登録者数100万人越え! 『レイクレ』のともやんが再生回数200回だった頃を振り返る

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公開日:2022/3/28

明日はもっといい日になる
『明日はもっといい日になる』(ともやん/KADOKAWA)

 2021年11月、YouTubeチャンネル「レイクレ」こと「Lazy Lie Crazy」が登録者数100万人を突破した。2017年8月のチャンネル開設当時、レイクレは弱小チャンネルだった。メンバーたちは「おもしろい!」と感じてアップした動画なのに再生回数が1000回超えるのも大変だったという。

 メンバーのひとり、ともやんは自身初のエッセイ『明日はもっといい日になる』(KADOKAWA)で、当時のことについてこう振り返っている。

「僕たちはずっと右肩上がりでここまでやってきたわけじゃなくて、再生回数が200回とかザラでした。そんな状況だけど、『チャンネル登録者数100万人』という目標は僕らの中に最初からありました。僕たちはその夢に向かって突っ走ってきたと言ってもいいくらい。うまくいかないことばかりでした。でも、レイクレのメンバーに出会って、僕の未来は変わりましたね」

 同書でともやんは、これまで歩んできた6年間について綴っている。楽しかったことや幸せだった時間はもちろん、YouTubeでは語ってこなかった悲しい出来事や失敗も隠すことなく記している。その6年間は、深い悲しみを幸せなストーリーに書き換える日々だったという。

 親友との突然の別れ、立ち直れず下ばかり見ている日々、そこから前を向き一歩を踏み出すきっかけとなった今のメンバーとの出会い。今回はその出会いのストーリーについて紹介しよう。

※本稿は『明日はもっといい日になる』(ともやん/KADOKAWA)から一部抜粋・編集しました。

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今に続く一歩

今に続く一歩

 YouTubeをやろうとは思ったが、何もできない日々が続く。気がつけば大学生活も2年目に突入している。ある日、友達がリツイートしている動画が目に留まった。

「なんや、『すっとん京平くん日記』?」

 見てみると、合宿免許に行ってヒマを持て余してる人たちの動画だった。おもしろいか? と問われるとそこまででもない。でも、僕の心の中に、なんとも言えないなつかしさが漂ってくる。なんか楽しそうなのだ。そして、中のひとりにどうしても目が行ってしまう。楽しそうな笑い声、陽気な雰囲気、振るまい。

「なんか圭太みたいや」

 今の、どば師匠だった。顔なんか全然違う。でも、僕には圭太に似て見えて仕方ない。会いたい。会って、また笑い合いたい。僕は彼にいきなりDMを入れた。まったく知らない相手だった。普段、僕はそんなことしない。いや、できない。でも、やってしまった。後悔なんかない。

 圭太がいなくなってから、僕は楽しい気分なんか感じなかった。けれども急に景色が変わる気がした。ようやく、僕は一歩を踏み出したのだ。また、楽しくなれるかもしれへん。

仲間ができた

仲間ができた

 急に見ず知らずの人間から連絡されたのだから、どば師匠も驚いたはず。でも、彼は気軽に返事をくれた。すぐに会うことにした。最初はどば師匠とたかしがやってきた。場所は大阪梅田。やっぱり、師匠には圭太みたいな雰囲気があった。

「どっかで話そうか?」

 そんな軽い会話でサンマルクカフェに入った。

「一緒にYouTubeをやらん?」

 僕が言いたいことは、その1点。でも、僕と師匠たちは初対面。実は彼らは僕のことをツイッターなどで多少予習していたらしい。バスケで全国大会に出たヤツという認識。だから、バリバリのアスリートタイプと思っていたみたいだ。

 そんなこともあって、最初は師匠が軽く拒否った。でも、僕は彼らの動画に感じるものがあった。ビビッと来ていた。彼らとなら行ける気がする。そこで、圭太の話をした。

「なんか、似てるんや。だから、うまくいく気がする」

 師匠はその話に驚いていた。

「自分、京平って名前なんやけど、親がその名前にするか悩んだ別候補が圭太やったらしい」

 たかしも言う。

「俺、誕生日11月1日や。彼の命日なんやな」

 別にただの偶然でしかない。でも、僕は圭太がくれた運命のように思ってしまう。すると、どば師匠が言った。

「俺らも仲間でYouTubeをやろうと考えてた。一緒にやろか」

 こうして僕は仲間を得た。どば師匠とたかし、それにてっちゃんとぺろ愛男爵も含めたメンバーに、僕はスッと入っていけた気がする。はじめまして、と緊張することもなかった。偶然なのだが、僕らは同じ20歳だった。でも、その辺のただの20歳。ビジネスなんかわからない、ただの大学生だ。そのくせ、なんか楽しそうだ。

 僕にとっての希望は絶望の中にあった。すべてなくなったからこそ、何かをはじめようと思ったのだ。

 だから面識もない、どば師匠にいきなり連絡できた。あのアクションがあったから、その後がある。今がある。大事なのは行動すること。一歩を踏み出すこと。そうすれば、明日はもっといい日になる。

Lazy Lie Crazy

Lazy Lie Crazy

 新たに出会った仲間たちに、僕は手ごたえというか可能性を感じていた。僕自身はひとりになると恥ずかしがりで、YouTube的ノリなんか発揮できない。でも、どば師匠は違う。彼は変だと思う。恥ずかしいという感情をどこかに忘れてきてしまった気さえする。平気で外で叫ぶ。トークも途切れない。たぶん、アホなのだろう。でも、そのアホさがとてもいい。たかしは大阪市東部の放出で、僕は守口市。家も近いので大学がそれぞれに終わると、集まることが日課のようになる。

