読書感想文を書いたのか? まずは山里が感想文を朗読した。

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「僕は嫉妬の化け物です。僕の中にスイッチがあって、それが押されると嫉妬の化け物になります。それが押されるのは、圧倒的な才能を見せつけられたとき。その化け物になると、とにかく相手の失敗を願うようになります。」

「以下、嫉妬のスイッチ」と読み上げられた内容は、帯の又吉(直樹)のコメント、装丁の絵を作者が描く感じ、登場人物の紹介に知らない外国人の名前をぶち込む感じ、など、原稿用紙1枚半にも及んだ。山里曰く、「すごく面白い本。けど、その分、あちこちに嫉妬がすごい」とのこと。

 続いて、マッスル坂井。「西加奈子さんの『i(アイ)』につけた5箇所のドッグイヤーについての考察」と題し、得意のパワポ風にプレゼンする。

「SNSが発達しすぎて、同じ考えを持った人たちが固まりやすく、その発言や行動も、どんどん先鋭化しやすくなってきているけど、この作品に出てくる登場人物たちのように、近くで硬度のある者同士がぶつかり続ければ、角が取れて丸くなるより、折れたり割れたりを繰り返してさらに角度がついてしまう。僕は強くなっていったアイも、それはそれで怖いなと思った。」

 最後に、男色ディーノの感想文は、「世界の主人公は選ばれし勇者だ。」という書き出しから始まる。ゲームの中の世界では、「勇者=自分を中心」に世界が回っている。

「しかし、この世ではそうもいかない。自分がいてもいなくても、世の中は回っている。(中略)だから、である。だから一生懸命生きるのだ。この世に自分が存在する意味があるのか。みんな悩む。でも、突き詰めればそんな事はどうでもいい。どうせ生きているんだったら、楽しい方がいい。笑いをもらえればいいし、笑いを与えればいい。それが世の中と自分との関わり方だ。いのちだいじに、それでいて、ガンガンいこうぜ。

 この世にザオリクは存在しません。あと、今回のドラクエは大変面白いです。」

 ザオリクとは、戦闘不能状態から復活させるドラクエの呪文のこと。この世ではゲームのように、呪文で簡単に蘇ることなど出来ない。であるならば、一生懸命、生きる。楽しく、生きる。ディーノの感想文を、『i(アイ)』の主人公・アイが読んだとしたら、どんな感想文を書くだろうかと思った。

 アイに必要なものは、難解な数学でも、お洒落な名前のワインでも、イケてる仲間たちでもなく、ただただ、男色ディーノの感想文なのではないかと思わされた。そんなイベントだった。

文=尾崎ムギ子