元カノから「精子が欲しい」とお願いされたら…!? 奇想天外で残酷な復縁(?)ラブストーリー

マンガ

更新日:2020/7/31

往生際の意味を知れ
『往生際の意味を知れ!』(米代恭/小学館)

 恋愛経験が非常に乏しい私が言うのもなんですが、みなさんの心の中に、「忘れられなくて、いまだに引きずっている元恋人」はいるだろうか? どちらかというと男性の方が未練たっぷりで引きずりがちと聞くが、女性の中でも、忘れられなくて元カレとの思い出の品を寝かせている…という方もきっといるはず。別れて数年経っても忘れられないくらい、そして今でも好きな気持ちが変わらない元恋人から突然連絡が、しかもとんでもないお願いをされたら…。そんな究極のシチュエーションで、もう一度恋するわずかな希望を信じる男と、彼に接近してきた元彼女との“少し異質”な再会系ラブストーリー、米代恭先生の『往生際の意味を知れ!』(小学館)をご紹介!

忘れられない元カノからとんでもない再会のお願いが…

 主人公の男性・市松海路(いちまつかいろ)は、同僚に誘われた合コンでも「元カノと結婚したいです」とぶっちゃけてしまうほど、元カノ・日下部日和(くさかべひより)のことが忘れられないでいた。その想い期間は、7年。彼の住む家には、日和と付き合っていた頃の写真や思い出の品がたくさん残っている。かつて市松が監督して日和が出演した映画を観ては満足するという過去の記憶に依存した生活を送っていた、そんな市松に、衝撃的で悲劇的な出来事が連続して起きる。この世に絶望を感じ、自ら命を断とうとした瞬間、とんでもない人生の転機が訪れる。そう…元カノである日和との再会である!

 キッカケは、彼女からの突然の電話。しかも内容は、「頼みごとがあるので会いたい」という元カノに再会できるチャンス。市松はなんの疑問も持たず返事をして再会を果たすのだが、日和の「お願い」というのは、

「市松くんに私の出産記録を撮って欲しいの」

というもの。瞬時に意味を理解できなかった市松に対して、日和の口からさらにとんでもないセリフが飛び出す。

「市松くんの精子が欲しい」

 元カレの精子で妊娠した子どもを出産するところを元カレが撮影する――これは完全に結婚案件だろうと申し出るも、日和は拒否。それでも再会したこのタイミングを逃したくない、復縁を望みたい…。この前代未聞のお願いに市松が下す判断と日和への答えは――!? 出産記録を撮りたいがために元カレの精子を求める元カノ。その元カノを7年も忘れずに熱く想い続けた元カレという、かなり歪んだ前途多難確定のラブストーリーだ。

 この恋のリターンマッチは、ハードルがあまりにも高い。かつての2人の恋のエピソードも小出しに描かれているのだが、普通に恋人らしい幸せな日々を送っていた1カ月後、日和が突然姿を消してその恋は終わってしまった。あんなに順調だったのに…という消化不良加減が7年も引きずってしまう大きな原因だろう。そんな状況での突然の日和からの「会いたい」という連絡、そしてまさかの「精子が欲しい」発言。これはもしかして…と期待をしちゃうのが男の心理である。だが日和にはそれ以上の感情はなく、市松へ想いを寄せる雰囲気は一切なさそうだ。こんな完全に不利な状況での市松の日和との復縁の行方は、ドキドキシーンの連続で悶絶しそうだ!

 気になるのは、日和のこれらの行動の真意だ。市松の精子を欲してはいるが、市松の反応がイマイチだと、じゃあ他の人に頼もうとするくらいのモチベーション。これは市松を振り向かせるための、あえての突き放しなのか…謎は深まるばかりだ。


 1巻では2人の再会から計画までの駆け引きが描かれ、そのラストでは気になる2巻の予告が描かれている。その内容は、“撮影”の開始だ。子づくりを実践する日和、それをカメラのファインダー越しに見守る市松――なんだか見てはイケナイものを見ている感じがして非常にドキドキしそうな展開だ。そして、1巻のラストで市松が語る、読み手にとっては衝撃の締めの一言。これが気になって気になって、続く2巻における“精子”の行方が読みたい思いも“静止”できなくなるはず! いろいろな意味で「往生際」を知るにはもってこいの作品だ。

文・手書きPOP=はりまりょう

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