スマートニュースをヒットさせたマーケティング術は「たった一人の顧客起点」だった!?

ビジネス

2019/5/27

『たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング』(西口一希/翔泳社)

 あなたが誰かにクリスマスプレゼントを選ぶとき、以下の3つの選択肢でいちばん喜んでもらえる自信があるのはどれだろうか?

(1)あなたの子ども、妻、旦那、恋人のいずれか1人
(2)あなたの同僚・同級生20人
(3)4年生大学を卒業し、現在東京都在住の、世帯年収800万円以上で子どもがいる専業主婦1000人

 スマートニュース執行役員・マーケティング担当の西口一希氏によると、この中で成功確率が高いのは(1)だという。

「深く理解しているたった1人へのプレゼントであれば、趣味嗜好、生活態度、価値観、何を持っているか、普段何に興味があるかを考えることで、本人が想定する以上のプレゼントを選べる可能性が高くなります」

 これが特定の一人ではなく複数人になり、さらに自分が知らない複数人ということになれば、何をプレゼントすれば喜んでもらえるかが想像しにくくなる。

 西口氏は著書『たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング』(西口一希/翔泳社)で、「顧客起点マーケティング」を提唱している。「顧客起点マーケティング」とは、1人の顧客を理解することで導き出した「アイデア」を展開し、セグメントに沿った各顧客の動きを検証するというもの。

 大規模な人数の調査から得られる結果は平均値であり、最大公約数でしかない。それをもとに当たり障りのないよくある提案を繰り返してしまい、それを何とかしようとさらに平均的かつ最大公約数的なプランに投資を重ねてしまう。著者は「これでは、人の心を捉えるような商品開発もマーケティング活動も難しいと思います」と言う。

 成功するマーケティングは、全てを“個”客ベースで考え、その生活まで深く理解することから始まる。平均や最大公約数ではない、独自性のあるプランを突き詰めていくことが重要だ。そんな失敗しないマーケティングのために、本書では「顧客ピラミッド」「9セグマップ」「N1分析」というツールを公開している。これらを用いて顧客起点マーケティングの視点を身につけてほしい。

「キサ~マ?」という台詞が話題となったCMがある。人気お笑いコンビ「千鳥」がスマートニュースのクーポンチャンネルをアピールしたものだ。その前身である「貴様!」という台詞が使われたCMも、著者が顧客起点マーケティングを用いて導き出したアイデアに基づいてできたものだ。スマートニュースを毎日使っているユーザーや、他のアプリから移ってきたユーザー、認知はしているが使ったことがない人などに丁寧に話を聞き、セグメントに基づいて“個”の動きを分析した。得たアイデアから6種類のCMを実験的に流し、最も効果のあったのが「貴様!」のCMだった。詳しいいきさつは、ぜひ本書を手にとって確認してみてほしい。

 顧客全体を漠然と対象とした調査では、凡庸なアイデアに陥ってしまうことがある。それを挽回しようと同じようなことを繰り返しても、せっかくの投資が無駄になってしまうだろう。悩めるマーケターは一度、本書で著者の提唱する「顧客起点」のマーケティング術を学んでみてはいかがだろうか。

文=ジョセート