外野手に名監督は生まれにくい!?  ID野球の基礎『野村メモ』とは?

スポーツ・科学

2019/1/6

『野村メモ』(野村克也/日本実業出版社)

 本書『野村メモ』(日本実業出版社)の著者・野村克也氏といえば、通称「ノムさん」。データ重視の「ID野球」を掲げ、所属プロ野球チームを何度もリーグ優勝や日本一にみちびいた知将。ポジションはキャッチャー。独特の「ボヤキ」をささやき、バッターを翻弄してきたイメージである。

「ID野球」の「ID」とは「Important Data」の略で、「ID野球」とは、感覚に頼らず、徹底したデータを駆使した野球の戦法である。「メモを取ること」はその基礎になる。ノムさんは、半世紀ほど前のチームメイトの元メジャーリーガー、フレイザー選手の影響だという。

 本書は、“知将”ノムさんが普段から心に留めている野球理論はもちろん、「指揮官・リーダーの心構え」など、上司としての管理術についても意見を述べている。野球知識が多少あやふやな人でも十分響く内容である。

 いくつか興味深そうなところを紹介しよう。

●自分の恥ずかしいところをメモすれば成長できる

 ノムさんは、まず、「自分の『失点』としっかり向かい合うべき」と言い、打者・投手の二刀流で知られる大谷翔平選手にまつわるエピソードをあげる。大谷選手が日本でプレーしていたころ、(彼が投手で)抑えられた打者と、(彼が打者で)打たれた投手、それぞれに「恥ずかしくないのか?」と問うたそうである。そこで自分の敗因をしっかり把握し、次の対戦に活かせるかが肝要と、説いている。自分が「敗けた」マイナス体験にも向き合う勇気が必要なのだ。

●移動時間は「思考力」を磨くことに使え

 現在、日本のプロ野球は143試合中約半分が敵の本拠地で行われている。アメリカのメジャーリーグにくらべれば日本は国土が小さいのでまだましだが、移動に次ぐ移動は、選手の体力気力を消耗させる。トータルにすれば相当な時間だが、寝るだけではもったいない。ノムさんは、読書や気になった言葉のメモ、次の試合のデータの見直し作業をしていたそうである。意外に試合相手の攻略法がパッとひらめいたりしたことも。

・じっくり勉強ができる
・学んだことの整理ができる
・次に備える準備ができる
・考え事ができる
・ひらめきが生まれやすい

 長い移動時間には、以上のような利点もある。ぜひ効果的に使いたい。

●今の12球団には真のリーダーはいるのか

 ここで実名で期待の人物をあげている!のは必読。また、「私の持論」としながら、「外野手に名監督は生まれにくい」とも言う。

 ノムさんの妻・野村沙知代さんは2017年12月に急逝した。先日、死後約1年の彼女の死をいまだにひきずる彼の姿をテレビでみて、驚いた。どんなことがおきても冷静沈着のイメージだったからだ。「大丈夫! 何とかなるわよ」と亡き沙知代さんも言っているのではないだろうか。

 まずメモをとる大切さ、それに基づいたデータを収集すること――野村のID野球の原点が本書にはある。

文=久松有紗子