「恋って何だろう?」――木皿泉、蒼井ブルー、山田ルイ53世…著名人27人が薦める恋と愛の本

恋愛・結婚

公開日:2019/12/13

『恋って何ですか? 27人がすすめる恋と愛の本』(河出書房新社)

 もし、今、思春期真っ只中の少女に「恋って何?」と問われたら、なんて答えてあげるだろうか。ふと私の心に浮かんだのは、「甘い絶望」という言葉だった。目が合うだけで逃げ出したくてたまらなくなって、声をかけられれば涙が出そうになって、でも、きっと叶うことはない。私にとって「恋」とはそういうものだった。だが、きっと「恋」の形は人それぞれ。「恋」とは一体何なのか。その答えはきっと一人ひとりで異なるのだろう。

『恋って何ですか? 27人がすすめる恋と愛の本』(河出書房新社)は、恋に悩むすべての人に読んでほしい恋のためのブックガイド。文筆家の蒼井ブルーさんや小説家の澤田瞳子さん、社会学者の上野千鶴子さん、タレントの宇垣美里さん、歌舞伎俳優の尾上右近さん…。小説家や漫画家、俳優、アーティスト、学者、書店員など、バラエティーに富んだ選者たちがとっておきの恋愛本を紹介してくれる。「14歳の世渡り術」というシリーズの本であるが、恋に悩む大人が読んでもページをめくるだけで心揺さぶられるに違いない。この本を、書籍探しのヒントにするも良いだろうし、自分の恋愛のヒントにするも良いだろう。

 いくつかこのブックガイドで紹介されている本をご紹介しよう。

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芸人・山田ルイ53世さん
学校空間での恋 ――『風と木の詩』竹宮惠子

『風と木の詩』は、19世紀末フランスの、男子のみが通う寄宿舎付きの学校を舞台に、少年同士の恋を描いたマンガ史上に残る大傑作。この本では、学校の異質性と、行き詰まる人間関係、閉塞感が丹念に表現されている。自分の経験している学校空間に重ねながら読み進めれば、その場所で繰り広げられる多様な恋と愛、絆に、きっと心動かされるに違いない。

脚本家・木皿泉さん
恋に包まれたとき ――「握りめし」(『旅する女』収録)小松左京

「握りめし」は戦時中の日本を舞台とした物語。幼なじみの女の子に恋い焦がれている主人公は、先輩からの頼みで、その幼なじみに先輩からの恋文を届ける。「恋文を届けるたびに握りめしをひとつあげる」と言われ、戦争中で食べ物がなく、ずっと腹をすかせていた主人公は頼みを断れなかったのだ。しかし、主人公を待ち受けていたのは残酷な結末。木皿氏は、主人公の踏みにじられた恋の物語を読むたびに、「恋」というコトバの反対語は「自分を踏みにじるもの」ではないかと感じるのだという。

少女マンガ研究家・トミヤマユキコさん
ありのままを受け入れる ――『ボーイ☆スカート』鳥野しの

『ボーイ☆スカート』の主人公は、ある日、街中でスカートを穿いているカッコいいオジさんを見かけ、スカートを穿くことに憧れを抱き始める。クラスメイトはざわつくし、彼と付き合っている女の子は大ショック。だが、彼のことを人間的に嫌いになったわけではないから葛藤するのだ。男らしさや女らしさを大事にしようという恋愛ストーリーがどうもしっくりこない人にはこの本がオススメ。今よりも風通しがよくて、呼吸のしやすい人間関係をきっと作っていけるようになるはずだ。

 このブックガイドを読めば読むほど、恋というものはひとつの形におさまらないものなのだということを感じる。「恋とは何?」の答えがきっとこの本の中に隠されている。恋について考えたいとき、恋で悩んだとき、あなたの恋の力になる1冊をぜひこの本で見つけてみてほしい。

文=アサトーミナミ