リモートワーク20年の先輩が解説。リモートワークで活躍する人の特徴とは?

ビジネス

公開日:2020/8/29

『リモートワークの達人』(ジェイソン・フリード、デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン:著、高橋璃子:訳/早川書房)

 緊急事態宣言が出され、多くの企業が在宅勤務となった4月。おっかなびっくり自宅での作業環境を整えていたころ、私たちはツールの使い方などの基本的な情報を求めていた。だが、宣言が明け、コロナとともに暮らしていく段階では、長期的な視点で新しい働き方のスタイルを確立する必要がある。チーム作りや人材採用、自分のキャリアに関しても、“リモート前提”で考えねばならない。時代はどんなスキルを求めているのだろうか?
 
 リモートワークは多くの企業にとって初めての試みであり、どんな問題が起こるのかわからない。であれば、ずっと前からやっている“先輩”たちから学ぶのが得策だ。『リモートワークの達人』(ジェイソン・フリード、デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン:著、高橋璃子:訳/早川書房)は、20年間リモートワークを続ける企業「ベースキャンプ」の経営者ふたりによる著書。彼らは自分たちでプロジェクト管理ツールを開発・運営し、世界中に散らばる社員たちと成果をあげ続けてきた。つまり、私たちが今、そしてこれからぶつかる問題は、彼らがすでに通ってきた道なのだ。

リモートワークで活躍するのはどんな人間か? 採用でも重視したいポイント

 勤務時間が管理できないリモートワークでは、明確な成果をあげなければ評価されにくい。とはいえ、ただ「成果主義になる」といわれても、何をどう変えていけばいいのかわからない。リモートワークでは、どんなスキルを持つ社員が活躍しているのだろうか。

 著者は、オフィスで働くとき以上に「コミュニケーション」が大切になると語る。「直接会わないのだから、仕事だけできればいいのでは?」と思うかもしれない。だが、文字でのコミュニケーションが増えるリモート環境では、「ちょっとした一言」が相手を傷つける。上司の指示が正しくても、「言い方」にイラっとしてしまうことがあったりしないだろうか。直接会わなくなるからこそ、より細やかなコミュニケーションが求められるのだ。

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「仕事ひとすじ」にならないように注意

 リモートワークでよくある問題が、「働きすぎ」だ。オフィスに通っていたころは「家に帰らなくては」という意識が働くが、リモートになるといつでも働けてしまう。プライベートとの切り替えができなくなり、気づけば朝から晩まで仕事のことを考えている…という人もいるのではないか。

 だが、こうして「仕事ひとすじ」だけになることは好ましくない。いい企画やいいデザインは、目の前の仕事だけを見ていても生まれないからだ。興味本位で読んだ本、Twitterで見かけたサービス、外出先での地元住民との会話…。仕事以外でのインプットが、新しいアイディアにつながる。一日中家で仕事に没頭するのではなく、新しい刺激を得る機会を確保しよう。

 本書ではこの他にも、リモートワークを阻むよくある誤解(「ひらめきは会議室で生まれる?」「いますぐ質問できないと困る?」)へのアンサーや、画面共有などを利用したリモートでのコミュニケーション術を紹介。20年間続けてきた“先輩”の言葉は、リモートワーク1年生の私たちにとって金言ばかりだ。本書を参考に、これからの新しい働き方を作り上げてほしい。

文=中川凌(@ryo_nakagawa_7