広告会社の男子寮で行なわれる魅惑の「男子会」…料理は気の合った仲間と食べると何倍も美味しい!【「男飯」漫画特集(5)】

食・料理

公開日:2017/10/14

『広告会社、男子寮のおかずくん』(オトクニ/リブレ)

 男が家庭で料理を作るのが普通の昨今であるが、かつてはそうではなかった。ではその「かつて」で、男が料理をするのはどのような場合だったか。それは大人数の関係者が集まる場面が多かった。単純に「いいところを見せたい」という心境からだと思われる。最近でもこのような気持ちがなくはないだろうが、大抵は仲間内でワイワイやるのが楽しいという気分のほうが強いだろう。『広告会社、男子寮のおかずくん』(オトクニ/リブレ)は、同じ広告会社の寮に住む4人の男子が金曜日の仕事終わりに、それぞれ得意分野の料理を持ち寄って食事会をするという物語である。

 主人公の西尾和はいつでも一所懸命の営業担当。ある日、必死に仕事をこなし過ぎた彼は現場で倒れてしまう。会社の先輩や同期に介抱されたとき、たまたま各自が食事を持ち寄ったことがきっかけで食事会は始まった。食事会での西尾はおかず担当なので「おかずくん」とか「おかずちゃん」とも呼ばれる。汁物担当でマーケティングチームの東良啓介は西尾の同期。ご飯担当でクリエイティブチームの北一平は頼れる年長者。そしてはし休め(漬物など)担当で経理の南郷正を加えた4名がメンバーである。

 基本的な筋立ては、西尾が食事会のメンバーたちとさまざまな案件で共同作業をしながら、交流を深めていくというもの。一所懸命さが空回りしがちな西尾を同期の東良がさりげなくサポートしたり、新人の後始末で残業となり花見に行けなかった東良のため、食事会のメンバーたちが会社まで料理を持ち込んだりするなどハートフルな展開が心地よい。料理としては基本的に「おかずくん」の作る品が中心に描かれる。フライパンで作る「肉じゃが」やニンニクたっぷりの「トンテキ」など、いずれもメインにふさわしい一皿だ。

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 本書の特徴は、南郷たちの持ってくるサイドメニューのレシピは載っているが、なぜかメインで描かれる料理にはレシピがないこと。漫画の中で手順は描かれているが、分量などの細かい部分は触れられていないのだ。こうなるとサイドメニューを再現するほうがやりやすいのだが、やはりエピソードのメインで登場する料理を取り上げるのが本道ではあろう。そんなワケで、目分量でもなんとかなりそうなものをチョイスして試してみることに。

【五味がけ豚のから揚げ】

 この料理は「五月病」で皆の気分が沈んでいるとき、南郷が「元気がない時は『豚を食え!』」と祖母にいわれた記憶から提案したもの。「五味」とは「しょうが」「みょうが」「ねぎ」「しそ」「かいわれ」のことで、それらを細かく刻んで薬味にするのだ。薬味なのでおよそ目分量でかまわない。材料は五味が多めになること前提で「しょうが1パック(100g程度)」「みょうが1パック(2~3個)」「小口ねぎ1束」「大葉1袋(15枚程度)」「かいわれ1パック」「豚バラ肉200g」以上である。なお写真では、五味は大きめのボウルから別皿に盛り付けている。作りかたは以下。

1.五味をそれぞれ細かく刻んでよく混ぜる。
2.豚バラ肉に塩と黒コショウをして、醤油と酒でもみ込んで下味をつける。
3.フライパンに1~2cm程度の油を入れる。
4.豚バラ肉に片栗粉をまぶして170度でカリッとするまで揚げる。
5.豚バラ肉に五味をドバッとかけて完成。

 豚のから揚げは初めて作ったが、外はカリッと揚がっているのに中は脂がトロッと甘くて美味。そこへ五味をのせてポン酢や麺つゆをかけると、サッパリとした味わいとなり疲れも吹き飛ぶ感じだ。から揚げだけでは五味を使いきれないが、ご飯にかけても豆腐にのせても相性バツグンの万能薬味なので問題ない。

 学生時代は大人数で集まって本作のような食事会を開催していたものであるが、現在ではひとりで再現料理を作っているわけで、軽く寂しさも感じる。やはり料理というものは気の合った人たちと楽しく語らいながら食べることで、美味しさは何倍にもなるのだということを「おかずくん」たちは教えてくれるのである。

調理・文=木谷誠