姿なき訪問者“ぼぎわん”の正体とは? 人間の暗黒面が徐々に明かされる、ノンストップホラー『ぼぎわんが、来る』

マンガ・アニメ

2019/9/10

『ぼぎわんが、来る』(川本貴裕/KADOKAWA)

 本当に怖いのは、得体の知れない化け物か? それとも――。

 昨冬、豪華キャストによる映画化が話題となった、小説『ぼぎわんが、来る』(澤村伊智/KADOKAWA)をご存じだろうか。2015年に日本ホラー小説大賞を受賞し、多くの文芸評論家やホラーファンを唸らせた。かくいう私も、小説を読んだときに圧倒的な不気味さと恐怖に慄いた読者のひとりだ。そんな傑作が、同名タイトル『ぼぎわんが、来る』(川本貴裕/KADOKAWA)としてコミカライズされている。

 主人公の田原秀樹は、妻の香奈と生まれたばかりの娘・知沙と穏やかな日々を送っていた。ある日、田原への訪問客に応対した後輩の高梨がおかしな“噛み傷”によって腕を失ってしまった。細い枯れ木のような腕、真っ赤に充血した不自然に大きな目、ぼさぼさの髪……。日に日に容体が悪化する高梨を見て、田原の脳裏にふと亡き祖父が恐れていた化け物“ぼぎわん”の存在がよぎる。25年前の夏の日、田原自身もその化け物と出会っていたのだ。

 心を侵食する不安感や恐怖を払拭するため、田原は家中に大量のお守りを飾り始める。SNSを通じて知り合ったパパ友との交流会も癒しとなり、少しずつ平穏な日々を取り戻しつつあった。しかし、安堵していたのも束の間。ある夜、田原が帰宅すると飾っていたお札やお守りが全て壊され、香奈がガタガタと恐怖で体を震わせていた。そして、留守番電話にはザーザーとしたノイズと共に姿なき“なにか”からのメッセージが残されていたのだ。

“ギンジさんはいますか シヅさんはいますか”
“ヒデキさん カナさん”

 香奈を不安にさせないように、「誰かに逆恨みされた、会社にも来る」と説明する田原だったが、彼自身は着信相手の正体に確信を持っていた。“ぼぎわん”が、25年の時を経て自分のもとにやってきたと――。

 第1巻では田原が妻や子供を気遣うシーンが数多く描写されており、非の打ち所がない“100点満点の父親”であることを読者に印象づけている。しかし、彼の言動にはどこか違和感を覚える。違和感の正体をはっきりと掴むことはできないが、なにかがおかしいのだ。

 本作の魅力は作中に鏤められた“隠し扉”のような不気味さ。得体の知れないものが近付く恐怖のなかに、人間の本質と多面性が見え隠れしている。ねっとりと絡みつくような不快感とじわじわ迫る恐怖を味わいたい方に手に取ってほしい作品だ。

文=山本杏奈