「成城石井」ひとつひとつの商品にそこまでする!? 唯一無二のスーパーの人気の秘密がわかる商品開発秘話

暮らし

公開日:2020/8/17

成城石井 世界の果てまで、買い付けに。
『成城石井 世界の果てまで、買い付けに。』(上阪徹/自由国民社)

 見ているだけでワクワクが止まらない、ちょっと特別なスーパーマーケット「成城石井」。駅ナカなど便利な場所にあることが多く、ついふらっと立ち寄ったら楽しくて長居してしまった…なんて経験がある人も多いのではないでしょうか? かくいう筆者も、そんな成城石井ファンのひとりです。

 成城石井の店内には、ほかのスーパーではあまり見かけない、変わった食材がずらりと並んでいます。この特有の品揃えは、いったいどうやって実現しているのか…。先日、そんな成城石井の秘密を知ることができる『成城石井 世界の果てまで、買い付けに。』(上阪徹/自由国民社)という本が発売されました。

 本書は、成城石井の人気商品がどういう経緯でお店に並ぶのか、人気の秘訣はなんなのかをたっぷり30種類紹介してくれる本。バイヤー・商品開発担当者が語るエピソードは、より成城石井の、そして商品のファンになってしまうような話ばかり。そこで今回は、成城石井がひとつひとつの商品にどれだけこだわりを持って向き合っているのか、3つほどピックアップして紹介します!

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「フェラリーニ パルミジャーノ・レジャーノ 24カ月熟成」

成城石井 世界の果てまで、買い付けに。

 1つめは、「フェラリーニ パルミジャーノ・レジャーノ 24カ月熟成」。ハードチーズの中でも人気が高く、日本人にもなじみ深いチーズですが、実は「パルメザンチーズ」として売られているものの多くは模造品なんだとか。「パルミジャーノ・レジャーノ」と呼べるのは、北イタリアの特定地域で作られて検査をクリアし、「DOP」の認定を受けたものだけ。

 成城石井のパルミジャーノ・レジャーノは、その中でも珍しい、希少なジャージー牛乳を30%も使用した特別なもの。ジャージー牛乳は一般的なホルスタイン種の牛乳よりも濃くて味わい深いという特徴がある一方、生産できる量が少なくエサも倍量必要でコストがかかるため、通常チーズには使われません。

 成城石井の社長・原昭彦さんは、バイヤーだった当時、パルマにあるフェラリーニ社のチーズ工場まで足を運び、3年かけてようやく商品化を実現させたのです。

 驚くべきは、原さんが牛の写真だけでこの特別なチーズを見つけ出したこと。ヨーロッパの大きな展示会会場の中で、飾られてあった写真の牛がジャージー牛であると即座に気づき、数あるチーズの中からこの希少なパルミジャーノ・レジャーノを見つけ出せたのは、原さんの豊富な知識とバイヤーとしての強い情熱があったからこそなのです。

「成城石井 2種のトリュフ香るミックスナッツ」

成城石井 世界の果てまで、買い付けに。

 2つめは、こちらも人気商品である「成城石井 2種のトリュフ香るミックスナッツ」。

 入っているナッツは、トリュフの風味と相性の良いクルミ、アーモンド、ピスタチオ、マカダミアナッツの4種類。菓子担当のバイヤー・八尋佐和子さんによると、このナッツ類の配合や割合も、トリュフ風味にあわせた時に全体としておいしく食べられるよう改良を重ねてたどり着いたものなんだそう。また、産地や煎り時間にもこだわり、風味が飛ばないよう煎ってから12時間以内にパックするなど最高の状態を研究し続けているそうです。
また、トリュフオイルとトリュフ塩も、製品としても販売されている厳選されたものを使用しています。

 本来、トリュフを香らせるだけならオイルか塩のどちらかでいいのかもしれません。コストを考えればピスタチオナッツではなく、安価なカシューナッツを使用すればよいのかもしれません。しかし原材料があがってでもおいしい商品をお客様に味わっていただきたい、との思いが成城石井らしさ。結果的には、一度食べるとリピートされるお客様が多く、のちの大ヒット商品となったのです。

 こうした担当者の熱い思いと努力の結晶を組み合わせて生まれたのが、この「2種のトリュフ香るミックスナッツ」なのです。

「成城石井 プレミアムチーズケーキ」

成城石井 世界の果てまで、買い付けに。

 最後は、「成城石井 プレミアムチーズケーキ」。ナチュラルな甘さのスポンジ生地、ローストしたアーモンドとレーズンがアクセントのクリームチーズ層、サクサクしたシュトロイゼルと3層仕立てになっている、年間120万本以上売れているチーズケーキです。

 このチーズケーキを開発したのは、セントラルキッチン菓子グループ長のパティシエ・光野正三さん。10代からパティシエとして経験を重ねてきた光野さんが入社から4年間構想を練っていた商品で、「成城石井のデザート」に対しての信頼作りからスタートし、ようやく看板商品として実現させたのがこのチーズケーキです。

 スポンジにきび砂糖を使い、シュトロイゼルにアーモンドプードルをたっぷり入れるなど、製法や素材も徹底してこだわり抜かれています。コストを意識して何かを削ったり妥協したりということは一切していません。光野さんは、プレミアムチーズケーキというネーミングの理由として「レシピがプレミアムなんです」と回答。万人受けする味ではなく、店への信頼と客のアンテナの高さがある成城石井だからこそできるものを目指したと明かしています。

 興味深いのが、この大ヒット商品が、実は商品会議では却下されるところだったというエピソードです。ボツになりそうだったところを、試食をした女性スタッフが、おいしいから商品にしましょう、とすすめてくれ何とか発売にこぎつけたものの、形状や大きさ、見た目が一般的になじみのあるものではなかったためか、すぐに大ヒットとまではいっていませんでした。ブレイクのきっかけは2007年の東京・新丸ビル店のオープン。オープン記念に押し出したところ1日に1000本売れ、そこから口コミが広がったのだといいます。

 この『成城石井 世界の果てまで、買い付けに。』には、ほかにもまだまだ紹介しきれない、知ると感動するようなエピソードが満載です。成城石井で売られている商品は、もちろん何も知らずに食べてもおいしいものばかり。でもその裏にどんな努力やこだわりが詰まっているのかを知ることで、よりその商品が尊いものに思えてきます。もう、成城石井に行くだけで世界中を旅している気分になれそうです。

文=水音(月乃雫)