健康寿命を伸ばす鍵は下半身と体幹の筋力アップ! すぐできる最強トレーニングとは?

健康・美容

公開日:2018/5/28

『体力の正体は筋肉』(樋口満/集英社新書)

「最近、疲れやすくなってきた」「持久力がなくなった」「なにかしようという意欲がわかない」。そんな体力低下を感じ始めている方にお薦めしたいのが『体力の正体は筋肉』(樋口満/集英社新書)だ。

 著者は早稲田大学スポーツ科学学術院教授で、早稲田大学アクティブ・エイジング研究所所長を務める樋口満氏。加齢にともなう体力低下の原因を、健康の保持促進、さまざまな生活習慣病の予防との関連で科学的に解明しようとしてきた人物だ。その研究の主眼は、日常の身体活動、運動、スポーツにおいて主として使われる筋肉(骨格筋)に着目、体力とはなにかを見つめ、体力低下の予防、体力向上の意義を明らかにすること。本書でも「筋肉が健康を守る」とし、下半身と体幹を鍛えることの重要性と、そのトレーニング法を紹介している。一度しかない人生をいきいきと送るために、体のどこの筋肉を鍛えればいいのか? その一端を紹介していこう。

■筋力と全身持久力——このふたつがキーワード

 厚生労働省の「健康づくりのための運動基準2006〜身体活動・運動・体力〜報告書」では、体力を客観的・定量的に把握できる狭義の要素として「①全身持久力(全身持久性体力)、②筋力、③バランス能力(平衡性体力)、④柔軟性(柔軟性体力)、⑤その他(敏しょう性体力など)」で構成されるとしている。これらのなかでも本書が重視するのは、「筋力」と「全身持久力」のふたつだ。そして、その理由として、次の3点を挙げている。

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・筋力と全身持久力が高いと、生活習慣病を発症するリスクが低くなり、その予防にもなる
・体力テストを行えば、定量的に測定ができ、現在の自分の筋力や全身持久力がどの程度なのかを客観的に評価できる
・筋力や全身持久力を高めれば、柔軟性やスピード力など、体力の他の要素にもいい影響がもたらされる

 健康寿命やQOL(Quality of Life)という言葉が一般的になったように、現在は、健康な状態でいきいきと過ごせる時間を、いかに長くするかが注目されている時代。しかし、日本人は世界でもっとも座りがちの生活をしている人が多い国(!)で、食生活の欧米化などと合わせて、ついつい不健康な生活になりがちなもの。それを改めるには、適度な運動、つまりトレーニングをして、体幹と下半身の筋力を高めることが必要なのだ。

■最強トレーニングはローイング!!

 では実際に、どんなトレーニングをすれば体幹と下半身の筋力を効果的に高めることができるのだろうか? 全身持久力を高める有酸素運動と筋力を高めるレジスタンス運動の利点を併せ持つ最強のトレーニングとして本書がイチ押しするのは、ボートを漕ぐ動きを行う「ローイング」だ。

 このローイングというトレーニングは、脚を曲げて、手を前に伸ばしたリカバリーフェーズのときには、体幹屈曲筋(腹直筋、大腰筋)が多く動員され、脚を伸ばして、手を胸の前に引きつけたフィニッシュフェーズでは脊柱起立筋などの背筋群が多く動員されるもの。この種目を行うことで、全身の約70%の筋肉を動員することが可能という、高い効果が期待できるトレーニングだ。

 ローイングの動きを陸上で再現するために開発されたローイングエルゴメーターという器具を使って行うのがベストだが、日本ではスポーツジムなどでもまだあまり導入されていない。本書ではそんな現実を踏まえて、トレーニング用のチューブを使ったローイングの方法も解説されている。

 ローイングトレーニングの方法は簡単だ。

1.体育座りをして両脚をそろえる。チューブを足の甲から足の裏にかけて二重に巻くか、足の裏に引っかけ、肘を伸ばしてチューブの両端を手の平に巻きつけてしっかり握る
2.「いち」のかけ声で両脚を前に蹴り出し、両肘を後ろに引く
3.「に」のかけ声で力を抜き、両肘が伸びるまで両腕を前に戻す
4.「さん」のかけ声で両膝をお腹に引き寄せるように両脚を曲げる

 この動作を1分間に20回のペースで5分間続けるのが1セット。できるようになったら、休憩を挟んで毎日2セット行うのが理想だ。このトレーニングを行う実験でも、腹部の脂肪が減り、体幹部や大腿部の禁漁が増加し、歩くのに大切な筋肉も鍛えられたという結果が出ているという。

 ローイングのほかにも、タバタ式トレーニング、ウォーキング、スロージョギング、スイミング、水中ウォーキング、椅子を使った筋トレと、全身持久力と同時に体幹と下半身の筋肉を効率的に鍛えるトレーニングが紹介されているので、自分に合った種目でトレーニングしていくことができる。

 40歳以上の男女を対象に行われたある意識調査では、将来もっとも不安に感じることのトップは「健康上の問題」だったという(『平成28年度版厚生労働白書』)。運動する時間を作るのは難しいものだが、いきいきと健康に過ごせる時間を長くするためにトレーニングに取り組んでみてはいかがだろうか。

文=井上淳