事故物件芸人・松原タニシさんの実録。謎多き“いわく付き”物件の奇妙体験とは?

エンタメ

2018/7/15

『事故物件怪談 恐い間取り』(松原タニシ/二見書房)

 いわく付き物件の代名詞である「事故物件」。自殺や他殺、孤独死など何らかの理由で部屋の主がこの世と別れを告げた物件であり、巷では、未練を残した幽霊が彷徨っているとか、通常の部屋と比べて家賃が安いとか、さまざまな側面から話題にのぼることもある。

 言葉の響きだけでも不気味な印象をおぼえるが、そんな事故物件に住み続けるお笑い芸人・松原タニシさんが自身の体験談などを綴った書籍『事故物件怪談 恐い間取り』(二見書房)が出版された。本書には、生々しいエピソードや実際の現場写真、各部屋の気になる間取りなどが多数収録されている。

◎1軒目に住んだのはマンション全体が“いわく付き”の事故物件

 松原さんがそもそも、事故物件に住み始めたきっかけはテレビ番組の企画だったという。「事故物件で幽霊を撮影できたらギャラがもらえる」と称して、室内を定点カメラで毎日のように撮影。記念すべき…かどうかはさておき、1軒目は大阪の中心地・難波からほど近い10帖のワンルームで、家賃4万5000円の物件だった。

 その部屋の印象について「『きれい過ぎる』ことの違和感は否めなかった」と振り返る松原さん。事故物件には総じて「部屋の壁が不自然にきれい」とか、あえて特定の部屋を避けて通っているからなのか「住民とあまり会わない」という特徴もあるという。

 さまざまな事故物件があるが、松原さんが1軒目に住んだ場所は、実は、特定の部屋だけではなくマンション全体が“事故物件扱い”されているという稀なケースだった。

 その場所は、当時からさかのぼること十数年前に凶悪な殺人事件が起きた挙げ句、警察の捜査により違法建築であることも分かったといういわく付き物件の一つ。おまけに、事件があった頃から貼られていたと思われる見取り図には1階の号室が書かれているものの、松原さんが住んだときはすべてぶち抜かれて駐輪場になっていたという。

◎住民に証言を求めるも、いびつなマンションの構造には謎が残る…

 10階建ての“いわく付き”マンションの一室、松原さんが実際に住んだのは6階の端から2番目の部屋だった。殺人事件が起きたのはもちろん、違法建築が発覚したことにより8階から10階までが閉鎖されているといういびつな物件の背景を知るべく、松原さんは10年以上前から暮らし続ける住人Hさんに話を聞いた。

 Hさんは元々、このマンションの1階に住んでいた。しかし、4階で殺人と放火があって以降、理由を伝えられぬまま管理会社からの要望で無理矢理に3階へ移住することになった。

 その際は「家賃の値下げと引き替えに、半ば強制的に部屋を移動させられた」というのが証言で明らかとなっているが、いずれにせよ、事件の痕跡を消すために4階をなぜ改装しなかったのか。なぜ、住民を転居させてまで1階がすべて駐輪場になったのかは謎が残されたままだったという。

◎後輩のお笑い芸人の背後にいた謎の“ニット帽を被った男”

 ワンルームに住み始めてから数日、松原さんは奇妙な体験をすることになる。部屋の様子を見せようと、後輩のお笑い芸人・華井二等兵さんを呼んだある日、彼の後ろにピタッとくっついて歩く“ニット帽を被った男”を目撃した。

 深夜0時過ぎ。廊下を進み部屋の前にいた松原さんは、エレベーターの近くで「何か水の音がしますね」と聞き耳を立てていた華井さんを「もうええから早くこっち来い」とせかした。その声を受けて、松原さんのもとへ向かう華井さんの後ろには、同じフロアの住人と思われるニット帽を被った男性がいた。

 しかし、そのとき松原さんは「華井と男の距離が余りにも近過ぎる」ことへの違和感をおぼえた。その直後、「今、後ろに男の人が歩いてなかった?」と尋ねた松原さんであったが、華井さんは「え? 誰もいなかったですよ」と返答。いまだにその男が誰であったのかは明らかになっていないという…。

 結局、この1軒目から早くもさまざまな奇妙な体験をした松原さんは「一番はじめにとんでもない物件に住んでしまった」と振り返っている。他にも、色々な事故物件について取り上げた本書であるが、読み進めていくうちに、自分が今住んでいる部屋の見え方も何だか変わってくるような感覚に陥る。

文=カネコシュウヘイ