川端康成の借金スキルは「天才」レベルだった…!/『文豪どうかしてる逸話集』⑧

文芸・カルチャー

公開日:2019/11/16

川端康成は、家に入った泥棒をジッと見つめて退散させた。

 極端に寡黙でギョロッとした大きな目で人をじろじろと見つめる癖があった川端康成は、その癖で多くの人を困惑させた。

 家賃の催促に来た家主のおばあちゃんを玄関先で黙ってじっと見続けて退散させたかと思うと、講演会を頼まれると「特にしゃべることはないので、時間いっぱい顔でも見ててください」と1時間一切しゃべらなかった。

 書籍の打ち合わせの時には、席で押し黙った川端から発せられる緊張感に耐えかねて、とうとう声を上げて泣き出す女性編集者を、さらにじっと見つめて、「どうしたのですか?」と言い、金を借りるために菊池寛の家に上がり込むと、一言もしゃべらずに「フクロウのような目」で菊池を凝視し金を出させた。

 部屋に泥棒が入った時には、目の合った泥棒を何も言わずにジッと見つめ、「……駄目ですか? 駄目ですよね……。帰ります……」と目ヂカラだけで退散させたほどだった。

(出典) 三島由紀夫『永遠の旅人』
梶井基次郎『川端秀子宛ての書簡』
小田切進『あたたかい人―川端さんとのこと―』