17匹の最期を看取った「猫のプロ」が語る「お祝いできる死」の迎え方とは?

暮らし

更新日:2020/5/11

■猫が望むものを感じとる

 病気よりも辛い治療なら「そっとしておいてほしい」。
 安心して甘えられる人に「そばにいてほしい」。
 注射や点滴よりも「なでてほしい」。
 「悲しまないでほしい」……老猫の自分は価値がないの?

 12歳以上の「老猫」においては――延命を絶対とするのではなく、その命の自然なあり方に寄り添うことで、「猫が望むもの」を感じとることが大切だと南里さんは言う。

 猫は病気やケガをすれば自分なりに適応し、暮らし方を調整できるし、逝くときも自分で決める。その意思のあり方は、猫に限ったことではなく、人間もまた同じだ。

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「どう死を迎えたいか」は、すなわち「どう今を生きるか」である。だからこそ、「猫の生きる力を信じる」こと、「猫を信頼すること」が、飼い主であり家族であるあなたに求められることなのだと。

 本書を読んで、南里さんが闇雲に医療を否定しているのではなく、その猫の生き方と向き合い、最適な方法を感じとってやることが、一番の幸せを見つける道なのだと、私は受け取った。

■血液検査で自分の猫の老いを知る

 今、猫と暮らしている人、老猫の治療や介護に迷いや悩みを抱えている人は、本書をぜひ読んでみてほしい。本書には「老いを知る」「キュア(治療)からケア(看護)へ」といった実践的なノウハウも記されているし、猫を看取った後にあなたがすべきこともわかりやすくまとまっている(特に、動物の火葬場や業者などは、哀しみの中で探したり選んだりするのは難しいので、元気なうちにある程度準備しておきたい)。

 これは私の経験の話で恐縮だが、まずは「自分の猫の老い」を知るために、一度、病院で血液検査などを行うことを勧めたい。健康状態を飼い主の直感で推し量るのではなく、一度はきちんと把握した上で、あなたの家族である猫が「どうしたいのか」を、ゆっくり猫と話し合ってほしい。その時、「老猫」は「朗猫」に変わる。

 そして、「お祝いできる死」を迎えられるよう、ともに今を生きてほしいと願って止まない。

文=水陶マコト