不器用な父親からの愛情を呼び起こす。『うちの夫の不器用な娘愛』は、すべての大人に読んでもらいたいほっこりエッセイ

マンガ・アニメ

2019/10/6

『うちの夫の不器用な娘愛』(チッチママ/イースト・プレス)

 夫の娘たちへの不器用な愛情表現にグッときて、思わず突っ伏しそうになる。夫の妻へのさりげない愛情表現に胸がキュンとなる。チッチママさんの『うちの夫の不器用な娘愛』(イースト・プレス)は、なにげない日常にあふれる、愛くるしい姉妹と夫のやりとりを描いたコミックエッセイだ。

 登場するのは、2人の娘の母でアラサー主婦の作者・チッチママ、薬剤師で合理的な考えを持つ理系気質の夫、お調子者だけど恥ずかしがり屋な一面がある長女・チッチ(2016年6月生まれ)、モチモチなほっぺと腕がチャームポイントの次女・モッチ(2018年5月生まれ)。

 テレビを見ていて「とーたんとーたん」「あだー」とチッチとモッチに言い寄られ、「おーい何だよ急に…」と言いつつも嬉しさを隠し切れない夫。チッチと一緒にお風呂に入りたい一心で、子ども用のバスボムを買って帰る夫(チッチには「おかーたんとバチュボムやる」と拒まれるのだが)。理知的な父と姉妹のほっこりとしたやりとりがなんともほほ笑ましい。

 一方で、幼心に刻まれる父の姿とはどのようなものだろう。私の答えは「覚えていない」である。お風呂に入れる父、肩車をする父など、さまざまな父の姿が脳裏に浮かぶが、それらはすべてアルバムの写真が物語るものだ。著者曰く、

“この本には、アルバムの写真やホームビデオでは残せない『夫の娘愛』が記録されています。娘たちが大きくなって「お父さんの靴下と一緒に洗濯しないで!」なんて言い出した頃、そっとこの本を差し出そうと思っています。”

 とのこと。家族にとってかけがえのない時間を、マンガを通して記録していく著者の愛情の深さが感じられる。ページをめくるたび、ほっこりが増し、止まらなくなるのだ。

 作中に、お絵描きの苦手な夫がチッチに棒と丸で2進法を教えるエピソードが登場する。私の父も、私が小さな頃から図鑑や哲学書、心理学系の読み物を与えてくれた。もしかすると父にも、本作に登場する父親と似たような経験、想いがあったのかもしれないと、在りし日を振り返り、やはり胸が温かくなった。ただし、私の父は、“小さな子ども”に苦手意識を持っているような人だった。推測でしかないが、予測不可能な行動ばかりとる子どもに対し、どのように接すればいいのかわからなかったのではないだろうか。それでも、父は私を可愛がろうとしてくれたのも事実。本書を読んでいて、そんな父親が抱く気持ちに触れられた気がして、久しぶりに会いたいな……と思わされた。

 子育て中のパパ・ママはもちろん、かつて子どもだった大人にも手に取ってもらいたい一冊。チッチとモッチの笑顔、夫婦のやりとりに、ほっこり癒されて、優しい気持ちになれるうえに、幼少期の親子関係を思い出すこともできるはずだ。

文=水本このむ