働いていない14歳にお金の話はまだ早い!? 「お金」を知れば、「未来」が輝き出す/14歳の自分に伝えたい「お金の話」①

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公開日:2021/6/30

藤野英人著『14歳の自分に伝えたい「お金の話」』から厳選して全11回連載でお届けします。今回は第1回です。「僕らのお金の使い方」が“社会の未来”を左右する――。稀代の投資家が「14歳の自分」に伝えたくなった、お金に使われず、お金で苦労しないための「考え方」とは? 一生役立つ「お金の話」が詰まった、老いも若きも必読の一冊です。

14歳の自分に伝えたい「お金の話」
『14歳の自分に伝えたい「お金の話」』(藤野英人/マガジンハウス)

はじめに 「お金」を知れば、「未来」が輝き出す

 こんにちは。藤野英人です。

 僕はレオス・キャピタルワークスという会社を経営しています。会社では投資信託を運用するファンドマネージャーの仕事もしていて、「投資家」と呼ばれることもあります。

 投資信託? 投資家って? 聞き慣れないかもしれません。もう少し詳しい説明は後でするとして、つまり僕は「お金のプロ」として日々仕事をしています。

 普段は大人向けに話をすることが多いのですが、この本では14歳のみなさんに向けて、「お金の話」を語っていきたいと思います。

「14歳に向けて」と言うと、「まだ働いてもいない14歳には、お金の話なんてする必要がないんじゃないか」という声が聞こえてきそうです。

 ところが、決してそうではありません。早いうちからお金について学び、考えることには大きな意味があります。

 

 例えば、お金には「社会の未来をつくる」という役割があります。

 僕たちはモノやサービスを買うことを通じて、「好き・嫌い」の意思表示ができます。多くの人から「好き」を集められた会社は、社会の中で影響力を増していく。逆に、ほとんど誰からも「好き」を集められなかった会社はやがて社会の中から姿を消していく。つまり、僕たちが「何にお金を使ったか」というのが、社会の未来を決めてしまうのです。

 

 もし、14歳のうちからこうした視点を持って、応援したい商品や会社に対して、お金を使うことができれば、みなさんが大人になったとき、社会は今よりもっと素敵なもので溢れていくでしょう。

 

 今、お金について知るかどうかは、みなさんの未来を大きく左右する。大げさではなく、心からそう思うのです。

 

 また、13歳でも、15歳でもなく、「14歳」にこだわったのにも理由があります。

 14歳は学年でいうと中学2年生から3年生にかけての時期。もう子どもでもなく、かといって大人にもなりきれていない、とても曖昧な年頃です。

 体も心も成長してきて、なんとなく大人が近づいてきているようだけれど、具体的なイメージは湧いていない。ふわふわと地に足がつかないような、視界不良の水中でもがいているような、未経験の苦しさを感じている人は多いのではないでしょうか。

 

 実は、僕自身が14歳のとき、本当に苦しくて打ちのめされていたという経験があります。それまでの僕は勉強が得意でスポーツも楽しんでいる、活発な中学生でした。しかし、突然のスランプに襲われたのです。

 今思えば、「成長痛」の一種だったのかもしれません。14歳の時期には、毎月1センチずつ身長が伸びていたので、骨や筋肉の成長に、内臓が追いついていなかったのでしょう。

 原因不明の倦怠感や落ち込みが続き、勉強やスポーツに対する気力がみるみる落ちていってしまいました。大好きだった部活も休んだり、早退したりする日がポツポツと増えていきました。

 体調不良で、外出する気にもなれなかったので、家で本ばかり読んでいました。このときの読書体験は人生に生きたと思っていますが、近代文学の闘病記を読んで「自分もいつか死ぬのかもしれない」とさらに落ち込むこともありました。

 当然、成績も落ちます。憧れていた志望校の前に雲がかかり、遠のいていくようでした。「僕の人生はこのままずっとどん底かもしれない」と、将来にも絶望感が募り始めました。

 元気はつらつ少年だった僕が塞ぎ込む様子を見て、両親も心配していました。

 幸い、体の成長が徐々に落ち着き、15歳を迎える頃には自然と心身の不調が解消し、トンネルを抜けることができたのですが、暗い道の途中ではずっとモヤモヤしていました。

 僕は基本的にポジティブでアクティブな人間なのですが、14歳の時だけは暗く沈んだ記憶に覆われているのです。人生でまさに〝絶不調〞を経験した初めてのタイミングが、14歳でした。

 その頃の気持ちを振り返ってみると、将来について希望を持つこともできず、「絶不調でひとりぼっちの自分」と「社会」は分断されていました。そして、自分や社会の先にある「未来」も、自力ではどうしようもない、つかみどころのないものでした。

 僕ほどではないにしても、同じようなウツウツ、モヤモヤを抱えている14歳は、きっと多いのではないでしょうか。

 

 だから、僕は語りかけたくなったのです。あの頃の自分自身に。

 この本では、14歳の頃の僕を現代に呼び寄せたつもりで、〝君〞と語りかけながら、話をしていきます。「現代」を起点にしているので、「暗号通貨」や「クラウドファンディング」など、僕が14歳の頃にはまだ登場していなかったものについても触れています。仕事のことや、人生のこと、世の中との関わり方……。こういった話を「お金」を通じて伝えていきたいと思います。

 

 なぜ「お金」なのかというと、僕自身がお金からたくさんのことを学んできたからです。

 お金を扱う仕事をし始めて30年が経ちますが、お金について考えることで、仕事や社会、そして人生そのものを広く深く見渡すことができるのだと、実感しています。

 お金は僕たちに「フラットであれ」という教訓を教えてくれます。

 お金は一部の人の元に集まって貧富の差を生むこともありますが、本来は、水のようにしなやかに流れる特性を持っています。

 社会の隅々にまで行き渡って、循環を生み、素敵な未来をつくる夢を応援する。そんなパワーも秘めているのです。

 

 僕が長年仕事にしている「投資信託」もまさにそう。

 できるだけたくさんのお客さまから「すぐに使う予定がないお金」を預かって、まとまった資金にして、株式や債券に投資して運用し、利益を出して、お金を出したお客さまに還元しています。株式や債券を発行する人たちは、「やりたいことがあるのに、実行するための資金が自分のお金だけでは足りない」という事情を抱えている人たちです。

 つまり、お金には必ず「人」の存在がひもづいている。夢がある人のもとに、お金を動かすことができる。

 お金を出す人は「投資家」と呼ばれますが、その投資家とお金の関係もフラットです。北海道から沖縄までいろいろな場所に住んでいる、年をとった人も若い人も、100万円を出した人も1万円を出した人も1億円を出した人も、どんな人のお金もみんな平等に大切にしながら運用していく。

 こういうお金の仕組みを知るほどに、世の中の見え方も変わっていきます。

 

 僕は、「お金」について知るほどに、社会と関わることが楽しみになりました。

 それにとても大切なことに気づいたので、ぜひみなさんに伝えたいと思ったのです。

 14歳も、大人も、等しく「お金」と関わっているんだと。

 この意味がすぐには分からなくても、本を読み終える頃には、きっとみなさんは何かを感じ取ってくれるはずです。

 さあ、さっそく14歳の僕を呼んできて、「お金の話」を始めましょう。

<第2回に続く>

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