子や孫を守るのはあなたの“会計リテラシー”だ! 大物会計・税理士に学ぶお金の見方

ビジネス

2019/6/13

『会計リテラシーで見えないお金が見えてくる』(渡辺俊之/総合法令出版)

 遺産相続、持ち家購入から居酒屋での飲食、毎日乗るバス……人生の節目にも、何気ない日常にも、あらゆる場面で、誰にとっても切っても切れないのがお金という存在です。

 会計の知識は現代を生きる人に必要なリテラシーだと説くのは、70代になった今も上場企業に社外監査役として関与し、地方公共団体の包括外部監査人、政府系諮問委員会委員などを歴任してきた会計士・税理士の渡辺俊之氏。

 著書『会計リテラシーで見えないお金が見えてくる』(総合法令出版)は、渡辺氏が「複式簿記」の素晴らしさを伝えるため、職業会計人は、日頃どんなことを考えているのかをテーマに綴ったビジネスブログを再編集・加筆してまとめたもの。

 本書をめくれば、会計が身近なものに感じられるようになり、自分の財産管理が上手になるだけにとどまらず、ひいては政治や世の中の金の動きも見るのに役立ちますよ。

◆ツケを将来に残さない努力「減損会計」

 企業が地価の下落などで大幅な減損損失を計上しなければならなくなった場合に、将来に損失を繰り越さないため、帳簿価格を減額する処理を行います。この「減損会計」には、将来(子や孫)に借金を残さず生きるヒントが詰まっています。

 例えば、本書に掲載されている事例を見てみましょう。定年間近の夫のいる山田家の年収が470万円だったとします。しかし、毎年の支出は920万。老後はお先真っ暗なのに、夫は「借金して3人の子どもに面倒見てもらおう」と能天気。

 やがて夫がリストラにあい、継続的な収入が見込めなくなった危機を乗り越えるため、家を売却することに。5000万で買った家は今ではせいぜい3000万。自宅の評価減に真っ青になりますが、山田家はどうすればよかったかというと、ここで「減損会計」の出番です。

◆「減損会計」で素早く決断

「減損会計」とは、将来収益の見込みがなくなってしまった固定資産は、獲得できる収益見込みの合計額まで評価を落として、早めに損失に計上しようという会計処理です。

 山田家は収支計算だけをしているので、持ち家売却という事実に直面して初めて、持ち家の価格を再評価し、損失の大きさに愕然としますが、もしこれが飲食店の店舗についての企業会計なら、こうなります。

(1)将来収益のキャッシュフローを見積もる
店舗を使って将来得られる営業利益、減価償却費、引当金繰入純額、使用後の売却キャッシュフロー×割引率

(2)グルーピングされた簿価合計と比較する
店舗の簿価。土地、建物、機材等収益を生み出す最小単位=グルーピング

(3)投資期間全体を通じた回収可能性を評価する
(1)と(2)を比較して、(1)が(2)を下回る場合、差額を損益計算書に計上する

 これにより、将来収益見込みが投資を下回った時点で、早急に決断、対策を取ることができるのです。

 ちなみに、山田家のモデルは0をたくさん付け加えたらそのまま日本国の会計になります。

山田家の会計を2010年度の日本国の場合にたとえると、税収37兆円+税外収入10兆円で合計47兆円、支出92兆円ですから、不足分を借金で、つまり国債45兆円で賄っています。

 渡辺氏によると、国や地方公共団体は企業会計の手法を導入しておらず、従来は単式簿記による収支計画書しかなかったそう。数年前から地方公共団体も貸借対照表の作成が義務づけられたといいますが、収入より支出が多ければ国債を発行、という考え方に恐ろしさを感じると同時に、会計目線で世の中を考えることの大切さを実感します。

 自分の身は自分で守りたい現代でこそ、会計は世の中を読み解くひとつの武器になります。「会計? 簿記? とっつきにくい」と思う人こそ手に取ってほしい1冊です。

文=三浦小枝