ワクチンはこうして開発された! 偉大な開発者の中には日本人も…/感染症とワクチンについて専門家の父に聞いてみた③

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公開日:2021/1/18

過去の歴史を振り返る

 ジェンナー、パスツール、コッホ、北里柴三郎って何をやった人か知っていますか? 大学の新入生の授業の最初に聞いてみました。薬学部に入学したのに知らない学生が大勢いました。名前は聞いたことがあるけど、何をやったかおぼろげでした。小学生や中学生で世界の偉人伝とかを読まなくなったようです。ジェンナーは最初に種痘をやった人。パスツールは狂犬病ワクチンを開発しました。コッホは細菌学の父とよばれ炭疽菌、コレラ菌、結核菌を発見しました。北里柴三郎はコッホの研究室に留学し、破傷風菌の純粋培養に成功。抗体の存在を発見し血清療法の基礎を確立。またペスト菌を発見しました。

 ジェンナーはワクチンのパイオニアですが、自然科学者としても知られており、カッコウの托卵を観察した眼で天然痘・種痘を研究していました。パスツールは先見の明をもった不屈の科学者である一方、上昇志向が強く敵対者も多かったようです。コッホはパスツールと共に近代医学の開祖であり、寒天を使って病原細菌を数多く分離した「病原体の狩人」でした。彼は北里をはじめ多くの弟子を育てています。

 種痘と狂犬病はその病原ウイルスが発見される前にワクチンが開発され、これが生ワクチン、不活化ワクチンの始まりになっています。何がきっかけとなって発見につながっているのか、科学的な根拠はどうなっているのか興味が湧いてきませんか? 科学の世界での画期的な発見に関して「セレンディピティ」という英語の単語があります。思いがけない幸運に恵まれひらめきを得て幸運をつかみとる能力のような意味です。パスツールはジェンナーを「努力している人にのみ幸運は訪れる」と讃えています。セレンディピティは誰のもとにも舞い降りてくる可能性がありますが、努力を惜しんでいる人はそれに気づかずつかみそこなってしまいます。

 ワクチンは広く普及するにつれて副反応や誤解に基づく流言に晒されることもありました。ワクチンに対する誤解は今に始まったものではなく開発当初からありました。どうやってこうした誤解に対応してきたのか? 感染症の歴史をひも解くことで感染症・ワクチンに対する理解を深めていただければ何よりの喜びです。

<第4回に続く>