ドラマも好調! 『ミステリと言う勿れ』が抵抗する「“おじさん”が真実を独占する社会」

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更新日:2022/1/31

『ミステリと言う勿れ』というタイトルの意味

 最後に、本作が提供するこうした視点を念頭に置いたうえで、『ミステリと言う勿れ』というタイトルを眺めていると考えさせられることがあります。

「ミステリ」というのは、さまざまなものの見方を「(唯一の)真実」に収斂させていく過程を描いたものと一般的にはみなされているかもしれません(そうではない作品も多くあるとは思いますが)。しかし本作はむしろ、「唯一の真実」に揺さぶりをかけ、世界を多重化するという、言わば(一般にイメージされる)ミステリとは「逆向き」の動きをする作品のように見えるのです。だからこそ「ミステリと言う勿れ」なのではないか――。

 ……と言うと、やや牽強付会で、おそらく著者の田村由美さんも否定されると思いますが(実際、田村さんは「むり そんな難しいもの描けるものか!」と2巻の巻末で言っており、タイトルの意味を示唆しているように見えます)、ともあれ本作は、世界を多重化する豊かさを、たしかに読者に届けてくれているように思います。

文=古豆

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