ヤクザの新たな資金源は「タピオカドリンク」!? 暴力団と日本社会の知られざる接点

社会

2019/10/22

『教養としてのヤクザ』(溝口敦、鈴木智彦/小学館)

 今から8年前、ひとりの有名タレントが暴力団関係者との交際を認め、芸能界から引退した。この頃から世間は反社会勢力との“黒い交際”に厳しい目を向けるようになっていったように思う。今年の6月に発覚した吉本芸人たちによる闇営業問題は、連日ワイドショーや週刊誌でも大々的に取り上げられ、芸人たちには厳しい処分が下された。

 そんな世間に対して、日本人は反社会勢力に対する理解が浅いのではないかと疑問を投げかけるのが、“ヤクザライター”としても活躍している溝口敦さんと鈴木智彦さんだ。

 溝口さんは暴力団取材の第一人者。自らの身を危険にさらしながら、これまでに暴力団関係の著作を数多く発表。中でも、食肉卸売業ハンナングループの総帥で食肉業界のドンといわれていた浅田満氏と暴力団との関係を暴露した『食肉の帝王』(講談社)は、大きな話題を呼んだ。

 一方、鈴木さんはヤクザ専門誌『実話時代BULL』で編集長を務め、2018年には『サカナとヤクザ 暴力団の巨大資金源「密漁ビジネス」を追う』(小学館)を発刊。私たち一般の人々が高級魚をありがたがって食べるほどヤクザが儲かるという業界のタブーに迫った。

 暴力団やヤクザと聞くと、私たちの頭には、映画やドラマで描かれてきたような、血で血を洗う抗争が浮かぶかもしれない。しかし、暴力団対策法や暴力団排除条例が施行され、ヤクザのシノギや暮らしぶりは大きく変化したという。溝口さんと鈴木さんの対談形式で進められる『教養としてのヤクザ』(小学館)は暴力団と社会とのさまざまな接点を通して、「今」のヤクザの姿や反社・暴力団とは何かを学ぶことができる1冊だ。

 私たちが知らなかったさまざまな事実がちりばめられている本書は、社会問題を扱いながらも非常に読みやすく、作中では現在大ブームの「タピオカドリンク」とヤクザの接点も明らかに。2大ヤクザライターによる集中講座で、私たちはヤクザの真の生き様に触れることができるのだ。

■ヤクザの新たな資金源はタピオカドリンク!?

 今、若者の間ではタピオカドリンクが大ブーム。それにあやかり、新たなシノギを得ている暴力団もいるそうだ。暴力団経営のタピオカドリンク店を知る鈴木さんによれば、立地や店構えが暴力団経営には見えないので、客はそれと知らずに購入しており、店舗のアルバイトスタッフも自分が暴力団のフロント企業で働いているとは思っていないのだという。

 デンプンでできているタピオカは原価が安いので、あえて“タピオカ増量無料”をアピールして、紅茶の茶葉にかかるコストを削減する。タピオカドリンクは商才のあるヤクザにとって貴重な資金源になっているという。

■“貧困”に直面したヤクザはどう生きていくか

 タピオカドリンクのようなものがヤクザのシノギになった背景には、ヤクザの直面する“貧困”が関係しているという。暴力団は会社組織ではなく、ヤクザは個人事業主のような存在だ。自分の才覚でそれぞれ稼がなければならないが、今の世の中では「暴力団」という肩書きはマイナスだ。ヤクザは銀行口座も持てず、暴力団員であることを申告せずホテルに泊まったり、クレジットカードを申請したりすると詐欺罪で有罪になる。また、正業で飲食店や建設会社を営むことも不可能になった。

 みかじめ料を集めて潤っていたのも、ひと昔前の話だという。不況のため儲かっている店は少なくなり、また暴力団対策法によって、店側がヤクザにみかじめ料を払うメリットを感じなくなってしまった。暴力団側もみかじめ料を取っていることを警察にバラされ、賠償命令が出るのを避けたいと考えているという。

 反社会勢力内のヒエラルキーではヤクザより下層だったはずの「半グレ」が潤っていることもヤクザの貧困の一因だという。詐欺などの犯罪をシノギにする半グレは、皮肉ながらも外面的には堅気であることが多く、暴力団対策法や暴力団排除条例が適用されないため、稼ぎやすいというのだ。

 昭和から平成になり、ヤクザを取り巻く環境は大きく変わった。ヤクザを教養のひとつとして理解すると、日本社会の仕組みも見えてくる。この令和という時代、ヤクザや社会はどう変化していくのだろうか。

文=古川諭香