 グループでYouTuberになるのだから、その名前を決めなければならない。メンバーが僕の家に集まって話し合う。最初に盛り上がった案は「Foot Bad Smells」。要するに足が臭いヤツら、ということになる。なんか、めっちゃおもしろい名前のような気がしてくる。それでいいような空気になってくる。いけそうに思えてくる。でも、僕たちはグループだ。誰かの魔法が解ける。冷静に戻って言う。

「アカンやろ。普通に売れへんやろ」

 その一言で全員の魔法が解ける。

「ハッ、ホンマや。なんでこんなしょうもないの、ええと思ったんやろ?」

 冷静になって、再度考える。そんな流れ。夜通し考えて、眠気と疲労で全員がおかしくなる。誰かが言った。

「ヨド戦記って、ええ感じちゃうか?」

 僕らの近所にはいつも淀川がある。ファンタジー文学の傑作である『ゲド戦記』はスタジオジブリの映画にもなった。それに引っかけた案だ。しょうもない。なのに、この案は強烈な魔力を発揮した。誰も魔法が解けない。

「めっちゃええやん!」

「それで行こか!」

 全会一致してしまう。このままだったら、運命は変わってしまっていた気さえする。でも、僕らは眠すぎた。確定せずに解散した。翌日、また顔を合わせる。全員の魔法は解けていた。昨日、あれだけ輝いていた「ヨド戦記」はゴミカスのような案に思えていた。

「アカンな。絶対にアカン」

 運命が元に戻った。喜連瓜破駅近くのスーパーのイートインコーナー。僕たちの会議は続く。すでに数本の動画は撮っていた。

「よう、ヒマ人!」

 決まってこのフレーズではじまるのが僕らの動画だ。

「ヒマ人が好きなヒマ人ってどう? 英語にしたら、Lazy Like Lazy」

 僕は思いついたことを言った。

「れいじーらいくれいじー、か。なんか、よさそうやな」

「最後、クレイジー、にも聞こえるな」

 何かが降臨した気がする。みんなでゴロ合わせのように考える。

「Lazy Lie Crazyって、ゴロよくないか」

 特に意味はない。ヒマ人、ウソ、クレイジーと並べただけ。でも、僕たちに似合っている気がした。

「めっちゃカッコええやん!」

 みんな興奮気味に支持表明する。アカン、この案も「ヨド戦記」クラスの魔力で僕らをたぶらかしているのかもしれん。でも、この案は翌日も輝きを失わなかった。

「レイクレでええな!」

 こうして、僕らは「レイクレ」になった。

はじめてのYouTube

はじめてのYouTube

 YouTubeをはじめる決意はいいのだが、僕らは誰もやったことがない。

「なんか、MacBookとかいるみたいやぞ」

 僕らはネットなどで調べて、YouTubeのはじめ方を学ぶ。

「それ、ナンボするん? 」

 調べて驚く。学生にはめっちゃ高かったのだ。なんやねん。みんなで顔を見合わせる。そんな金があるヤツはいない。これを解決したのは、どば師匠。彼は親に金を借り、輝くMacBookを調達してきた。

「もう、なんとしても売れんとアカンようになった」

 金を返すためにも、動画をつくらねばならない。だが、僕たちは編集経験もない。ゼロだ。僕とどば師匠が中心になって、ネットで編集のやり方を調べる。

「音声ファイルを切り出すことをファイルカットとか言うらしいぞ」

 今なら、アホかと思うレベルで会話していた。たった4分の動画を編集するのに、要する時間は3日。ヘトヘトだ。こんなんでは、バンバン動画をアップできない。でも、僕はめっちゃ楽しかった。数カ月前まで、僕は絶望の中に転がっているゼロの人間だった。やることもない。やれとも言われない。そもそも言ってくれる仲間もいない。だけど、そのゼロから一歩を踏み出した。すると仲間ができた。やることばかりになった。動画編集なんかしたことないのに、パソコンなんかほとんど触ったことないのに、やらんとアカン。マジでしんどかった。それなのに、撮影も編集も全部おもしろく感じる。新しいことにチャレンジするのって、ホンマに楽しいのだ。小さいころ、はじめてバスケをやったときもそうだった。チャレンジすると、おもしろさに出会える。楽しくなる。一歩を踏み出せて本当によかった。僕にとって、こんなに大きな一歩はなかった。

 出来上がった動画を、たったひとつのMacBookのモニターで見る。頭をゴチゴチ突き合わせてみんなで見る。その時間が最高に楽しい。だって、仲間がいるんやで。仲間と笑ってられるねんで。こんなにおもろいこと、あるわけないやん。

 気がつけば、また笑えている僕がいた。

【著者プロフィール】
ともやん
登録者数100万人越えの人気YouTubeチャンネル「Lazy Lie Crazy【レイクレ】」のメンバー。バスケメインの個人チャンネル「ともやん【レイクレ】」は登録者数40万人を突破。高校時代は、大阪の新人大会での優勝、インターハイやウインターカップなど、全国大会にも出場経験を持つ。3人制プロバスケットボールチーム「OSAKA DIME.EXE」所属のプロ選手としても活動。2021年8月にはバスケアパレルブランドをプロデュースするなど、幅広く活躍中。

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