黒歴史の流出、なりすまし……SNSの暗黒面を描きつつ、人と人とがつながる尊さも描く、『先生もネット世代』

マンガ

公開日:2019/11/11

『先生もネット世代』(那多ここね/一迅社)

 現実とSNS。ふたつの人間関係を持つ今どきの高校生の心は、大人が思う以上に複雑で繊細だ。pixivで女子人気1位を獲得した大人気マンガ『先生もネット世代』(那多ここね/一迅社)は、ネット世代の高校生と大人である教師との人間模様や友情、恋愛、葛藤を繊細なタッチで描いていく。

 主人公は高校の数学教師・上田祐介25歳。学生時代からSNSが日常に溶け込み始めた、まさにネット世代の教師だ。そんな彼にとってSNSは自分の黒歴史を消せない場所でもある。5年前、素性を隠せるSNSで女装だとバレずに何人の男が釣れるか、という遊びをキッカケに、ネット上に自分の女装写真を投稿していたのだ。アカウントを削除した今も黒歴史(=過去の女装写真)はネットの海を漂っている。

 1巻では、その女装写真を流用したなりすましアカウントが、教え子の小坂健に急接近。生徒の人間関係にどこまで踏み込んでいいのか悩みながらも、上田はそのアカウントへの接触を決意する。ところが、意外な人物がなりすましていたことが明らかになる。大好きな人を思った末のなりすまし行為……その切なさに思わず涙しそうになる。ネットを頭ごなしに悪とせず、うまく付き合う方法を一緒に考えてくれる上田のような教師がいてくれたら、生徒たちも心を開きやすいだろう。これ以上はネタバレになるため、ぜひ1巻を手にしてほしい。

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 そして2巻のテーマは女の子同士の恋愛だ。上田に思いを寄せる吉川日菜子と、幼なじみであり校内一のモテ男である瀬尾恭司に片思いしている南なの。一方通行の叶わぬ恋に思い悩みながら少しずつ成長していくふたりの姿がまた愛おしい。

 登場人物の顔立ちや個性もしっかりと描き分けられていて読みやすく、また、全員の性格がかわいいので読んでいて癒されるのも本作の魅力。推しキャラが見つかること間違いなしの作品である。

 2巻では、日菜子となのの間に新たな友情が芽生え読者をほっこりさせるのだが、正門前で何やら様子をうかがう他校の女子生徒が登場し、再び不穏な空気が立ち込める。どうやら小坂や瀬尾とつるんでいるミヤ(宮田澄也)の動画配信が鍵になるようだ。次巻ミヤがどんなトラブルに巻き込まれるのか、上田が動画にどう対応するのか、ますます楽しみだ。

文=水本このむ