お金のない未来がやってくる? 21世紀のお金の考え方を先取りしよう

ビジネス

2018/4/20

『新しい時代のお金の教科書』(山口揚平/筑摩書房)

 みなさんは、「お金がなくなる日」を想像できるだろうか?

 私たちはお金のために働いていると言っても過言ではない。持っているお金の「量」は成功者の基準でもあり、「結婚相手」という生涯のパートナーを求める際にさえ、お金を軸に選んだりもする。

 その、お金がなくなる。あり得るだろうか?

『新しい時代のお金の教科書』(山口揚平/筑摩書房)には、「お金がなくなるプロセス」と「新しい時代のお金との付き合い方」が、「お金のプロ」である著者によって書かれている。

■近い将来お金がなくなる。では今の生活はどう変わる?

「お金のなくなる日」とは、「お金を一切使わない、信用を持って信用(価値)を作るという新しい経済システム」が確立した未来のこと。
 これだけ聞いても「?」となる人がほとんどだろう。正直私も、最初は意味が分からなかった。だが多くの読者は本書を読み終わる時、妙にリアリティをもって「お金がなくなる日」を感じることができるのではないだろうか。

 本書の大きなテーマは「お金はこれからどうなるのか?」である。
 以前は「お金さえあれば人生は安泰」という考えが根強く、消費者が欲しいのは、もっぱら「モノ」だった。衣食住の充実。最新の家電。生存欲求を満たし、生活を便利にする「モノ」が商品となっていたのだが、21世紀に入り、その様子は変化し始めているという。

 

 今や世界には「モノ」が溢れており、人間はただの「モノ」ではなく、お金では買えないもの――例えば、人からの「承認」や「時間」「経験」など――を求めるようになっている。そういった「お金を取り巻く環境の変化を大局的に見て、これからの生き方を考える」というのが本書の趣旨だ。

 そのため本書は、お金の起源からひもとき、お金とは何なのか。もっと言えば、それに価値を見出した「人間」とはどういう存在なのかといった話題にまで及ぶ。本書を読む前は「経済論」や「数字の話」を想像していたのだが、それよりもずっと平易で分かりやすく、一方で哲学的、観念的な話題に近い内容も含まれている。

「お金を一切使わない、信用を持って信用(価値)を作るという新しい経済システム」というのは理解が難しくても、「欲しい物」の変化については、「確かに」と思う読者も多いのではないだろうか。
「クックパッド」や「pixiv」「インスタ(インスタグラム)」が流行しているのも、消費者が「モノ」ではなく「承認欲求」を欲しているから。そしてそれを満たすための「仕組み」を提供してくれているからだ。

■お金がなくなる世界に向けて、お金はどのように進化していくのか

 そういった社会の変化から考えられる「お金の進化の方向」は、3つあるという。ここからは本記事ですべてを説明することはできないので、詳細は本書を読んで頂くとして、概要をご紹介したい。

 21世紀の半ばから後半にかけて、「時間主義経済」「記帳主義経済」が中心となり、最終的に「お金を一切使わない」という「信用主義経済」に移行していくという。

「時間主義経済」とは「人々の欲求がモノではなく社会的欲求(コト)にシフトしたときに、人々がお金ではなく時間を中心にして経済活動を行うこと」。人間の「時間」を主要な資源とする産業が興り、時間が通貨(価値)そのものとなって流通するという。

「記帳主義経済」は「モノを対象としながらも、それをお金を使わないで流通させる試み」だ。モノを互いにシェアする中で「もらったもの」と「あげたもの」をすべて記帳し、その取り引きを記録した台帳を参加者全員が共有する、お金のやり取りを挟まない方法。つまり、モノを信用でやり取りするシステムだ。

「信用主義経済」は「人々が求めるものが『信用』(承認)であり、それをやり取りするツールも『信用』となる『不思議な世界』」のこと。現段階では想像しにくいかもしれないが、2100年までには現実化していくという。

 

「お金がなくなる」。そんな日は本当に来るのだろうか?

 本書はその「未来」に現実感を与え、だからこそ、「今」の私たちが、お金とどう付き合っていくべきなのかを教えてくれている。大切なのは「信用」だ。「お金を稼ぐ」のではなく、「信用をつくる」ことが重要になってくる。気づいた人から、本当の豊かさを手に入れられるのかもしれない。

文=雨野裾